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うさぎ

ショコラの誘惑⑫

やがてショーが終わった。

アンドレは一礼すると大勢の客からの鳴り止まぬ拍手を受けた。

そして彼は客に笑顔を向けながら奥の関係者の部屋に戻っていった。

その後アンドレは店に早退すると伝えていてオスカルに声をかけて店を出た。

二人は肩を並べて歩いていた。

「オスカル、さっきは驚かして悪かったな、怒ってはいないか?」

「いや、確かに思い切り恥ずかしかったが・・・気にしてはいない・・・」

オスカルはアンドレから受け取ったバラの花を大切そうに持ってるのを見てアンドレは、「少しは喜んでくれたんだ」とほっとした。

「アンドレ・・・」

「何だ?」

「あ、あの・・・最初は恥かしかったが・・・うれしかったぞ・・」

「そうか、それなら良かった」

「お前の歌は素晴らしかった、お前きっとプロになれるぞ」

「そうか、お前がそういうなら目指してみようかな」

「きっと有名な歌手になって全ての人に感動を与える」

「そうなれればいいな、そうなれば・・・少しでもお前に近づける・・・」

オスカルはアンドレの言葉に胸が痛んだ。

言わなくては・・・もう会えないこと、ドイツ行きが決まったことを、アンドレに。・・・

オスカルは突然立ち止まり

「アンドレ・・・話がある」

オスカルの様子にアンドレは驚いて

「どうした?」と聞いた。

「ドイツ行きが決まった、お前と会うのは今日で最後になってしまった」

オスカルのドイツ行きが決まった!

わかってはいたが、こんなに早く行ってしまうなんて!

「アンドレ・・・お前には本当に世話になった・・・」

「お前はいつも私を楽しませようと、私の出来なかったことを取り戻すように考えてくれた・・」

「お前は私にいろんなものを見せてくれた、それは今まで私が手にしてこなかったものばかりだ・・・あ・ありがとう・・・」

オスカルはいつの間にか自分が泣いているのも気がつかないで語りだした。

「お前と付き合うようになって、私も恋心というものが何となくだがわかったような気がする」

「お前といると楽しかった、お前といると周りが輝いて見えた・・・ときめいてドキドキもした・・・恋とはこのようなものかと思った」

「アンドレ、お前は最高の恋人だった」

「・・だけど・・これは本当に恋なのか?・・だってお前と知り合ってまだ2週間しかたっていない・・・」

「人を好きになるって自分よりも相手を大事に思えることだ、それがたった2週間で出来るなんてやはり私には信じられない!」

「アンドレ・・・お前だってそうだ、お前は本当に私が好きなのか?」

「単に小説の中のオスカルと私を投影しているだけなのではないのか?」

「違う、俺は本当にお前を愛してる!」

「何故そういえる?」

「私は・・男と間違われるくらい女らしくないし・・・監督のギルバートにも女性の色香が無いのを何度も指摘されてる」

「お前の友達のロザリーやディアンヌみたいに可愛くも無い、背も高いし守ってあげたいタイプの女性でもない!第一お前なら好きになってくれる女性が大勢いるはずだ、それが何で私なんだ!」

オスカルは頭の中がまとまらなかった、突然であったアンドレに愛の告白を受けて自分も惹かれているものの、これは本当の恋?それとも彼が見せてくれた幻影?それに何故彼は私なんかを?自分には女性として魅力がないのがコンプレックスだった、それなのに何故彼はこんなに?

だがアンドレはその考えを否定するように叫んだ。

「好きなんだから仕方ないだろう!」

「俺はお前に会うまで恋人は歌とピアノだけと思って生きてきたんだ」

「俺は前に言ったね、「マドモアゼルオスカル」を読んで小説の中のオスカルに恋してしまったって」

「「マドモアゼルオスカル」を読んだとき、こんな女性がいたのかと不思議なくらい惹かれてしまった、見た目は氷のように冷たい印象なのかもしれないが、その内面は限りなく優しく女らしい」

「俺は小説の中のオスカルに恋をした、だが彼女は俺の想像でしか会えなかった人だ」

「お前は俺の想像通りのオスカルだったんだ、それだけで恋するのは当然なのに、眼の前に現れたお前はさらにステキな女性だった」

「それに俺は今まで女性に興味が持てない男だった・・・それなのにこんなに夢中になるなんて信じられないくらいなんだ、女性を恋するってことがこんなに素晴らしいことだとはじめて知ったよ」

「お前と過ごした日々は俺にとって最高に幸せな時だったんだ」

「だ、だってお前と過ごした時間はわずかなものではないか、そんな短い時間で何がわかるのだ!」

「恋するのに時間の長さなんか関係ない!・・・」

「そして人を好きになるのに理由なんて必要ないんだよオスカル!」

「俺からしたらお前は世界一可愛くて守ってあげたい女性だ・・・」


「・・・やっぱりお前は変なやつだ、こんな私が可愛いだなんて・・・」オスカルは思わず笑ってしまったと同時に涙も出てきた。


そしてオスカルは思い切って言った。

「アンドレ・・・最後のレッスンを・・・してくれないか・・・今度の映画はキスシーンがあるのだ・・・その前にお前に・・してほしい」

「「マドモアゼルオスカル」のときのキスシーンはシルエットでごまかした、だが今度ははっきりと見せる必要がある」

考えてみれば今度の映画はロマンス映画だ、ラブシーンがあるのは当然、その前に俺にしてほしいなどとは・・・

「いいのか?」

オスカルは大きくうなずいた。

「初めて私を好きだといってくれたお前に、そして初めて心を動かされたお前に初めての口付けをしてほしい・・」

せめて・・せめて私を忘れてしまう前に・・

アンドレはオスカルの頬に手を添えてゆっくりとオスカルの唇に自分の唇を押し当てた。

優しく包み込むような口付け。

初めてのオスカルとの口付け、それが別れの口付けになるとは・・・

アンドレ・・お前は私が憧れた以上の素敵な彼だった・・

アンドレの唇がオスカルの唇から離れた後、オスカルはそっと眼を開けて言った。

「もう、これで思い残すことは無い・・・」

「映画が完成して上映されるまではプライベートな時間など私には無い」

「会えなくなってお前は私のことなど忘れてしまう・・・きっと忘れてしまうんだ・・・」

オスカルの瞳からいくつもの涙が落ちていった。

「俺はお前のことを忘れないよ、だってお前は俺の運命の人だから・・・」

「お前が戻ってくるまで待っている・・」

「いつまでも待っているよ・・・お前が戻って会いにきてくれるのを待っている・・・」

「待っているよ・・・オスカル」

アンドレはオスカルを思わず抱きしめて何度も待っていると伝えた。・・

オスカルはそんなアンドレの胸の中で、ただ涙があふれて止まらなかった。

こんな風に思ってくれる男性が目の前に現れるなど信じられない、だって私は女にも見えないのに何でお前は・・・
・・こんなに情熱的に愛してくれるなど、信じられない・・・だけど、だけどお別れなんだ。・・・

そしてオスカルは・・・俺の運命の恋人はスクリーンの向こうに戻っていったんだ。
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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 9

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2015/12/13 (Sun) 16:17

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2015/12/13 (Sun) 21:24

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2015/12/13 (Sun) 21:31

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2015/12/13 (Sun) 22:39

うさぎ

Re: No title

P様こんにちは。

ショコラはハッピーエンドが決まっているから冷静に見れるかと思ったらそうでもないんですね。

初めての口付けは、やはりアンドレとでないと納得できませんからね、しかも他の俳優とするのが確定してるんだから。

P様「ショコラの出会い」が最初だとは!(短編からはじめたのですね)

あれはお二人の幸せな未来を想像して書いたので、甘すぎる内容でお恥ずかしい・・・

でもあのような感じでもお二人の幸せなら感動してもらえるんですね。

私もP様の暖かいコメントでいつも癒されております、ありがとうございます。

2015/12/14 (Mon) 16:54

うさぎ

Re: タイトルなし

L様今回も力の入った力作ありがとうございます、L様の萌えがあふれるばかりで感動です!

アンドレのせっかくのサプライズだからバラの花つきです。(アンドレならこれくらいしても絵になりますよね)

やはり2週間で恋するなんてオクテなオスカル様には無理なんです。

アンドレに惹かれているものの真面目なために一時の感情で好きだの愛してるだのがいえない。

美形のお二人がやるとどんなキスシーンでも絵になって萌えます、そして何度も待っているなんて言われると女性はさらに好きになっちゃうんですよね。

今後もL様が萌えますよう頑張ります!L様いつもありがとうございます!

2015/12/14 (Mon) 17:05

うさぎ

Re: No title

S様お久しぶりです!

今回は短編で書いていたショコラを長編で連載中です。

物語は後半に入りましたのでお二人がどうなるか注目ください(今回結末は決まってますけど)

2015/12/14 (Mon) 17:08

うさぎ

Re: タイトルなし

S様、ローマの休日は私も思いました。(名作映画と比べるのは失礼かもしれませんが)

王女様ではないものの、女優で少しの間の休息にアンドレと普通の恋人になってみる、なんてシチュエーションは似ています。

あはは、古い映画の映像ですか、そしたらショコラは1970年代の話にしたほうがいいのかな?

でもうれしいです、ありがとう、S様

2015/12/14 (Mon) 17:12

うさぎ

No title

K様辛いキスシーンに思えましたか?

やはりお二人の別離ってファンにとっては切ないですね。

これからの物語の展開が予測されるからでもあるんでしょうね。

2015/12/14 (Mon) 17:16