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うさぎ

永遠のラブストーリー⑨

アンドレは、ある貿易商のところで働いていた。

ベルモンド商会といってここはジャルジェ将軍が親しくしていた商人で、武器や食料などここから軍に配達されていて、羽振りが良いのだった。

アンドレが宿下がりを願い出たときにジャルジェ将軍は出来るだけの多くの金を渡そうとしたが、「今までいただいた給金でしばらくはやっていけますので」と受け取らないので、せめて次の仕事の世話くらいは受けてくれ、ここならアンドレの能力を生かせるだろう、と強く言われて承知したのだった。

事実屋敷を出てからのことは考えていなかった。

愛する人の元から去るのは身を切られるような苦しみだったが、このまま彼女の側にいれば、恋焦がれるあまり自分は何をしでかすかわかったものではない。

それなら、どんなに疲れようとかまわない、身を粉にして働き、一時でも彼女のことを忘れるよう勤めよう、と決意したのだ。

社長のベルモンド氏にしてみれば、お世話になっている将軍から紹介された男にしかすぎなかったのだが、アンドレは実に役立つ人間だったことは意外な喜びだった。

計算も書類つくりも手馴れているし、語学も堪能だ、貴族の家で働いているだけあって上品な身のこなし、おまけに背が高く、女性客がうっとりするくらいの男っぷりだ。

どれをとっても素晴らしい働き手でベルモンド氏は満足していた。

アンドレは決意したとおり、必死で働いた、休む間もなく働いて、疲れ果てて倒れるようにベッドに身を投げ出す、そんな毎日であった。

だが、熟睡は出来ず夜中に何度も眼を覚ます、それはいつも見る夢が同じだから。

美しい花嫁姿のオスカルがいる、俺はオスカルに見とれて抱きしめようと腕を伸ばす、だがオスカルは「アンドレ、私の夫はお前では無い!」といって俺の手を跳ね除ける。

そして、いつの間にか知らない男がオスカルの手を取り、オスカルもにこやかに男に腕を絡ませて俺の前から立ち去っていくんだ。

「行くなオスカル!お前をもっとも愛しているのは俺だ!誰にも渡さない、渡したくない!行かないでくれ!」と必死で叫ぶがお前はだんだんと遠くへ行ってしまうんだ。

こんな悲しい夢をいつまで見ればいい!

アンドレはオスカルの前から立ち去った今でも彼女への愛に縛られたままだ。

今日もくたくたになるまで働いて自分の部屋で眠る気にもなれず、ぼんやりしていると社長のベルモンド氏が珍しく尋ねてきた。

「これはベルモンドさん、何か仕事の相談でも?」とアンドレがたずねると「いや、個人的な話があってね、お邪魔するよ」ベルモンド氏は愛想よくそういった。

「個人的なお話とは何でしょう?」手馴れた手でお茶を入れながら質問すると、ベルモンド氏は「娘のアデリーヌは知ってるかね」と聞いた。

「時々、会社にいらっしゃる娘さんですね、お顔だけは存じています」

「アンドレ、娘をどう思うかね?」「どうとおっしゃられても」ベルモンド氏は何を言いたいのか質問の意味がわからないアンドレだったがベルモンド氏は「娘のアデリーヌと結婚する気はないかね?」と続けて切り出したのだった。
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