ショコラの涙③
翌日オスカルは早くに目覚めた。
夕べは不安で眠れなかったのだ。
今日、父がアメリカから戻ってくる。
アンドレとは、コンサートの練習や準備があるからしばらくは会えない。
大事なコンサートの前だから心配をかけたくはない。
何とか父を説得出来ないものか、一晩中考えてほとんど眠れなかった。
オスカルは起き上がり朝食を取るため着替えて下の階に下りていったら、食堂にはエステルがいた。
「オスカル、今日は社長がお戻りになるわ、これを機に貴方も女優業を再会してみたら?」
「貴方にはいくつもの良いオファーが来てるのよ」
「エステル・・その話は父上との話が終わってからにしてほしい」
そして朝食が運ばれてきた。
この屋敷では食事は静かなものだ、アンドレと食べるときとは何と違うのだろう。
考えてみれば、食事中に笑うことなどこれまで無かった・・・
オスカルはあまり食欲も無く、ほとんどの朝食を残して再び部屋に戻っていった。
部屋の中でソファーに座り込み静かに父の帰りを待っていた。
やがて、屋敷の前に車が止まる音が聞こえ、外から男性の声が聞こえる、これは、父の声だ!
父が帰ってきた!
胸の動機を押さえながらオスカルは父に挨拶するために自分の部屋を出て階段を降りて行った。
すると玄関から中に入ってきたばかりの父の姿がそこにあった。
「オスカル今戻ったぞ」
「父上、お帰りなさいませ」
父はオスカルに一瞥すると、すぐに秘書のエステルのほうに向き直り、
「私が留守の間、ご苦労だったな、オスカルがいろいろと手を焼かしたようだが」と言った。
エステルは
「いいえ、オスカル様のマネージャーを任されていましたのに、私の不行き届きで申し訳ありません」と答えた。
二人の会話は、すでにアンドレとのことはエステルから知らされているということだな。
オスカルは心を決めるしかないと思った。
「オスカル、私の部屋に来るように」と父がオスカルに申し付けた。
オスカルは父の後ろを数歩後に追うように歩いていった。
そしてたどり着いた先はジャルジェ卿の部屋だ。
ジャルジェ卿は部屋の中にオスカルを招き入れてドアを閉めた。
部屋には大きな机と椅子があり、その椅子にジャルジェ卿は腰掛けた。
オスカルはつっ立ったままいたが、ジャルジェ卿は気にも留めず話し出した。
「オスカル、お前はどういうつもりだ?エステルから聞いたが最近勝手なことばかりしていると聞いたが」
静かだが怒りを感じる声だ。
「お前が「マドモアゼルオスカル」に出たことで先祖のオスカル・フランソワとジャルジェ家の名誉が回復されたのはめでたいことだ」
「だが、その後のお前は勝手に女優業を休業し、何処の馬の骨とも知らぬ男と付き合っているそうではないか」
「それも財産も家柄も持っていない男だと聞く」
オスカルは父の言葉に怒りを感じたが、ここは冷静にならなければ、と気を静めながら反論した。
「父上であっても彼を愚弄するのはやめていただきたい、彼はアンドレは素晴らしい男性です」
「彼は「伯爵令嬢と黒い騎士」で役作りに悩んだ私の相談に乗ってくれて協力もしてくれた、それからも私にいろんなことを教えてくれました」
「彼は私に優しく大事にしてくれて、彼といると自然でいられ、心和むのです、どうか彼との付き合いをお許しください、私との付き合いを願うために父上に挨拶に伺いたいとも言っています」
オスカルは父の反対は想定内だった。
しかし、それでも父にわかってもらうよう説得を試みようとしたのだ。
「父上、どうか彼にお会いになってください、お願いです父上・・」
断られるのを承知で言った言葉だった、多分駄目だといわれると思った、それでも言うしかない。
しかし父は顔色も変えないまま意外にも
「・・・わかった」と一言述べた。
「お前がそれほど言うのならやつに会ってもいい」
そして「私が屋敷にいる間に訪れるよう、彼に伝えておけ」と意外な返事をした。
「では!・・・お会いになってくださるのですか?・・・父上・・・」
オスカルはまさかと驚きながらもわずかにでも話が前進したようでうれしかった。
「会うといっているのだ、それが望みなのだろう」
「ありがとうございます、父上」
その夜、オスカルはアンドレに連絡を取った。
「アンドレ、とうとう父上がアメリカからお戻りになられた・・」
「そうか、俺とのことを何か言われたのか?」
アンドレもジャルジェ氏に反対されてるのは知っていた。
「やはり・・私達が付き合うことに反対のようだったが・・・それでもお前に会うと申されたのだ、数日中に屋敷に訪れるようにと・・」
「会ってくれるというのか・・・それだけでもありがたい」
「しかし、父上は何を考えておられるのかが不安だ」
「オスカル、反対されてるのは承知の上だ、だがお前とのことを認めてくれるまで何度でもお願いに伺うつもりだ」
「父がお前に失礼なことを言わなければいいが・・・」
「こんな何にももっていない男が大事な娘と付き合うなど簡単に許してくれないのはわかっているよ」
「それでも会って許しを請うて誠意を見せたい!お前と結ばれるには避けて通れない道だ」
「そうだな、父上がわかってくれるよう努力していくしかないのだから・・」
オスカルは心細かった気持ちがアンドレの言葉で励まされた気がした。
「それからオスカル、コンサートは来週に決まった、」
「そうか、それは楽しみだ!必ず行くからな!」
今まで不安で仕方なかったのに彼の一言でこんなに勇気が出る、やはり彼は私の特別な存在なのだ。
夕べは不安で眠れなかったのだ。
今日、父がアメリカから戻ってくる。
アンドレとは、コンサートの練習や準備があるからしばらくは会えない。
大事なコンサートの前だから心配をかけたくはない。
何とか父を説得出来ないものか、一晩中考えてほとんど眠れなかった。
オスカルは起き上がり朝食を取るため着替えて下の階に下りていったら、食堂にはエステルがいた。
「オスカル、今日は社長がお戻りになるわ、これを機に貴方も女優業を再会してみたら?」
「貴方にはいくつもの良いオファーが来てるのよ」
「エステル・・その話は父上との話が終わってからにしてほしい」
そして朝食が運ばれてきた。
この屋敷では食事は静かなものだ、アンドレと食べるときとは何と違うのだろう。
考えてみれば、食事中に笑うことなどこれまで無かった・・・
オスカルはあまり食欲も無く、ほとんどの朝食を残して再び部屋に戻っていった。
部屋の中でソファーに座り込み静かに父の帰りを待っていた。
やがて、屋敷の前に車が止まる音が聞こえ、外から男性の声が聞こえる、これは、父の声だ!
父が帰ってきた!
胸の動機を押さえながらオスカルは父に挨拶するために自分の部屋を出て階段を降りて行った。
すると玄関から中に入ってきたばかりの父の姿がそこにあった。
「オスカル今戻ったぞ」
「父上、お帰りなさいませ」
父はオスカルに一瞥すると、すぐに秘書のエステルのほうに向き直り、
「私が留守の間、ご苦労だったな、オスカルがいろいろと手を焼かしたようだが」と言った。
エステルは
「いいえ、オスカル様のマネージャーを任されていましたのに、私の不行き届きで申し訳ありません」と答えた。
二人の会話は、すでにアンドレとのことはエステルから知らされているということだな。
オスカルは心を決めるしかないと思った。
「オスカル、私の部屋に来るように」と父がオスカルに申し付けた。
オスカルは父の後ろを数歩後に追うように歩いていった。
そしてたどり着いた先はジャルジェ卿の部屋だ。
ジャルジェ卿は部屋の中にオスカルを招き入れてドアを閉めた。
部屋には大きな机と椅子があり、その椅子にジャルジェ卿は腰掛けた。
オスカルはつっ立ったままいたが、ジャルジェ卿は気にも留めず話し出した。
「オスカル、お前はどういうつもりだ?エステルから聞いたが最近勝手なことばかりしていると聞いたが」
静かだが怒りを感じる声だ。
「お前が「マドモアゼルオスカル」に出たことで先祖のオスカル・フランソワとジャルジェ家の名誉が回復されたのはめでたいことだ」
「だが、その後のお前は勝手に女優業を休業し、何処の馬の骨とも知らぬ男と付き合っているそうではないか」
「それも財産も家柄も持っていない男だと聞く」
オスカルは父の言葉に怒りを感じたが、ここは冷静にならなければ、と気を静めながら反論した。
「父上であっても彼を愚弄するのはやめていただきたい、彼はアンドレは素晴らしい男性です」
「彼は「伯爵令嬢と黒い騎士」で役作りに悩んだ私の相談に乗ってくれて協力もしてくれた、それからも私にいろんなことを教えてくれました」
「彼は私に優しく大事にしてくれて、彼といると自然でいられ、心和むのです、どうか彼との付き合いをお許しください、私との付き合いを願うために父上に挨拶に伺いたいとも言っています」
オスカルは父の反対は想定内だった。
しかし、それでも父にわかってもらうよう説得を試みようとしたのだ。
「父上、どうか彼にお会いになってください、お願いです父上・・」
断られるのを承知で言った言葉だった、多分駄目だといわれると思った、それでも言うしかない。
しかし父は顔色も変えないまま意外にも
「・・・わかった」と一言述べた。
「お前がそれほど言うのならやつに会ってもいい」
そして「私が屋敷にいる間に訪れるよう、彼に伝えておけ」と意外な返事をした。
「では!・・・お会いになってくださるのですか?・・・父上・・・」
オスカルはまさかと驚きながらもわずかにでも話が前進したようでうれしかった。
「会うといっているのだ、それが望みなのだろう」
「ありがとうございます、父上」
その夜、オスカルはアンドレに連絡を取った。
「アンドレ、とうとう父上がアメリカからお戻りになられた・・」
「そうか、俺とのことを何か言われたのか?」
アンドレもジャルジェ氏に反対されてるのは知っていた。
「やはり・・私達が付き合うことに反対のようだったが・・・それでもお前に会うと申されたのだ、数日中に屋敷に訪れるようにと・・」
「会ってくれるというのか・・・それだけでもありがたい」
「しかし、父上は何を考えておられるのかが不安だ」
「オスカル、反対されてるのは承知の上だ、だがお前とのことを認めてくれるまで何度でもお願いに伺うつもりだ」
「父がお前に失礼なことを言わなければいいが・・・」
「こんな何にももっていない男が大事な娘と付き合うなど簡単に許してくれないのはわかっているよ」
「それでも会って許しを請うて誠意を見せたい!お前と結ばれるには避けて通れない道だ」
「そうだな、父上がわかってくれるよう努力していくしかないのだから・・」
オスカルは心細かった気持ちがアンドレの言葉で励まされた気がした。
「それからオスカル、コンサートは来週に決まった、」
「そうか、それは楽しみだ!必ず行くからな!」
今まで不安で仕方なかったのに彼の一言でこんなに勇気が出る、やはり彼は私の特別な存在なのだ。
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