ショコラの涙⑲
オスカル・・・
アンドレ・・・
ようやく・・・会えた・・・
この気持ちをこの想いをどう言い表せばいいのだろう・・結ばれるために別れた二人・・・その二人がようやく会えた
会いたくて会いたくて・・それでも互いのためだと必死で耐えたこの年月。・・
彼女の瞳が訴えかけていた・・
歌って・・・あの時のように・・・
いつもお前はピアノを奏で歌って私に聴かせてくれた・・いつもいつも、お前は歌で私に愛を伝えてくれた
あの歌をもう一度聴かせてほしい・・
この気持ちを言い表すには、歌にして彼女に送り届けることだけ・・・
オスカルへの愛の歌を・・・
彼女の瞳の訴えに応じてアンドレは、ピアノに戻り、再び奏で歌いだした。
それはアンドレからオスカルに贈った歌の数々・・
まず「永遠のラブストーリー」を歌った、これはオスカルに永久の愛を誓った歌だ。
「異世界の恋人」を、これはオスカルがFly me to the moonが好きだといったから異世界でお前に恋をする歌を作った。
「夢であえたら」はオスカルが俺の夢を見た、と言って聞かせてくれたのがきっかけで生まれた歌だ
「カサノバな彼」はセラヴィでの俺はカサノバのようだとオスカルに言われたんだ
「クールな彼女」オスカルをイメージして作った、どうせ私は冷たく見えるといいたいのだろう!といったが俺はクールはカッコいいやつにも使うんだととりなした。
「夢のラストダンス」オスカルが「アンドレ!私のラストダンスはお前のものだ」といってくれたのが最高にうれしくて!その思いに答えるために作った。
そして・・俺達二人の出会いを歌にして去年のクリスマスにオスカルに捧げた曲!「ショコラの恋人」!
俺の作った曲はみんなオスカルとの思い出、オスカルを思う気持ちで生まれてきた。
お前への愛で俺の曲は生まれるんだ。
全ての歌が歌い終わらせアンドレは立ち上がり観客にお礼をしていく。
観客はアンドレの歌の世界に引き込まれ、拍手と喝采を贈りつづけた。
どうかこの素晴らしい愛の歌をもっと聞かせてほしい、と願うようにアンコールの声が鳴り止まないでいた。
その声に答えアンドレは再びピアノの前に座りマイクで最後の歌のタイトルを告げた。
「最後の歌のタイトルは・・・」
「 オスカル 」
その名にオスカルは驚愕した。
まさか自分の名をタイトルにして作っていたなんて、それもコンサートで歌うなんて信じられないことだった。
彼女への思いのたけを込め 彼女のためだけに作ったこの曲を彼女に向けて歌う!
アンドレは歌った「オスカル」を
神と剣の名を持つ人
君は僕の至上の存在 永遠の愛を誓った愛しい人
天上にいる君にはどんなにこの手を伸ばしても届かない
だから、僕は歌うよ 君のために
せめてこの歌だけでも君に届きますようにと祈りながら
君のためにだけ歌う
この歌が二人をつなぎ 歌が僕達を結びつける
恋人よ会えないときでも悲しまないで
いつか結ばれるそのときまで 僕はいつも君を見守っているから
僕は君の囚われ人 僕の人生は君への愛の賛歌
オスカル 君は 神と剣の名を持つ人
それは、会えない彼女への思いを込めた愛の歌。
恋しくて恋しくて夜も眠れないほど会いたくてたまらない人。
だけど、いつか結ばれると信じて耐えた。
心が離れてしまわないだろうか・・自分を忘れてはいないだろうか、と不安に心を痛めた日々・・
その想いを歌にしたのが「 オスカル 」
アンドレは歌に愛を込めた。
アンドレのオスカルへの愛、それはこの世で一番美しく清らかな感情
その愛を持つアンドレだからこそ素晴らしく歌える
アンドレは会場全てにオスカルへの愛を響き渡らせた。
観客達は究極の愛の歌を聴いた。
何度も転生しては愛し合い結ばれることを運命づけられた恋人達の愛の歌を。
この歌はアンドレのオスカルへの、終わることの無い愛の誓い。
それは誰もが夢見、憧れる永遠のラブストーリーの歌が会場に鳴り響いていた。
観客達はアンドレの愛の歌に心打たれた。
曲が終わった後もしばらくシンとしていたが、やがて心の中の熱い物があふれ出すように拍手と喝采の渦が会場に巻き起こった。
今のアンドレの歌声はセラヴィで歌っているときと比べ物にならないくらいプロとして完成されていた。
しかし、それに加えて今日のアンドレの歌声には愛を伝える何かがあった、それを観客は感じ取ったのだ。
まるで嵐のような拍手の中、アンドレはオスカルをただ見つめた。
オスカル・・俺達はひとつだ・・誰も俺達を引き離すことは出来ない
結ばれるために生まれた二人 この愛は何者にも壊すことは出来ない
きっと俺達は何度も生まれ変わってはめぐり合い愛し合ってきた恋人達
そして生まれ変わるごとに愛は深まり、そのたびにさらに強い絆で結ばれてきたんだ。
俺の歌とピアノとオスカル この全てがそろってこそ俺の音楽は完成するんだ。
俺達はひとつだ。・・・
オスカルは泣いていた。
それは、深い喜びと感動の涙
彼の自分への変わらぬ想いをしっかりと受け止めたのだから
アンドレ・・・お前の歌を聴いてお前の心が見えた・・
お前は何も変わってはいない・・お前は今でも誰より私を愛してくれるアンドレ・グランディエだ!
私達は互いがいるから強く生きられる、互いだけが愛し合える存在、永遠に続く愛を二人でつむいでいく、そんな存在なんだ
アンドレ・・私達はひとつだ・・