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夜のフェアリー第8章の24

「そうか、ではこれからお前は帰りが遅くなるのだな」
「ああ、しばらく帰りは深夜になる、だからお前は気にせず先に休んでくれ」

アンドレが仕事で帰りが遅くなる、それは寂しいことだが、オスカルも同じく大変な時期だ。

「うん・実は私のほうも店の子が一人辞めてしまって、それを埋めるため、仕事の量が増える予定だ」
「仕事が増える?大丈夫なのか?」

不安げなアンドレの顔にオスカルはクスッと笑う

「お前だって残業で遅くなるのだろう?」
「俺はお前より体が頑丈に出来てる!お前は・・・」
「私が弱いとでもいうのか?」

アンドレにひ弱だと言われたようでオスカルは不満顔だ。
しかしアンドレはレニエからオスカルは小さいころから喘息があり、良く寝込んでいたことを聞いていた。

「だが・・ジャルジェ様からお前はあまり身体が強くないと聞いた」
「あ・あれは子供のころの話だ、今はこの通り元気だ!」
「それならいいが・・・お前はショーにも出ているし、そのための練習も熱心だ、身体を壊さないか?」

あくまでオスカルに身を案じる彼にやれやれと思う。

「アンドレ・私はもう大人だ、自分のことは自分で決める」
「だって私はもうお前の奥さんなんだ」

オスカルに説得されアンドレは苦笑する。

「お前にそういわれて反対できるわけないだろ」
オスカルに自分の妻だから頑張るんだと言われると弱いのだ。

それから二人は仕事にまい進する日々を送った。
アンドレは大量の発注に追われ、毎日深夜まで残業の日々を送る

オスカルはというと、ウェイトレスの仕事とショーに出て、交代で厨房の手伝いをした
先に帰るのはオスカルのほうだが、仕事の中身が濃いいゆえに以前より疲れがどっと出る。

しかし、オスカルは部屋でくつろぐ暇はない。
部屋に帰った後は、すぐにバイオリンの練習を始める

バイオリンのショーは毎週あるのだ、客に満足してもらえる演奏をするためにオスカルは毎日欠かさず練習を続けた。
今日も戻ってからバイオリンの弓を弾く

曲目は「夢のあとに」
この曲は マルゴから習った曲だが、とても幻想的で物悲しい曲だ。

以前は「カノン」のような心躍るような曲が好きだったが、最近「夢のあとに」のような抑えた切ない音も好ましく思うようなってきた。
不思議だ、これは私の心の変化なのだろうか?

曲を弾き終えて、はぁーっと嘆息を漏らすと楽器をテーブルの上に置いた。
時計を見ると、まだアンドレは当分帰ってはこないな
ソファーにどっと身体を投げ出し、休息する。

疲れた・・・

「オスカル」

何?
呼びかけられて気が付いた。
目を覚ますとアンドレが戻ってきていた。

「お前・帰ってきたのか・・」
「こんなところで眠ると風邪をひくぞ」

確かにそうだ、と思いのろのろと上半身を起こした。

「早く休むよう言っておいただろう、何をしてたんだ?」
「うん・あの・・」

アンドレはテーブルの上にあるバイオリンと弓を眺めた。

「またバイオリンの練習してたのか」
「うん・だってショーがあるから」
「お前、疲れてるんだろう、店の仕事だけで精一杯だろうに、バイオリンのショーは断ってはどうだ?」
「言いにくいのなら俺から マルゴさんに言ってやるから」

アンドレにはオスカルが疲れ切ってるように見える。

「駄目だ! せっかく マルゴさんの役にたったんだ!私の演奏を楽しみにしてくれている人だっている」
「それに、私はショーを楽しんでやっている、だから疲れてなどいない」

オスカルは自分のバイオリンが役立っているのに、それを疲れているからと言って投げ出すような性格ではない
アンドレはオスカルのそんな性格は十分理解していた、だから納得するしかないのだ。

「そうか・・だが無理をするなよ」
「わかってる、自分の体調管理くらいできる」
「そんなことより、お前も残業で疲れているのだろう、早く寝よう」

オスカルはアンドレの腕を取りベッドのある部屋に連れて行った。
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