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うさぎ

ショコラのハネムーン⑧

行方不明になって一年経ち宇宙船の乗組員は亡くなったと判断され、彼らの葬式を執り行うことになった。

葬儀会場にはステーションにいる全ての人が集まって彼らの冥福を祈った。

その中にオルガもいたが、みんなが悲しみに涙する中、彼女はアダムの写真を前にしても泣かなかった。

ただ、じっとアダムの写真を見つめていただけで葬儀が終わると帰っていった、バラの世話をするために。

そのため、その場にいた人々はオルガは何と冷たいのだろう、と中傷した、アダムはあれほど彼女に恋焦がれていたのにと

それからもオルガは毎日一人でバラの世話を一人でこなしていた。

フレイア人は人間よりもバラのほうが大事なんだと陰口を叩かれようとオルガは気にしなかった。

バラを綺麗に咲かせる、オルガは何かに取り付かれたようにバラの花の世話をした。

しかし、何故かオルガは日に日に体調を悪くしていった。

顔色が悪く、ふらつくこともあり、訓練中のミスも起こす。

そんな中でもオルガはバラの世話をすることだけは、怠らなかった。

とうとう訓練中に倒れてしまい、病院に担ぎ込まれてしまった。

診察の結果、彼女の体は憔悴し、弱りきっていた。

食欲もなく、睡眠もろくにとっておらず、何より心の病に陥ってるとしか思えない、まるで体全体で生きることを拒否しているような状態だった。

オルガはアダムが死んだことに誰よりも傷ついていたのだ。

フレイアは感情を外に出さない人種であった、あまりに大きな感情は冷静な判断力をなくすという教えに基づいている。

だが、オルガの悲しみは心の中に閉じ込めておくにはあまりにも大きく、やがて自分の体を崩壊させる危険を犯すほどに膨れ上がっていたのだ。

オルガはバラが綺麗に咲いている限りアダムが生きて戻ってくると信じていた。

しかしどんなに待っても彼は戻らない・・もう辛い現実を受け止めるしか無い。

彼はもう戻ってこない、オルガにとって、それは耐え難い事実、だから生きる糧を失ってしまった。

オルガは生きるのをやめて、魂になってでもアダムに会いたいと思った。

それはあまりに稚拙で未熟なオルガの愛情表現、彼女は自分でも気がつかない間にアダムを愛していた。

未熟だからこそ純粋で、強く激しいオルガの愛情。


そこで初めて訓練生の仲間達はオルガは悲しみを外に出さず、体と心の奥底に閉じ込めて一人苦しんでいたのだと理解した。

一人の女性訓練生が代表でオルガを見舞いに来た。

「ごめんなさい、気がついてあげられなくて、貴方はアダムの死を誰よりも悲しんでいたのね」

「貴方の惑星フレイアの文化をあまりにも知らなかったことにも、貴方達は愛する人が亡くなった場合、殉死する場合があるそうね、今の貴方のように悲しみが深すぎて、貴方達は決して感情が薄い民族ではなかったのよ」

「オルガ、悲しければ泣いてもいいのよ」

「泣く?」

「そう、少なくとも悲しみを吐き出すことは出来る、そして涙は全ての感情があふれ出す行為だわ」

しかし今のオルガにとって泣くことさえ慰めにならない。

だが、女性訓練生はオルガに生きる目的を告げに来た。

そして慎重に次の言葉を告げた。

「オルガ、実はね・・、アダムが戻ってくるのよ・・」

「今日宇宙船から通信が届いたの・・」

それまで空中を漂っていたオルガの瞳がはっきりと光を宿した。

「アダムが・・戻ってくる?」

「そうよ、彼は生きていたのよ」

「ワープ航法が故障して宇宙空間をさまよって通信も途絶えた空間にいたの、けれど彼らはある惑星に下りてそこの鉱物資源を使い、何とか自力で修理してワープを可能にして、今こちらに向かっているわ」

彼がアダムが生きて戻ってくる、この事実はオルガの心と体に生きる力を与えた。

もしも彼の心が変わっていなければ、今度こそ私は・・・


そして一週間後、オルガは退院して基地内の管制塔の中にいた。

今日は行方不明だった宇宙船の乗組員達がステーション内の家族と通話が出来る日だ。

次々に乗組員達が家族や恋人と順番に会話していった。

そしてアダムの番になった、彼は話をしたい相手にオルガを選んだのだ。

「オルガ・・もうすぐそっちに戻れるから・・ようやく会えるんだ」

興奮気味に話す彼、何を話そうか焦っているようだが、少しして落ち着きを取り戻した

「ステーションに戻ったら君に聞いてもらいたいことがあるんだ・・」

「君にどうしても聞いてほしい・・」

「オルガ・・・聞こえているかい?」

オルガが何も答えないので心配そうに質問する彼、

「聞いている・・・」

「アダム・・お前のバラが咲いているんだ、私達のバラが」

アダムはその言葉でオルガの真意を汲み取った

「そうか、君と見るのが楽しみだ」



そして、二日後、宇宙船はステーションに着陸して戻ってきた。

ステーション内の人々が見守る中、宇宙船から降りてくる乗組員達。

その中にアダムがいた。

みんな、無事を祝う声をかけてくれて、アダムはありがとうの言葉を口にしながらも誰かを探していた。

友人達は、アダムに彼女ならバラ園で待っているよとそれぞれが教えてくれた。

アダムは言われたとおりバラ園に行ってみると、そこは、沢山の見事なバラが咲いている景色。

バラが咲く景色の中に一人たっているオルガがいた。

オルガはようやく会えたアダムの姿に魅入ってしまっていた。

少し痩せたみたいだけど変わらない優しい笑顔の彼が近づいてきた。

アダムは「オルガ」と声をかけた。

オルガは声が出ないほどあふれる感情で一杯だった。

彼の顔を見るまで彼の声を聞くまで

何て彼に伝えよう、何て言えば彼にこの気持ちをわかってもらえるのだろうと

彼女が彼に伝えたかった言葉

「アダム・・待っていたんだ、ずっとお前を待っていた・・」

そしてアダムはその瞳からは初めて感情のまま流す涙を見た。

彼女の金の瞳から次々に透明に輝く涙の粒がこぼれ落ちた。

愛する人が生きている、その喜びの涙を彼女は流していた。


オルガ・・・再び君に愛を告げよう、誰よりも君を愛しているんだと

君に地球を見せてあげたい、緑豊かな地球で君の好きなバラが咲く景色を二人で見よう

今度こそ受け取ってくれるね、この想いを


そしてアダムはオルガを抱きしめて、初めての口付けを交わした。

それは地球人アダムとフレイア人のオルガの恋の物語。

愛を知らないフレイアの娘オルガの不器用な恋

はじめて知った愛に深い悲しみを知り、そして今、限りない喜びを知った。

バラが咲き乱れる中で二人は愛し合い結ばれた。


the end
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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 6

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0402

拍手3番目

こんにちは!更新を今か今かと待ってました!ハネムーンのふたりの事も楽しみにしています!頑張って下さいね!

2016/03/27 (Sun) 15:57

うさぎ

Re: 拍手3番目

04様こんにちは、更新楽しみにしてもらえてうれしいです!

ハネムーン中のお二人の話は続きます。

今回少しアンドレが悩むくだりになります。

応援ありがとうございます。

2016/03/28 (Mon) 15:47

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2016/03/28 (Mon) 16:13

うさぎ

Re: No title

N様ハッピーエンドに喜んでいただけてうれしいです。

また涙していただけたことも。

自分で書いといてなんですが、実は私も泣いてしまいました。(恥)

感情を表に出さないで悲しむって辛そう・・・思わず涙です。



2016/03/28 (Mon) 16:53

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2016/03/28 (Mon) 19:41

うさぎ

Re: タイトルなし

M5様、そうか!the ENDなんて書いてあったら間違えますよね、失礼しました。

まだ少し続きます。

映画のことで問題発生する展開なんです。

映画気に入ってもらえて良かったです!

実は恥ずかしながら私も気に入ってる話です、(照れ)お二人で想像してくれてうれしいです、まさにお二人をイメージして作った作品ですから。

もう日にちたってるから見てしまうでしょうけど、この先の展開をお楽しみに。



2016/03/29 (Tue) 15:36