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うさぎ

ショコラのハネムーン⑨

映画が終わり、主題歌が鳴った。

ハッピーエンドではあるが、オスカルは涙が止まらなかった。

愛する人が亡くなってしまい自分の前からいなくなる・・・その気持ちをオスカルは痛いほどわかる。

アンドレがもし、いなくなってしまったら、私もオルガと同じように生きていけない・・

絶対に耐えられない、

オスカルはアンドレにしがみつくようにして泣いてしまった。

「オスカル一体どうしたんだ?」

アンドレとしては映画を観たオスカルの尋常ではない嘆きにどうしてそこまで悲しいのだろうと、心配しながらオスカルを抱きしめていた。

しばらくオスカルが落ち着きを取り戻すまでそうしていたら、いつの間にか初老の男性が近くに立っていた。

「失礼、アンドレ・グランディエさんですね、そしてマダムオスカル・フランソワ」

突然声をかけられて二人は驚き、その男の顔を見た。

「貴方は!ジョバンニ監督!」

思わずオスカルは声にした。

オスカルがジョバンニ監督と呼んだ彼こそ、今観た映画「オルガの涙」を製作した監督だったのだ。

「私を知っていてくれて光栄ですよ、オスカル実は貴方にお話があるんですよ」

「私に話?何でしょう?」


その後二人はジョバンニ監督に誘われるままに船内のバーに出向いた。

「大事なハネムーンの途中に無粋だとはわかっていましたが、それでもオスカル貴方にこうして出会えたのだからチャンスだと思って声をかけてしまいました」

ジョバンニ監督は恐縮しながらも話し出した。

「オルガの涙は長年構想を練って暖めてきた、私の代表作にしたいと意気込んで作った作品なんですよ」

「監督、素晴らしい作品でした、感動して涙が止まらなかったほどです」恥ずかしそうにオスカルは言った。

「異性人との恋愛をあんなにロマンチックに描くなんて、私は監督の作品は以前から好きでリスペクトしていたのですが、今回は特に素晴らしいと思いました」

興奮しながら答えるオスカルの言葉にジョバンニ監督は喜んだ。

「そういってもらえるとうれしい!実は私はハリウッドから誘いが会ってアメリカに本拠地を移す予定なんですよ」

「今回のオルガの涙をハリウッドで改めてリメイクして大々的に発表するつもりなのです」

「本当のことを言うと今回のオルガ役はオスカル貴方に演じてもらいたかった、貴方のそのブロンドも印象的な瞳や容姿はまさに私の思い描いていたオルガそのものだから」

「しかし、貴方が女優を引退すると聞いてオファーをかけるのが遅かったと悔やんだものでした」

「なかなか貴方のような女優が見つからなくてオルガ役を見つけるのは困難でした、だけど、それでも貴方に似せたようなメイクで演じてもらいましたが・・」

「だが、ハリウッドでは今回のを越える作品にしたい、私の思い描いていたオルガを」

「そこで・・貴方に改めて主演のオルガをお願いしたい・・・是非引き受けていただけませんか?」

オスカルは一瞬何を言われたのかわからないくらい驚いてしまった。

今見たばかりの映画オルガの涙のハリウッド版を自分に演じてほしいと憧れのジョバンニ監督がそういったのか?・・

アンドレは監督の話を黙って聞いていた。

シアターで監督が声をかけてきたときから予感はしていたのだ。

オスカルは女優としての成功は眼の前だった、それを捨ててまで自分の妻に徹しようとしてくれた。

それは、オスカル・フランソワの意思を継ぐため、そして自分のため・・

だが、オスカルにはオスカルの人生がある、そして誰もが彼女を求めて病まない、だって彼女は誰よりも輝ける存在なのだから。・・・

アンドレは立ち上がりオスカルに声をかけた。

「オスカル、俺は先に部屋に戻っている・・」

アンドレがいやな気分になったのかとオスカルは気になった。

「アンドレ、それなら私も一緒に」

「監督からの話はお前が好きに決めていい、女優を続けても俺はかまわないよ」

「ジョバンニ監督、妻を認めてくださってありがとうございます、監督は目が高い、オスカルは、妻は素晴らしい女優ですから」

アンドレの言葉にジョバンニ監督は感じ入って

「アンドレ、貴方のご好意に感謝します」

「オスカルは理解のある良い旦那様を手に入れたようだ」

その言葉にアンドレは「恐縮です監督、では失礼します」と言ってその場をさった。

アンドレが去ってしまい、オスカルとしては気になるところだが、監督との話はまだ終わってはいない。


アンドレは自室に戻っていった。

部屋に戻るとベッドに横たわり改めて考えてしまった。

偉大な監督に懇願され主演女優としてハリウッドに行く、女優としてはこれ以上の名誉は無い。

オスカルは生まれながらの女優だ、美しさも度胸もある、そして何よりあの感受性の強さ。

一度役にはまったらスイッチが入ってなりきってしまう。

しかも彼女は見た目は中性的だが内面は実に女らしい、その両面を持ったオスカルだからこそみんな魅力を感じてしまうのだ。

いつも彼女は俺の手の中からいなくなってしまう。

やっと追いついたと思ったら今度はもっと遠くに行ってしまう。

オスカルの成功を祝ってあげなくてはいけないのに、また彼女が手の届かないところに行ってしまったようで寂しいんだ。

俺は何て情けない男なんだろう、オスカルが自分一人のものでいてほしいなんて。

だけど、俺はちっぽけな男だ、理解ある夫を演じているだけで、実は心の狭い男なんだ、オスカルを独占していたい、自分だけのものにしておきたい、それが俺の本音だ。

彼女が女優を辞めるといった時、これで俺だけのオスカルだって、うれしくてたまらなかったんだ!

自虐的な思いに悩みながらもふとアンドレは思い至った。

「俺はこうやって一生オスカルへの叶わぬ思いに囚われていくのかもしれないな」

アンドレは悩みつかれたのかいつの間にか眠ってしまった。

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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 9

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0402

行かないで(ToT)

新婚旅行の邪魔者の監督さん(-.-#)オスカルを連れていかないで下さいm(_ _)mハリウッドという美味しいエサで釣らないで欲しいです。オスカルとアンドレは温かい家庭を作るんです!オスカルの良いところは、切り替えの早いところです!私はきっと、オスカルが映画出演を断るんじゃないかなぁと思ってます!やっと結婚して、これから新しい幸せを築き上げるスタートラインに立ったふたりなのに。お願いです!離ればなれにしないで下さいm(_ _)m

2016/03/28 (Mon) 17:18

フロレル

ハリウッドでリメイク

アンドレが音楽担当すれば?

2016/03/28 (Mon) 19:27

-

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2016/03/28 (Mon) 20:04

フォンティーヌ

アンドレが音楽と相手役なら素敵です!

2016/03/29 (Tue) 06:26

うさぎ

No title

T様、アンドレはオスカル様のことを第一に考える癖があるので、耐えてしまいます。

それに男は物分りのいい夫を演じる場合が多いのも真実なのです。

しかし、そこはオスカル様はお見通しですから、それに離れたくないのは二人ともです。

T様はもうお見通しのようですけど(笑)

2016/03/29 (Tue) 15:16

うさぎ

Re: 行かないで(ToT)

04様、かなり心配してくれたんですね、04様の心情がこちらにまで伝わってくるコメントです。

でもオスカル様はもう妻ですから、アンドレのこと第一に考えているから大丈夫ですよ。

ダンスのくだりのときに言ってたオスカル様にはオファーを受けられないわけがあるんです。

彼女独特の考えかもしれませんが、それでアンドレへの想いが分かってもらえたらと思います。

2016/03/29 (Tue) 15:20

うさぎ

Re: ハリウッドでリメイク

FR様

それもいい案ですね、けどそれでもオスカル様は受けられないんです。

うーん、それにアンドレが音楽担当だとオスカル様の相手役によけい焼いちゃうかも。

スター同士が愛し合いすぎると不幸な場合があります。

でもこの二人は仕事より愛を取るタイプですが。






2016/03/29 (Tue) 15:29

うさぎ

Re: No title

N様ショコラのオスカル様も過去の記憶がどこかにあるのです、アンドレを失った痛みは失っていない。

N様だけでなくほかの皆さんもハリウッド映画に出るオスカル様を見たいようです、(笑)もちろんアンドレと離れては欲しくないのも同じですが。

男というものは妻の幸せを願いつつも独占欲も持ち合わせている、それが愛というもの

どちらも持っているのがアンドレがオスカル様を愛している証拠なんです、それをオスカル様は知ってるから大丈夫ですよ。

2016/03/29 (Tue) 15:43

うさぎ

Re: タイトルなし

F様もハリウッド希望ですか?それもアンドレが音楽と相手役とは大胆な発想です。

アンドレ忙しいですねえ(笑)

変なとこ真面目に考えるたちでして、そこまで話を持っていく勇気がありません。

この先の展開が納得できる内容なら良いんですが。

今日は特に(笑)

2016/03/29 (Tue) 15:48