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うさぎ

ショコラの誘惑⑯

アンドレはアルバイト先のバー「セラヴィ」にいた。

ピアノを前にして想うのはオスカルのこと。

映画の中のオスカルとアンソニーとのキスシーンが頭から離れない。

これからも彼女が女優である限り、あのようなラブシーンは何度でもあるだろう。

今日はどうしても歌う気持ちになれない。・・・

「カール、演奏を代わってくれ!今日は飲みたい気分なんだ!」

アンドレはピアノから離れて客席のテーブルに移動した。

カールと呼ばれた男性は、アンドレが休みの日に交代要員として雇われている、今日はたまたま「セラヴィ」に飲みにきていたのだ。

カールは不思議そうに

「珍しいな、お前がピアノを弾きたくないなんて」といった。

「ああ、ちょっと失恋した気分なんだ」

「お前が失恋?どんな女に言い寄られても興味が無いお前がか?」

「そうだ、頼むよ」

アンドレはカールにピアノを交代してもらってテーブル席に座った。

ブランデーを注文して一人飲み始めた。

悲しい気持ちを振り払うように何倍も飲み続けた。


以前彼女のためにFly me to the moon を歌い、バラの花を贈った。

ためらいながらもバラを受け取り、頬を染めていたお前

そして別れを告げた後、彼女は初めての口付けを俺にねだった。

蒼い瞳からはいくつもの涙が零れ落ちて・・オスカルとの口付けはシャンパンと涙の味がした。

あれはまるで夢のような一夜。

外見からは想像もできないほどウブでオクテなお前が勇気を振り絞って俺に最後の思い出をくれた。・・・

昨日のように思えるが遥か遠い昔の出来事にも思える・・

情けないことに俺の眼からは涙まで出てきた。・・・

何故彼女なんだろう?

何で俺は他の女性を愛せないのだろう?

こんなに報われない愛でも俺はこの愛しか選べない

だって・・彼女は歌とピアノ以外に興味が持てなかった俺に初めて愛を教えてくれた人なんだ!

オスカル・・何でお前はわからなかったんだ。

何故わからない?・・

俺達は一目で惹かれあったじゃないか!

「マドモアゼルオスカル」を観たあのときから俺達は惹かれあっていたはずだ!

だからこそお前は俺の誘いを拒めなかったんだ。

俺達の心は通じ合って・・いたんだ。

初めての恋 初めての口付け 初めての胸の痛み 

これは真実の愛だ・・・たったひとつの愛なんだよ


ため息をついてはあおるようにブランデーを飲み続けていたら、そこへアンドレ目当ての女性客マリアンヌが話しかけてきた。

「アンドレ珍しいわね、ピアノと歌ではなくお酒を飲んでるなんて」

「一人?」

「ああ、そうだが・・・」

「それなら一緒に飲んでもいいかしら、話し相手になるわよ」

アンドレはいささか酔ってしまって女性客相手に会話を始めた。

「それで、どうしたの?荒れている訳は?」

「失恋したんだ」

「えぇ!貴方が?いつもピアノと歌にしか興味を示さない貴方が?」

「みんなおんなじこと言うんだな」

「だって本当のことよ、いつも貴方目当てで来ても絶対にお誘いに乗らないアンドレ・グランディエじゃないの」

「もしかして女性に興味が無いって噂もあったくらいで・・あ、でも一度だけ貴方が女性を口説いてるところを見たわ!」

「ラブソングを歌ってお目当ての女性にバラの花まで差し出してたわね」

「あの彼女とはあれからどうしたの?あれから彼女の姿を見かけないってことはもしかして・・・振られた?」

「余計な詮索はやめてくれないか、ただでさえ落ち込んでるのに・・」

「そうなの?落ち込んでるのね、じゃあ、慰めてあげましょうか・・」
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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 4

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ローズマリー

イヤー!

アンドレが、いくら酔った勢いとは言え、オスカル以外の女性に、慰められるなんて嫌。

2015/12/17 (Thu) 15:50

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2015/12/18 (Fri) 00:14

うさぎ

Re: イヤー!

R様の叫び声が聞こえました。

やっぱりお二人はお互い以外触れてほしくない、いい仲になんて絶対いやですね、その気持ちは重々わかります。

2015/12/18 (Fri) 17:41

うさぎ

Re: No title

N様、体調崩されたんですね大丈夫ですか寒くなりましたからね。

アンドレ危ないですね、酔ってるし。

しかもオスカル様アンドレへの愛に気がついたのに。・・

心配させて申し訳ありません。

2015/12/18 (Fri) 17:45