いつか何処かでめぐりあう⑬
2016年06月23日
オスカルは休暇を終えてモデルの仕事に復帰した。
スカウトされて始めたとはいえ、オスカルはモデルの仕事にやりがいを感じていた。
自分の写真を女性達が見て憧れを抱き感動してくれる、こんな恵まれた仕事を持っているのだ、だから精一杯素敵な自分を見せなければ。
そう思うものの、何処か以前と違い、撮影中に集中してない自分がいる。
以前はカメラのシャッター音が鳴るたびに流れるようにポーズを変えてカメラマンを満足させられたのに。
「オスカル、何ぼうっとしてるんだ、今のポーズは撮れたから、次のポーズに移ってくれ!」
「しかも表情がさえない、どうしたんだお前の得意な力強さが出ていない」
今もカメラマンのアランから怒鳴られてしまった。
「ああ、すまない、悪かった」
オスカルはすぐに気を取り直して表情を引き締めポーズを決めてみせる。
いけない仕事中なのだからほかの事を考えていてはいけないんだ。
私はプロのモデルなのだから。
時間はかかったが、アランの希望通りの写真が撮れ、撮影を終えることができた。
オスカルはほっとしながら帰り支度をしていた。
「オスカル、どうした?めずらしいなお前が撮影中にぼうっとするなんて」
アランが声をかけてきた。
「悪かった、少し休暇を取って休んだから休みボケかもしれない」
「ああ、そういえばお前初めて自分から休暇を取ったんだってな、無理も無いか、モデルとして人気が出てから休みなしで働いてたんだから」
「どうだ!仕事復帰祝いに飲みに行かないか?」
「復帰祝い?おおげさだな、たった一週間だけだぞ」しかも一日はショーのモデルをやったんだし・・でもあれを見てアンドレは最高に素敵だと褒めてくれたんだ。
「理由はどうでもいいさ、どうせ帰っても誰も待っていないもの同士だ、仲良く飲みに行こう!」
アランに強引に誘われてオスカルは飲みに行くことになった。
アランはかなり酒を飲むほうですぐにグラスを殻に開けて何杯もお代わりをした。
オスカルも飲むのは好きだからいい酒飲み友達なのだが、以前アランに付き合わないかといわれたときお前とではその気にならない、と冗談だと思って断ってしまったものだ。
しかし、アランはその後もこのように誘いをかけてくる。
「オスカル、お前休暇は、どんな風に過ごしたんだ?」
「まさか恋人が出来て一緒に過ごすためだったとか?」アランはきになるようでオスカルの休暇中の話を聞いてきた。
オスカルはアンドレとの一夜を思い出すと恋人と休暇を過ごしたといえなくも無いなと考えてしまった。
黙り込んでしまったオスカルが気になりアランは再び質問した。
「本当にそうなのか?今まで誰も付き合おうとしなかったお前が?」
「いや、恋人が出来たわけじゃない、ちょっと友達と遊びまわっただけだ」アンドレとのことは自分だけの思い出だ、だからいう気にはなれなかった。
アランはそれを聞いてほっとした顔をした、オスカルはアランは本気で自分のことを思ってくれたのかな?いつも冗談ともとれるような言い方だからあまり本気に捕らえてなかったが。
でも彼とは男女の仲ではなく良い友人でいたい。
それ以降は最近の撮影でこんなことがあったとか、これからはどんな写真を撮りたいとか仕事に関する話で盛り上がった。
アランとは職場仲間のようなものだから、もちろん話が合う、だって共通の話題があるのだから。
でもアンドレとは仕事の共通点など何も無い、なのにずっと楽しく過ごせていた、むしろアランとこうして過ごしているよりも自然にふるまえたのだ。
しかもアランのような仲間としてではなく、もっと近い存在に思えた。
「アラン、お前たとえば突然であった女性としばらく一緒に暮らすとしたら、どんな風に過ごす?」
「一人暮らしのプライベートな空間に突然であった女性と、お前なら退屈もせずに楽しく過ごせるか?」
「いきなりな質問だな・・だが、そうだな俺のアパルトマンに女性がか・・・それが好みな女性なら酒でも飲んで口説いて落とすかな?」
「そんなのしか頭に浮かばんぞ、大体知り合って間もない異性とでは、共通の話題がないからあまり長い時間は持たないだろうな」
そうなんだ、それなのに何故彼とはあんなに長い時間一緒にすごしていてもイヤにならなかったんだ。
むしろ別れるのが辛くて今でもこんなに思い出される。
オスカルはこのままアランと飲み続ける気にもなれなくなってきた。
「アラン、悪いがもう帰るよ」
「もう帰るのか?」
「ああ、明日も仕事があるので早く寝ようと思う」
オスカルが席をたって帰ろうとしたときアランが声をかけた。
「オスカル・・お前変わったな・・」
「変わった?」
「ああ、少し女らしくなったぞ」
「それはどうも、男っぽいといわれる私には最大の賛辞だ」
「じゃあな」
オスカルはそういってアランに別れを告げて自分のアパルトマンに帰っていった。
いつもこんな感じだ、誰と付き合ってもずっと側にいたい相手などいなかった。
だから友達以上にはなれなかったのだ。
女らしくなった・・か、だって本当の意味で女になったのだ。
玄関の鍵を開けて自分のアパルトマンの自室に入り明かりをつける。
以前はこの一人の空間が何より気楽で心地よかった。
それなのに、何処か寂しくなったのは、アンドレと別れた後から。
プロヴァンスに戻ったアンドレは、再びプチホテルのオーナーとして働いていた。
オーナーといっても小さなホテルだから忙しい。
自らフロントに立ち、接客をしたり、荷物運びをしたり、レストランの手伝いをしたりもする。
今も事務所で伝票の整理をしていた。
それも終えた後アンドレはパソコンでオスカルの事務所のホームページを開いてみた。
情けないとは思うものの、どうしているかが気になる。
するとオスカルが今月ファッションショーに出る記事が出てきた。
しかも今回のショーのチケットはインターネット販売で行うという。
これはオスカルを見たいというファンへのサービス企画だ、ファッションショーなどあまり見れない人々でも彼女を見れるチャンスだ。
相変わらずオスカルはパリの人気モデルだ、もう俺のことなど忘れてしまっただろうか。・・
そこに祖母のマロンが入ってきた。
「アンドレ、お客さんが予約してた部屋と違うって言ってるんだよ、お前ちゃんと予約時の部屋にお通ししたのかい?」
「ええっ?そんな馬鹿な!」
急いで予約を記載する書類に眼を通すと、先ほど通した部屋とは違う部屋がチェックされている。
「悪い・・俺の間違いだ、お客様に謝ってくるよ」
アンドレは急いでお客のところに行き、本当に申し訳ありませんと深々とあやまって、もしよければ一番いい部屋が空いてますのでお詫びの印にそちらに移動されてはどうでしょう?とサービスを申し出て、ことを収めた。
何とか客が満足してくれたのでアンドレはほっとして事務所に戻ってきた。
まだ事務所にいた祖母にアンドレは「何とか許してくれたよ、一番いい部屋が空いていて良かった」と告げるのだが
祖母は「お前、どうしたんだい?パリから戻ってきてから、おかしいよ、、この間だって料理の注文を間違えたり、以前はこんな失敗したことがなかったのに・・」
「パリで何かあったのかい?」
「いや、別に何日もの休暇を取ったのは初めてだから、まだ休みボケが取れないだけだよ」
アンドレもオスカルとのことを誰にも告げてはいなかった。
「それならいいんだけど・・・」
「それよりお前に話があるんだよ」
「従業員として働いてくれているシルヴィーだけど、あの子のことどう思う?」
「どうって?しっかりしてるし良く働いてくれるいい子だと思うよ」
「そうだろう!実はお前の嫁さんにいいんじゃないかと思って」
「!!」
「シルヴィーの父親はこの街で町長をやってるくらいの名士でね、その町長自らがシルヴィーとの縁談を進めてきたんだよ」
「シルヴィーと俺を?」
「さっきお前がいったようにシルヴィーは働き者だし気立てもいい、おまけに器量よしだ、実はシルヴィーもお前ならと言ってるんだよ」
「いきなりそんなこと言われても、シルヴィーをそんな風に見たことはないし」
「だから、一度シルヴィーと付き合ってみてはどうなのさ、デートすればその気になって一緒になってもいいと思うかもしれないよ」
「あたしも年なんだから、早くいい嫁さんを捕まえてあたしを安心させておくれ」
両親がなくなってからは祖母だけが身内だ、その祖母に言われると弱い、しかもシルヴィーは確かにアンドレから見てもホテルの女主人になるにふさわしい人柄なのだ。
スカウトされて始めたとはいえ、オスカルはモデルの仕事にやりがいを感じていた。
自分の写真を女性達が見て憧れを抱き感動してくれる、こんな恵まれた仕事を持っているのだ、だから精一杯素敵な自分を見せなければ。
そう思うものの、何処か以前と違い、撮影中に集中してない自分がいる。
以前はカメラのシャッター音が鳴るたびに流れるようにポーズを変えてカメラマンを満足させられたのに。
「オスカル、何ぼうっとしてるんだ、今のポーズは撮れたから、次のポーズに移ってくれ!」
「しかも表情がさえない、どうしたんだお前の得意な力強さが出ていない」
今もカメラマンのアランから怒鳴られてしまった。
「ああ、すまない、悪かった」
オスカルはすぐに気を取り直して表情を引き締めポーズを決めてみせる。
いけない仕事中なのだからほかの事を考えていてはいけないんだ。
私はプロのモデルなのだから。
時間はかかったが、アランの希望通りの写真が撮れ、撮影を終えることができた。
オスカルはほっとしながら帰り支度をしていた。
「オスカル、どうした?めずらしいなお前が撮影中にぼうっとするなんて」
アランが声をかけてきた。
「悪かった、少し休暇を取って休んだから休みボケかもしれない」
「ああ、そういえばお前初めて自分から休暇を取ったんだってな、無理も無いか、モデルとして人気が出てから休みなしで働いてたんだから」
「どうだ!仕事復帰祝いに飲みに行かないか?」
「復帰祝い?おおげさだな、たった一週間だけだぞ」しかも一日はショーのモデルをやったんだし・・でもあれを見てアンドレは最高に素敵だと褒めてくれたんだ。
「理由はどうでもいいさ、どうせ帰っても誰も待っていないもの同士だ、仲良く飲みに行こう!」
アランに強引に誘われてオスカルは飲みに行くことになった。
アランはかなり酒を飲むほうですぐにグラスを殻に開けて何杯もお代わりをした。
オスカルも飲むのは好きだからいい酒飲み友達なのだが、以前アランに付き合わないかといわれたときお前とではその気にならない、と冗談だと思って断ってしまったものだ。
しかし、アランはその後もこのように誘いをかけてくる。
「オスカル、お前休暇は、どんな風に過ごしたんだ?」
「まさか恋人が出来て一緒に過ごすためだったとか?」アランはきになるようでオスカルの休暇中の話を聞いてきた。
オスカルはアンドレとの一夜を思い出すと恋人と休暇を過ごしたといえなくも無いなと考えてしまった。
黙り込んでしまったオスカルが気になりアランは再び質問した。
「本当にそうなのか?今まで誰も付き合おうとしなかったお前が?」
「いや、恋人が出来たわけじゃない、ちょっと友達と遊びまわっただけだ」アンドレとのことは自分だけの思い出だ、だからいう気にはなれなかった。
アランはそれを聞いてほっとした顔をした、オスカルはアランは本気で自分のことを思ってくれたのかな?いつも冗談ともとれるような言い方だからあまり本気に捕らえてなかったが。
でも彼とは男女の仲ではなく良い友人でいたい。
それ以降は最近の撮影でこんなことがあったとか、これからはどんな写真を撮りたいとか仕事に関する話で盛り上がった。
アランとは職場仲間のようなものだから、もちろん話が合う、だって共通の話題があるのだから。
でもアンドレとは仕事の共通点など何も無い、なのにずっと楽しく過ごせていた、むしろアランとこうして過ごしているよりも自然にふるまえたのだ。
しかもアランのような仲間としてではなく、もっと近い存在に思えた。
「アラン、お前たとえば突然であった女性としばらく一緒に暮らすとしたら、どんな風に過ごす?」
「一人暮らしのプライベートな空間に突然であった女性と、お前なら退屈もせずに楽しく過ごせるか?」
「いきなりな質問だな・・だが、そうだな俺のアパルトマンに女性がか・・・それが好みな女性なら酒でも飲んで口説いて落とすかな?」
「そんなのしか頭に浮かばんぞ、大体知り合って間もない異性とでは、共通の話題がないからあまり長い時間は持たないだろうな」
そうなんだ、それなのに何故彼とはあんなに長い時間一緒にすごしていてもイヤにならなかったんだ。
むしろ別れるのが辛くて今でもこんなに思い出される。
オスカルはこのままアランと飲み続ける気にもなれなくなってきた。
「アラン、悪いがもう帰るよ」
「もう帰るのか?」
「ああ、明日も仕事があるので早く寝ようと思う」
オスカルが席をたって帰ろうとしたときアランが声をかけた。
「オスカル・・お前変わったな・・」
「変わった?」
「ああ、少し女らしくなったぞ」
「それはどうも、男っぽいといわれる私には最大の賛辞だ」
「じゃあな」
オスカルはそういってアランに別れを告げて自分のアパルトマンに帰っていった。
いつもこんな感じだ、誰と付き合ってもずっと側にいたい相手などいなかった。
だから友達以上にはなれなかったのだ。
女らしくなった・・か、だって本当の意味で女になったのだ。
玄関の鍵を開けて自分のアパルトマンの自室に入り明かりをつける。
以前はこの一人の空間が何より気楽で心地よかった。
それなのに、何処か寂しくなったのは、アンドレと別れた後から。
プロヴァンスに戻ったアンドレは、再びプチホテルのオーナーとして働いていた。
オーナーといっても小さなホテルだから忙しい。
自らフロントに立ち、接客をしたり、荷物運びをしたり、レストランの手伝いをしたりもする。
今も事務所で伝票の整理をしていた。
それも終えた後アンドレはパソコンでオスカルの事務所のホームページを開いてみた。
情けないとは思うものの、どうしているかが気になる。
するとオスカルが今月ファッションショーに出る記事が出てきた。
しかも今回のショーのチケットはインターネット販売で行うという。
これはオスカルを見たいというファンへのサービス企画だ、ファッションショーなどあまり見れない人々でも彼女を見れるチャンスだ。
相変わらずオスカルはパリの人気モデルだ、もう俺のことなど忘れてしまっただろうか。・・
そこに祖母のマロンが入ってきた。
「アンドレ、お客さんが予約してた部屋と違うって言ってるんだよ、お前ちゃんと予約時の部屋にお通ししたのかい?」
「ええっ?そんな馬鹿な!」
急いで予約を記載する書類に眼を通すと、先ほど通した部屋とは違う部屋がチェックされている。
「悪い・・俺の間違いだ、お客様に謝ってくるよ」
アンドレは急いでお客のところに行き、本当に申し訳ありませんと深々とあやまって、もしよければ一番いい部屋が空いてますのでお詫びの印にそちらに移動されてはどうでしょう?とサービスを申し出て、ことを収めた。
何とか客が満足してくれたのでアンドレはほっとして事務所に戻ってきた。
まだ事務所にいた祖母にアンドレは「何とか許してくれたよ、一番いい部屋が空いていて良かった」と告げるのだが
祖母は「お前、どうしたんだい?パリから戻ってきてから、おかしいよ、、この間だって料理の注文を間違えたり、以前はこんな失敗したことがなかったのに・・」
「パリで何かあったのかい?」
「いや、別に何日もの休暇を取ったのは初めてだから、まだ休みボケが取れないだけだよ」
アンドレもオスカルとのことを誰にも告げてはいなかった。
「それならいいんだけど・・・」
「それよりお前に話があるんだよ」
「従業員として働いてくれているシルヴィーだけど、あの子のことどう思う?」
「どうって?しっかりしてるし良く働いてくれるいい子だと思うよ」
「そうだろう!実はお前の嫁さんにいいんじゃないかと思って」
「!!」
「シルヴィーの父親はこの街で町長をやってるくらいの名士でね、その町長自らがシルヴィーとの縁談を進めてきたんだよ」
「シルヴィーと俺を?」
「さっきお前がいったようにシルヴィーは働き者だし気立てもいい、おまけに器量よしだ、実はシルヴィーもお前ならと言ってるんだよ」
「いきなりそんなこと言われても、シルヴィーをそんな風に見たことはないし」
「だから、一度シルヴィーと付き合ってみてはどうなのさ、デートすればその気になって一緒になってもいいと思うかもしれないよ」
「あたしも年なんだから、早くいい嫁さんを捕まえてあたしを安心させておくれ」
両親がなくなってからは祖母だけが身内だ、その祖母に言われると弱い、しかもシルヴィーは確かにアンドレから見てもホテルの女主人になるにふさわしい人柄なのだ。
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