再会の物語⑫
弁護士はロベスピエールと名乗り、彼は先日亡くなった名士アルフォンス・ジュベル氏の顧問弁護士だった。
ロベスピエールは重要な話があるので、ぜひ森にあるジュベルの屋敷までおいでください、と俺に告げた。
ジュベル家といえば、若くして亡くなった遠縁のセーラの嫁ぎ先だ。
俺はセーラの結婚式と葬式に顔を出したくらいの間柄なのに、何故?
いよいよこの日が来たのだ。
本物の彼に会える。
私はどれだけこの日を待っただろう、オスカルとアンドレの冒険を読みながら、本物の彼とはどのような男性だろうと何度想像をめぐらせたことか。
ばあやが言うには先ほど彼が屋敷に訪れたらしい。
マクシミリアンがいうには、最初彼が一人でアンドレに後見人の話をするという、そして話が終わった後に私と彼が会えるよう取り計らってくれるというのだ。
果たして彼は承知してくれるだろうか?・・・
マクシミリアンは彼が私の後見人となるのを反対していた。
アンドレをちゃんと説得してくれるのだろうか?
私はいてもたってもいられずに自分の部屋から出て、マクシミリアンと彼がいる客間へと向かった。
すると部屋の中からマクシミリアンと彼らしき人の声が聞こえたのだ。
マクシミリアンが彼を説得していた「アンドレ、貴方は小学生向きの童話作家でしたよね、フランシスは貴方の作品の大ファンでして、貴方以外はいやだと申されています」
彼が答える声が聞こえた。
「待ってください!俺は独身だし、男の俺に10歳の子供との暮らしは無理です!しかもジュベル氏とは2回あっただけの関係で!」
やはり彼は後見人を断るのだろうか?
私は黙っていられなくなり、そのまま部屋の中に入っていった。
「それは大丈夫だ、私は自分のことは自分で出来る、ばあやもいてくれるしな」
考えるより先に行動していた。
「君は?」
アンドレは突然現れた私に驚き、急いでマクシミリアンが私を彼に紹介してくれた。
「ああ、こちらが今のお話の本人であるフランシス・ジュベルです」
この子が・・フランシス・・
アンドレ!
初めて目の前で見る彼、黒い髪に黒い瞳、やさしげな面立ち、写真で見たとおりの彼がそこにいた。
初めて会った彼だが私は探していた人ににようやく会えたような懐かしい感情で胸が打ち震えた。
その後もマクシミリアンは私の後見人になる説得を試みてくれた。
だが、彼の様子を見れば、悩んでいるのがわかる。
私は、思わず口を挟んでしまった。
「私との生活は不満か?何故だ?」
「フランシス殿、アンドレにも都合というものがあるのですよ、」
「そうか、では仕方ない、しかしアンドレここはすぐに気に入るぞ、わたしが屋敷を案内してやる」
私はどれだけ彼を望んでいるのか知ってほしくなり彼の手を取り、屋敷を見せて回ることにした。
彼はいきなりの私の行動に驚いたが、それでも私の手を離すことなく戸惑いながらもついてきてくれた。
俺はフランシスの美しさに思わず眼を奪われてしまった。
これまで俺は女性に心を奪われたことが無い
それはたぶん両親の血を濃く引き継いだためだ。
生涯に一人しか愛せない、だから愛する人は一人だけ
その人はもうこの世にいない人だった。
だからどんな女性が現れても感じることが無かった、なのに何故かこの子を見たとき初めて心が動いた。
彼の手は大きくて暖かかった。
私はこれまで与えられた人生をただ受け入れるだけの人生だった
願ったところでいつも叶わないから
そんな私が どうか彼が私のもとに来てくれますように、と初めて願う
彼の黒い瞳を見たとき私の人生は今始まったのだとわかった
私はこの手を待っていたのだと、お前にわかってほしい!
私は私のアンドレを見つけた!
俺はフランシスと繋いだ手を見つめた。
夕暮れの森の中俺はオスカルと手をつないで歩いた。
幼い俺はこんな風にオスカルの手をしっかりと握っていたんだ。
決して離れぬように、いつまでも二人でいられますようにと願いながら。・・・
これは、夢の続き・・・?
アンドレ・・・やっと・・・会えた・・・
The End
