いつか何処かでめぐりあう③
しかし、オムレツの形にするのが最も難しい。
オスカルはアンドレに習って作っては見たもののオムレツというよりスクランブルエッグにしてしまった。
「味付けはいい、何度かやっていくと上手くなるよ」とアンドレに慰められてオスカルはもう一度チャレンジしてみた。
少しマシな形になったものの、やはりアンドレが作ってくれたものとは比べ物にならないオムレツだったのだ。
その後何度も挑戦していくもののやはり美しいとは言いがたいオムレツだ。
オスカルはほとほと自分が情けなくなってしまった。
そんな落ち込むオスカルにアンドレは「そんなにしょげるなよ、だいぶ上手くなったよ、実はオムレツって難しいんだよ、今度また挑戦すればいい」
「もう一度挑戦する!」とオスカルは言うのだが、
「材料がなくなってしまったよ、それに・・・このオムレツの山をこれ以上増やす気か?」とオスカルが作りに作ったオムレツを指差しながらアンドレは言った。
昼すぎからオムレツを作り続けてもう夕方にまでなっていた。
「これを全部お前一人で食べるのは大変だな」
「そ、そうだな、悪いがお前も協力してくれ」
「オムレツばっかりだと体に悪い、夕飯には肉や野菜も一緒に食べるべきだ、近くにスーパーはあるか?」
「ああ、近くにある」
「では一緒に行こう、夕飯の材料を買ってそれで他の料理も作って食べよう」
そういうことで結局二人は一緒にスーパーに出かけて買い物に行くことになった。
スーパーでアンドレは肉や野菜や果物を次々買い求めていった。
「全ての食材には栄養が含まれている、だからできるだけ多くの種類を食べるのが好ましいんだ」
料理初心者のオスカルは、料理だけでなく買い物もアンドレに教えられながら行なうことになった。
結局アンドレはオスカルのアパルトマンに戻ってくることになる。
不思議な感じだが再びアンドレの指導の下二人は夕食を作り始めた。
といってもオスカルはアンドレの助手役のようなもので、皿を出すとかアンドレが指定する材料を用意するだけだったが。
あっという間にミニステーキとラタティーユときのこのフリカッセとサラダとオムレツとパンというなかなか豪華な夕食が出来た。
「アンドレお前本当に料理が上手いな」
「うちのホテルは小さいから何でもこなさないとな、俺が客の料理を作ってた時期もあるんだ」
オスカルは「彼は苦労してホテルを経営してきたのだな、見た目は明るくてそんな感じには見えないのに」と感心してしまった。
二人は再び一緒に食事した。
二人はお互いの暮らしぶりなどいろんな話で盛り上がった。
「私はお前にくらべると苦労知らずだな、だってモデルの仕事は向こうから舞い込んできたものだ、モデルの仕事以外は何もしなくて、家事はメイド任せだったし」
「俺だってホテル経営は一人でやってきたわけじゃない、おばあちゃんがいたからここまでやって来れたんだ、それに従業員にも恵まれた、みんないいやつらなんだ」
「お前の経営するホテルはさぞかし料理が上手いのだろうな、だってこんなに料理の腕前が高いオーナーが経営しているのだから」
「うちのホテルの料理が上手いのは保障するよ、おばあちゃんのミルフィーユやクレープなんて最高に美味しいんだ、もしプロヴァンスに来たときはご馳走するよ」
「それは食べてみたいな、甘いものは好物なんだ」
彼といると話が弾んでしまう。
思えば不思議な出会いだ、少し前まで出会ったことの無い同士だったのに、こうしてオスカルのプライベートな空間であるアパルトマンで夕食を作って一緒に食べているのだから
何故だろう?彼といるのがこんなにも楽しいのは、よほど私達は気が合うのだろうか?
しかし、楽しい時間も終わろうとする時間になってしまった。
「大変だ、もう10時じゃないか!ごめんよ夕べも泊まって、今日もこんな遅くまでお邪魔してしまって、もうそろそろホテルに帰るよ」
そうアンドレに言われてオスカルは急に彼が帰ってしまうのが寂しくなってしまった。
しかし、確かに女性の部屋に男性がいる時間にしては遅い・・・
「そうだな・・・だが私の作ったオムレツはまだ残っているのだ、」
「一人では食べきれない、・・・だから、明日の朝も一緒に食べてくれないだろうか?」
オスカルは自分で何を言ってるのだろうと思った、しかし彼がこの空間からいなくなるのが寂しくてたまらない。
だから必死で止める理由を探したのだ。
「オスカル・・・もしかして、それって今夜もここで泊まっていけというお達し?」
オスカルは恥ずかしそうにコクンとうなずいた。
彼女は俺に好意を抱いてくれたんだ、アンドレはうれしく感じた。
「では、ご好意に甘えるよ」
「そうしてくれると助かる」
「しかし私のベッドルームのソファーではなくてリビングのソファーに移転してくれ!やはり同じ部屋で寝るのは困る!」
「あ、ああ もちろん」
「では今夜は私のアパルトマンで酒盛りと行こう!」
「また飲むのか?」
「お前と飲むのが楽しかったからな」
何でこんな展開になったんだろう?と思うものの彼女は何故か楽しい提案ばかりしてくる。
そしてそれに逆らえないほどの魅力も彼女は持っているのだ。