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うさぎ

半年後の二人

オスカルがアンドレの元に来て、もう半年が経った。

少しずつではあるがオスカルは家事ができる様になっていた。

今日はいつもの差し入れを持って出かけていた。

オスカルにしては美味しくできたパイを、アンドレの働くローラン商会に差し入れとして持っていくのだ。

かごにパイを入れてアンドレの働くローラン商会に急ぎ足で行くオスカルはいかにも幸せそうに見える。

ローラン商会は、倉庫と店と事務所が続いて建っている大きな会社だ。

オスカルはアンドレが事務所にいるものと思って入って行った。

しかし、そこにいるのはジュール一人だった。

「オスカルさんじゃないですか!いらっしゃい!」

「あの、アンドレは何処だろうか?」

「アンドレなら店のほうに出ていますよ、大口の客が来ているんで対応しています」

ジュールが話しているときに窓からアンドレの姿が見えた。

「アンドレが出てきたようだ、ありがとうジュール」そういってオスカルは事務所を出て行った。

「アンドレ・・・」オスカルはアンドレを呼び止めると、振り向いた彼の横に客らしき男がいた。

年いった男性と、アンドレと同じくらいの年齢の貴族風な男性だった。

アンドレは「オスカル来ていたのか!」と返事した。

「アンドレ、パイを焼いたからお前に差し入れとして持参した」

「ああ、ではもう少し待っていてくれ、今、お客様の対応しているから」

そう話している横で貴族風な客がオスカルをじっと見つめて思わず言葉が出た。

「ミューズだ・・・私のミューズを見つけた」興奮しながらそういったのだった。

「アレクサンドル様、どうされましたか?」年老いた男性が貴族風な客に聞いた。

「じい、あの美しい女性を見てみろ」

じいと呼ばれた年寄りはオスカルを見た。

「美しい女性ですな、どうやらあの男の恋人のようですが」

しかし、アレクサンドルと呼ばれた男はそんなことはお構いなしに

「じい、あの女性の全てを調べるように、あの風貌はただの平民ではあるまい、」

年寄りの男はこのようなことは慣れていると見えて

「御意にございます」と即答した。

アンドレが振り向いて

「クレマンソー侯爵、私の婚約者が尋ねてきたもので失礼しました、先ほどの注文のワインは今日中にお届けします」と対応した。

侯爵は、オスカルのほうを見て

「お美しい婚約者殿だな、紹介してはいただけないだろうか?」

アンドレはオスカルをこちらに呼び寄せて

「私の婚約者オスカル・フランソワと申します、オスカルこちらはクレマンソー侯爵様、ローラン商会のお客様だ」

「オスカル・フランソワと申します、侯爵様」

オスカルは出来るだけうやうやしく挨拶した。

「オスカル嬢、私はシャルル・アレクサンドル・ド・クレマンソー、アレクサンドルとお呼びください」

そういってアレクサンドルはオスカルの手を自然に取り、その手に口付けをした。

普通の貴族の娘なら当たり前の挨拶なのだが、男として育てられたオスカルは驚いてしまい、すぐにその手を侯爵から取り戻した。

オスカルはこのような紳士が淑女に対する挨拶はあまり経験が無いため驚いてしまったのだ。

見かねてアンドレがオスカルの代わりに侯爵に返答した。

「侯爵様、申し訳ありません、彼女は少し特別な教育をされて、育ったもので男性にこのような扱いには慣れていないのです、お許しください」

しかし侯爵は

「いや、気にしていませんよ、ただ、このような純真無垢な女性がまだ残っていたのだと感心したのですよ」

「アンドレ・グランディエ、ワインの手配お願いする、オスカル嬢またお会いしましょう」

そういってじっとオスカルを見つめ、やがて名残惜しそうに馬車に乗り込んで行った。

侯爵は窓からオスカルが見えなくなるまで彼女に魅入っていた。

アンドレはそれに嫌な予感を感じてしまった。


アンドレはその後仕事を終えてクロエの下宿の自宅へ戻ってきた。

先に戻っていたオスカルが出迎えて。

「おかえりアンドレ」
うれしそうにオスカルはアンドレに抱きついてきた。

「ただいまオスカル」

それを受けてアンドレはオスカルを抱きしめ、いつもの口付けを交わしていった。

これは毎日の二人の儀式、約束して決めたわけではないが、互いに合えない時間を埋めるためのアンドレからの愛情の現れだった。

「寂しかった?」とアンドレがふざけて言うと

「寂しかったに決まっているだろう、だってせっかくパイを持って行ったのに、お前はろくに食べてくれなくて話もしてくれないし、食べてくれたのはルイスとジュールとカールだった」
とすねたようにオスカルは言った。

「すまない、オスカル・・・ちょっと気になることがあったんだ」

あの後アンドレは嫌な予感にさいなまれてオスカルが帰った後も黙って考え込んでしまったのだ。

家に帰ってオスカルとすごす時間は大切にしたい、だが、やはり気になり言葉にしてしまった。

「昼間のお前の手に口付けをした不埒なクレマンソー侯爵だが、お前をじっと見つめていたぞ」

「ああ、そういえば、アレクサンドルだったな、あんなにじろじろ見るとは失礼なやつだな、と思っていたが彼がどうかしたのか?」

「侯爵は、お前を気に入ったんだよ・・・」

「私を?」

「そうでなければ、あんなに熱く見つめるわけは無かろう」

「そうか、そうだったのか・・・あれは私に熱いまなざしを向けていたのか」

相変わらず色恋沙汰には鈍いやつだな、オスカルは。

しかしオスカルは

「アンドレ私も女性に見られるようになったぞ!今までお前と並ぶと男同士にしか見られなかったが、これでようやく男女のカップルに見てもらえるな!」と能天気に喜んでいた。

「オスカル・・・お前は今誰が見ても立派な女だよ」

しかも誰が見ても美しい女性なのに相変わらず自己評価が低いオスカルだ。

「俺が気にしているのは、侯爵がお前に手を出してこないかってことだ」

「しかし、私がお前の婚約者だと紹介されたのだぞ、しかもこうやって指輪までしている」
以前アンドレにもらった指輪をオスカルはいつも大切につけている。

「まだ、結婚していない、それに・・・お前を見れば、奪ってでもほしくなるだろう」

アンドレの言葉にオスカルは不思議そうに

「アンドレ私のような女らしくない女性を好むのはお前くらいなものだ・・・」

「以前ジェローデルもその一人だったぞ」

「そうだったな、このような私をありがたいことだったが、私はお前を選んだのだから仕方ない」

「いい加減機嫌を直せ、いい男が台無しだぞ、それより話があるんだ」

「クロエが私に仕事を紹介してくれたんだ!野菜や果物を売るんだそうだ」

最近オスカルは仕事をしたがるようになっていた。

アンドレにだけ苦労させているのが不満だったのだ、オスカルとしては自分も役に立ちたい、そんな思いを普段からクロエに相談していた。

「またか、オスカル何度言ったらわかるんだ、俺はお前に苦労をかけたくはない、それに野菜売りは外でやる仕事だ、お前が考えているよりずっと大変な仕事だ」

アンドレのほうはというと、元貴族のオスカルにこれ以上苦労をかけたくはない、出来ればもっといい暮らしをさせてやりたいくらいなのに、外に出て仕事するなど到底許すことは出来ないのであった。

「アンドレはいつもそうだ、以前のカフェの店員の話があったときだって反対したぞ、私はもう貴族ではない!お前ばかりに働かせるのは本意ではないんだ」

「オスカル俺はお前の手をこれ以上荒れるまねはさせたくないんだ」

オスカルが働くということに関してはアンドレは一歩も譲らない、いつも話は平行線なのだ。

「とりあえずクロエには俺から断っておくから・・・お前は家で俺の帰りを待っていてくれればいいんだ、」

結局オスカルは今回もアンドレの強い反対にあってしまい、働くのをあきらめざるを得なかった。

オスカルはせっかく働けるチャンスだったのに、と部屋の隅ですねてしまった。

アンドレはそんなオスカルに近寄っていき、

「子供みたいにすねるなよ、お前はよくやってくれているよ、料理も掃除も洗濯も」

「おかげで家に戻るのが楽しみだ、お前の手料理が食べられる生活なんて夢みたいだからな」

「俺が仕事から戻ったときにはお前にいてほしいんだよ、早くお前の顔が見たいんだから」

アンドレにそういわれるとオスカルとしても悪い気はしない。

「本当か?」

「本当だよ」

「私の料理が楽しみなのか?」

「ああ、楽しみだよ」

「私の顔が早く見たいのか?」

「一刻も早くね」

「そ、そうか・・・」

「そうだよ、お前を独占できるなんて俺は幸せものだ」

アンドレはそういったかと思うとオスカルを抱きしめて口付けしてきた。

そうなるとオスカルももう何も言えなくなる。

いつも、こうやってごまかされてしまうオスカルだった。

○月×日

アンドレに仕事の話をしたら、また反対されてしまった。

彼は何故私が働くのを嫌がるのだろう。

私に苦労させたくない、と考えているのはわかっているけれど彼にばかり頼っていては申し訳ないではないか。

それにアンドレは私に対して過保護すぎる!

私は子供ではないのだ。

しかし、最後にはいつも私を独占できるのがうれしいからだ、と私を言い聞かせてしまう。

これで説得されてしまう私は、やはり、子供なのだろうか?
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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 6

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2015/10/31 (Sat) 02:10

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2015/10/31 (Sat) 07:54

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2015/10/31 (Sat) 09:02

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2015/10/31 (Sat) 20:16

うさぎ

Re: No title

Y様お久しぶりです!
ワーイ、きてくれたんですね。

Y様主婦業私も駄目で、洗濯などは旦那のほうが上手いくらいです。(雑なんです私)

そうなんです、オスカル様は家でじっとしてるタイプじゃないですよね。

アハハ、アンドレの職場でパート、それもいいですね。

2015/10/31 (Sat) 22:27

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2015/11/02 (Mon) 07:52