マイリトルレディ⑱
「アンドレさん、舞台が終わったら役者の休憩室まで来て欲しいとオスカル様に頼まれているんです」
俺はロザリーに案内されてオスカルのいる休憩室までやってきた。
「オスカル様ロザリーです、失礼しますね」
言葉と同時にロザリーがドアを開けるとそこにはオスカルの手にジェローデルが口付けしていたところだった。
俺とロザリーはビックリして声も出せない状態になってしまった。
オスカルも俺達に観られたことに驚いて急いで手を引っ込めて俺に声をかけてきた。
「アンドレ久しぶりだな、こちらは学友のジェローデルだ、ジェローデル、私の後見人のアンドレだ」
ジェローデルも平静を装って挨拶してきた。
「はじめましてアンドレさん、貴方のうわさはかねがねオスカルから聞かされています」
近くで見たジェローデルはまさに育ちのいいお坊ちゃんというタイプだ、端正な顔立ちでオスカルと並ぶとよく似合う。
「こちらこそよろしく、ジェローデル、君にはオスカルが世話になっていると聞いているよ」
「いいえ、とんでもない」
「ジェローデル、久しぶりなのでアンドレとゆっくり話したいのだが・・」
「わかった、では先ほど話したことはよく心にとどめておいて欲しい」
ジェローデルは俺に失礼と声をかけて休憩室から出て行った。
「私もこれでお邪魔します、久しぶりにお二人でお話したいでしょうから」
「ロザリー、私の代わりににアンドレの世話をしてくれてありがとう」
「いいえ、ではオスカル様また後で、」
ロザリーは俺達に気を使って立ち去っていった。
どうも先ほどの景色をみたせいか、オスカルにどう話しかけていいか悩む、そこで俺は椿姫の会話をすることにした。
「椿姫の劇、すごく良かった、お前のマルグリット役光ってたぞ」
「そ、そうか、それは良かった、こんな女らしい役私に出来るか不安だったんだ」
オスカルもきまずい雰囲気だ、しかし俺はどうにも我慢できずに先ほどの景色のわけを聞いてしまった。
「さっきのジェローデルの話とは・・・聞いてもいいか?」
オスカルはしばらく黙り込んでから小さくうなずいて俺に答えてくれた。
「実は・・ジェローデルにプロポーズされたんだ・・」
オスカルがプロポーズを!まさかとは思ったが。
「ジェローデルは、私が「エンデュミオン」を演じたときすぐに女性だってわかったって、それからいつも見てくれていたらしい」
「学業を終えたら結婚して欲しい、といわれたんだ、でも私にはそんな気はないと伝えたら、私の気が変わるまでいつまでも待っていると・・」
これ以上ないプロポーズの言葉だ。
学園では憧れの君でジェローデルのような貴公子然とした若者に求婚されるオスカル。
オスカルはこのままでいくと間違いなく社交界の華となるだろう。
もう俺の役目は終わったのかもしれない・・
「アンドレ、今日は来てくれてうれしかったぞ」
オスカルは気を取り直して話かけてくれた、
「いや、俺も来たかったんだ、それに来て良かった、お前の素晴らしさにみんな見惚れていたよ」
俺はまだ椿姫の衣装をきたままのオスカルをじっと見つめた。
その俺の視線に気づきオスカルは恥ずかしそうに言った。
「そ、そんなにじっと見つめるな、こんな姿本当は恥ずかしいのだから」
だが、おれはそれでも見つめていた。
「どうして?こんな美しいお前を見る機会などそうありはしない、だから見ていたいんだ」
オスカルは頬を染めながらもゆっくりと顔を上げて微笑みながら俺を見つめ返してきた。
「オスカル綺麗だ、本当に綺麗だ・・」
