半年後の二人⑨
翌日アンドレが仕事に出て行った後に侯爵家からオスカルに馬車で向かえが来た。
必要なものは全て侯爵が用意するし、送り迎えもこちらが行うと、迎えに来てくれた侯爵のじいである執事のロイスから伝えられた。
オスカルは今日から侯爵家で絵のモデルをするとクロエに伝えておいた。
そして、侯爵の屋敷は街中から離れた場所にあるので馬車で行き来してモデルの仕事をしていると夜になってしまうので夕食の支度をしばらくクロエに頼むことにしたのだ。
クロエは以前アンドレの夕食を作っててくれたのだからもちろんいいよ、といって承知してくれた。
これで安心だとオスカルは馬車に乗り込み、侯爵家に向かった。
夕べ訪れた屋敷だが、改めて昼間見ても立派な屋敷だ、まるで城そのものなのだ、それだけ侯爵は金持ちと見える。
アレクサンドルは、玄関でオスカルを待ちかねていた。
「ごきげんよう、アレクサンドル、馬車まで手配してくださってありがとうございます」
「オスカルお待ちしていましたよ、どうぞこちらへ」
そういってアレクサンドルは屋敷の中へオスカルを招いた。
アレクサンドルが招いたのは屋敷の奥の油絵を描くための部屋だ。
「ここで油絵の作業を進めているんですよ、オスカル貴方はそこの椅子に座っていてくれればいい」
「私はこのような服装で良いのですか?」
オスカルは余所行きのドレスで来たものの、昨夜のような豪華なものではなく、街中を歩く程度の服装だ。
「いやいや、それもこちらで用意させていただいております、隣の部屋においてあるので着替えてきてください」
といわれ、オスカルは隣の部屋に行ってみた。
そこには薄絹のドレスが置かれてあった。
多分アレクサンドルの趣味なのだろう、パリで流行の派手なドレスではなく、薄く光沢があり風になびくような絹のドレス。
神話に出てくる女神を思わせるドレスだ、これを着るのは気恥ずかしいが、ここまで来たのだから仕方ない・・・オスカルは着替えることにした。
そして着替え終わり油絵の作業部屋に戻ってきたオスカルを一目見てアレクサンドルは、「やはり私の見る眼に間違いは無かった!」と感動した。
「貴方はご自分を知っていますか、貴方の美しさには芸術を感じずにはいられない、その貴方を描けるなんて私は幸せ者ですよ」
アレクサンドルは感動しながらオスカルを椅子に座らせた、そして彼はオスカルのために楽団の準備もしていた。
「長い時間同じポーズを取り続けるモデルは意外に大変なのですよ、だから少しでも気がまぎれるよう音楽を用意しました。」
合図と共に音楽が鳴り響き、やがてアレクサンドルはオスカルを描き始めた。
しばらく無言でオスカルを描きつづけたアレクサンドルだが、少しずつ会話し始めた。
「オスカル貴方は貴族の伯爵令嬢だったそうですね、それが従僕であったアンドレと愛し合ってこのマルセイユに来た」
「彼との生活は貴族時代とは違う事だらけで不自由も多いでしょう」
オスカルとしては、余計な話だ、確かに貴族時代のように贅沢な暮らしは出来ない、だが愛する人と誰にも邪魔されず暮らせるのだ、彼といられるのなら多少の不自由など何事でもない。
「アレクサンドル、貴方は芸術家なのでしょう、それなら贅沢よりも大切なものがあるのをご存知のはず、私は今の暮らしに満足しています」
「これは失礼、では話を変えましょう、私は確かに芸術家だ、美しいものやいまだ見たことが無い場所に憧れていろんな土地を旅しました。」
「外国にも行ったことがありますよ、ドイツ、オーストリア、スウェーデン、アメリカにも行きました」
「アメリカに行ったのか?あそこは身分の差が無い国だと聞いたが」
「そうです、アメリカはまだ新しい国だから貴族も平民も無いのです」
「行ってみたいとは思いませんか?」
「そうだな、アンドレも喜びだろうな」
身分の無い国、そんな国にもしアンドレと生まれていたら私達はもっと自由に愛し合えたのだろうな、とオスカルは幸せな考えに浸ってしまった。
そして昼になり、アレクサンドルはオスカルを食堂に誘った。
そこには貴族であった時代に食べたような豪華な食事が準備されていた。
ワインもスープも肉も野菜も厳選された食材を使っていると見えて、格別な味なのだ。
「どうですか、オスカル嬢うちのコックの腕は」
「素晴らしい腕前だな、私が作るスープとでは全く違うな」
「後でコックに会わせてくれないだろうか?」
「え、ええ、もちろんよろしいですが」
オスカルとしては料理法を聞いて、今より料理の腕前をあげてアンドレに食べさせてやりたい気持ちなのだ。
午後もオスカルはアレクサンドル侯爵の絵のモデルを続けてやった。
さすがに一日目のせいか疲れたが、仕事なのだと思えば我慢できると自らに言い聞かせながら耐えた。
そして、ようやく家に戻る時間となった。
「お疲れになったでしょう、しかし明日もよろしくお願いしますよ」
「わかっている、約束だからな、ではまた明日」といって馬車に乗り込んだ。
アンドレの言うとおり気を引き締めて真面目にモデルを遣り通したオスカルだった。
しかし、心の中では
「アンドレはちゃんと食事しただろうか」と心配で仕方なかった。
必要なものは全て侯爵が用意するし、送り迎えもこちらが行うと、迎えに来てくれた侯爵のじいである執事のロイスから伝えられた。
オスカルは今日から侯爵家で絵のモデルをするとクロエに伝えておいた。
そして、侯爵の屋敷は街中から離れた場所にあるので馬車で行き来してモデルの仕事をしていると夜になってしまうので夕食の支度をしばらくクロエに頼むことにしたのだ。
クロエは以前アンドレの夕食を作っててくれたのだからもちろんいいよ、といって承知してくれた。
これで安心だとオスカルは馬車に乗り込み、侯爵家に向かった。
夕べ訪れた屋敷だが、改めて昼間見ても立派な屋敷だ、まるで城そのものなのだ、それだけ侯爵は金持ちと見える。
アレクサンドルは、玄関でオスカルを待ちかねていた。
「ごきげんよう、アレクサンドル、馬車まで手配してくださってありがとうございます」
「オスカルお待ちしていましたよ、どうぞこちらへ」
そういってアレクサンドルは屋敷の中へオスカルを招いた。
アレクサンドルが招いたのは屋敷の奥の油絵を描くための部屋だ。
「ここで油絵の作業を進めているんですよ、オスカル貴方はそこの椅子に座っていてくれればいい」
「私はこのような服装で良いのですか?」
オスカルは余所行きのドレスで来たものの、昨夜のような豪華なものではなく、街中を歩く程度の服装だ。
「いやいや、それもこちらで用意させていただいております、隣の部屋においてあるので着替えてきてください」
といわれ、オスカルは隣の部屋に行ってみた。
そこには薄絹のドレスが置かれてあった。
多分アレクサンドルの趣味なのだろう、パリで流行の派手なドレスではなく、薄く光沢があり風になびくような絹のドレス。
神話に出てくる女神を思わせるドレスだ、これを着るのは気恥ずかしいが、ここまで来たのだから仕方ない・・・オスカルは着替えることにした。
そして着替え終わり油絵の作業部屋に戻ってきたオスカルを一目見てアレクサンドルは、「やはり私の見る眼に間違いは無かった!」と感動した。
「貴方はご自分を知っていますか、貴方の美しさには芸術を感じずにはいられない、その貴方を描けるなんて私は幸せ者ですよ」
アレクサンドルは感動しながらオスカルを椅子に座らせた、そして彼はオスカルのために楽団の準備もしていた。
「長い時間同じポーズを取り続けるモデルは意外に大変なのですよ、だから少しでも気がまぎれるよう音楽を用意しました。」
合図と共に音楽が鳴り響き、やがてアレクサンドルはオスカルを描き始めた。
しばらく無言でオスカルを描きつづけたアレクサンドルだが、少しずつ会話し始めた。
「オスカル貴方は貴族の伯爵令嬢だったそうですね、それが従僕であったアンドレと愛し合ってこのマルセイユに来た」
「彼との生活は貴族時代とは違う事だらけで不自由も多いでしょう」
オスカルとしては、余計な話だ、確かに貴族時代のように贅沢な暮らしは出来ない、だが愛する人と誰にも邪魔されず暮らせるのだ、彼といられるのなら多少の不自由など何事でもない。
「アレクサンドル、貴方は芸術家なのでしょう、それなら贅沢よりも大切なものがあるのをご存知のはず、私は今の暮らしに満足しています」
「これは失礼、では話を変えましょう、私は確かに芸術家だ、美しいものやいまだ見たことが無い場所に憧れていろんな土地を旅しました。」
「外国にも行ったことがありますよ、ドイツ、オーストリア、スウェーデン、アメリカにも行きました」
「アメリカに行ったのか?あそこは身分の差が無い国だと聞いたが」
「そうです、アメリカはまだ新しい国だから貴族も平民も無いのです」
「行ってみたいとは思いませんか?」
「そうだな、アンドレも喜びだろうな」
身分の無い国、そんな国にもしアンドレと生まれていたら私達はもっと自由に愛し合えたのだろうな、とオスカルは幸せな考えに浸ってしまった。
そして昼になり、アレクサンドルはオスカルを食堂に誘った。
そこには貴族であった時代に食べたような豪華な食事が準備されていた。
ワインもスープも肉も野菜も厳選された食材を使っていると見えて、格別な味なのだ。
「どうですか、オスカル嬢うちのコックの腕は」
「素晴らしい腕前だな、私が作るスープとでは全く違うな」
「後でコックに会わせてくれないだろうか?」
「え、ええ、もちろんよろしいですが」
オスカルとしては料理法を聞いて、今より料理の腕前をあげてアンドレに食べさせてやりたい気持ちなのだ。
午後もオスカルはアレクサンドル侯爵の絵のモデルを続けてやった。
さすがに一日目のせいか疲れたが、仕事なのだと思えば我慢できると自らに言い聞かせながら耐えた。
そして、ようやく家に戻る時間となった。
「お疲れになったでしょう、しかし明日もよろしくお願いしますよ」
「わかっている、約束だからな、ではまた明日」といって馬車に乗り込んだ。
アンドレの言うとおり気を引き締めて真面目にモデルを遣り通したオスカルだった。
しかし、心の中では
「アンドレはちゃんと食事しただろうか」と心配で仕方なかった。
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