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うさぎ

リトルレディの恋⑤

オスカルはアンドレが足の怪我で動けなくなってから毎夜、アンドレに本を読んで聞かせるようになった。

アンドレはベッドに横になってばかりで夜眠れないだろうから眠れるよう本を読んでやるとオスカルが言い出したのだ。

アンドレとしては大人の自分が子供のオスカルに本を読んでもらうなど妙な気分だが、オスカルは張り切っているし。

それに自分の本を改めてじっくり読んで聞かせてもらうと良いところも悪いところもわかるものだといわれてしまい、それも一理あるなと考え、なんとなく同意してしまったのだ。

オスカルはアンドレが横になっているベッドの傍にいすを置いて「オスカルとアンドレの冒険」シリーズを読んでいく。


いつものようにオスカルとアンドレは黒い騎士を捕まえようと貴族の館のパーティー会場に出向いていった。

黒い騎士が狙うのは貴族の奥方や令嬢がつけているイヤリングやネックレスなどの豪華な装飾品だ。

夜会がはじまりオスカルとアンドレはいつ黒い騎士が出てきてもいいように緊張して待っていた。

だが、黒い騎士は内部のものと通じていてパーティー会場は一時暗闇に包まれ、その隙に次々と宝石を盗み馬に飛び乗り逃げていった。

オスカルとアンドレも馬に乗って追いかけるのだが、黒い騎士の馬は素晴らしく速い馬でとても二人が追いつけるようなスピードではなかった。

「馬の差で盗賊を捕まえられないなど武官の恥だ」

オスカルは激しく落ち込んだ。

落ち込んだオスカルを見るに見かねたアンドレはある提案をした。

「オスカル、世間のうわさで聞いたのだがはるか向こうの高原に素晴らしく早く走る野生の馬がいるらしい、その馬を捕らえて飼いならせば黒い騎士を捕まえる足になるかもしれないぞ」

それを聴いたオスカルは馬を捕らえるためにアンドレとともに旅に出る。


この物語は二人が旅に出て馬を捕らえるまでを描いている。

野生の馬を捕らえるのだから外でずっと見張っている必要がある、だから外で食事して外で眠る。

はじめはなかなか火を起こせずに苦労したり、夜の寒さに二人は凍えそうになり抱き合って眠ったり苦労の連続だ。

野生の馬を手に入れるのは困難をきわまり何度も失敗を繰り返す、しかし苦労をともにした二人はさらに絆を深めて最後には協力して馬を手に入れる。

そして最後の夜は満点の星空を二人で眺める、私たちはずっと一緒だぞ、何があっても二人は離れることはないと誓い合う。

最初の旅の目的は足の速い野生の馬を手に入れることだったが結果的に二人の友情を深める旅になった。


これはオスカルが好きな話だ。

オスカルとアンドレが二人きりで旅をする、それも外で食事して外で眠り過ごす風景が楽しそうに感じられて仕方ない。

喘息もちのオスカルにとって外でずっと過ごすなど夢でしか無い、それでもアンドレと二人でこんな旅が出来ればと考えてしまうのだ。

本が読み終わり、オスカルはアンドレに声をかけた。

「アンドレ、どうだ!自分の作品は?」

しかし、返答が無い・・・

オスカルはアンドレの顔を覗き込むように見ると、彼はすやすやと眠っていたのだ。

「私がせっかく熱をこめて読んでやったのに・・・失礼なやつだな」

オスカルは不機嫌になったが、アンドレの眠る顔を見ていると自分の音読がアンドレの安らかな眠りを誘ったのだとも思える

そう考えるといつも自分を寝かしつけてくれるアンドレを今日は自分が寝かしつけたのだから、ちょっといい気分だ。

寝ているのを邪魔せぬように今日は私も退散するか。

「ではお休み・・・また明日な」

オスカルはアンドレにお休みをいって自分の部屋に戻ろうとした・・・だがその時。・・・

「オスカル・・・」

アンドレがうわごとを言い出した。

自分が呼ばれたのでオスカルは急いでベッドに引き返した。

「アンドレどうした?」

「オスカル・・・・」

「アンドレ、私はここにいるぞ?どうしたというのだ?」

アンドレは夢を見ていた。

それも過去に何度も見た夢


輝く金髪の髪をなびかせて

その人は何度も俺に会いに来た。

学校の帰り道であったり一人ぼっちで寂しいとき彼女は必ず俺に会いに来た。

誰よりも美しくやさしくて俺を愛してくれた人

会うたびに彼女に魅せられ惹かれていく気持ちが抑えられなかった

いつか出会えると信じていたのにオスカル君はもうこの世にいない人だった

夢の最後に、アンドレ・・愛している、とつぶやく

いかないでくれ・・・

オスカル、君は夢の中でだけ会える人


「アンドレ!」


俺を呼ぶ声が聞こえる?

誰だろう?

オスカル貴方なのか?

暖かい・・この手は・・・オスカル?



アンドレは目を覚ました。

「アンドレ、気がついたか?」

心配そうなオスカルの顔が目の前にあった。


「オスカル!」

「大丈夫か、うなされていたぞ」

「ああ・・大丈夫だ・・時々うなされる癖があるんだ」

「本を読み終わってお前が眠ってしまったから部屋に戻ろうとしたらお前がうなされて私を呼んでいた」

そうか、俺はまたオスカルの夢を見て彼女の名前を呼んだんだ・・

アンドレはオスカルの手が自分の手を握っているのに気がついた。

「オスカル・・・お前だったのか・・・あの手は・・・」

オスカルもアンドレにいわれて気がついた。

「あ、ああ、お前を落ち着かせようと手を握っていたんだった」

「そうか、お前が目覚めさせてくれたんだな」

いつもの夢だ、醒めるのがつらくなる夢

オスカルは思いついたように、そうだ、と口にして

そしてごそごそとアンドレのベッドに入っていく。

「オスカル何してるんだ?」

「見てわかるだろう!今夜は私がお前のベッドで一緒に眠ってやるよ、いつもと反対だ」

「何で一緒に寝るんだ?」

アンドレはいきなりのオスカルの行動に驚きを隠せない

「だってお前は私に助けを求めてきたのだぞ、私が守ってやらねばどうする」

どうやらアンドレが悪夢にうなされて自分に助けを求めていたのだと誤解したらしい

「いいよ、もう醒めたから!」

しかしオスカルは張り切っていた。

「お前がまたうなされても私が傍にいて悪夢から目覚めさせてやる」


オスカルは自分が夢の中でもアンドレに必要とされたことがよほどうれしいようだ。

アンドレの手をしっかり握ったまま「おやすみ」といってそして自分も横になり眼をつぶった。

アンドレにはオスカルの行動は戸惑うばかりであったが、いつもの夢の後の哀しさがオスカルがいてくれたことで消えてしまった気がする。

オスカルはすぐに眠ってしまったようだ。

すやすやと寝息を立てて幸せそうに眠る、きっと良い夢を見ているのだろう、幸せそうな寝顔だ。

アンドレはしっかりと握られた手を改めてみた。

確かにあの人を夢で見た夜は一人寝は寂しく感じる・・・今日はオスカルの好意に甘えておくとするか。

オスカルの顔を見つめ「お休み」を言って額にキスをした。

そしてアンドレも眼をつぶってもう一度寝ることにした。

あの人の夢を見た夜はなかなか寝付けないが今夜はどうだろう?

オスカルが横にいて悪夢から自分を守ろうとする気持ちが伝わったのか、次第に眠気が襲ってきた。

アンドレは眠りにつき、そして再び夢を見た。

しかし、今度の夢に登場したのは隣に眠るオスカルだった。

俺とオスカルは緑の高原を馬に乗って旅をしている。

暖かい日差しの中俺たちは風に吹かれるように気ままに旅を楽しんでいた。

二人で海を眺めたり、山の景色を堪能したり、いろんな街を探索したり、夜には焚き火をたいて夕食を作り、語ってた。

「アンドレ!見てみろ、すごいぞ!」オスカルは新しい発見をするたびに興奮しながら俺に知らせてくる

海の青さとか、山の高さとか、街にはいろんな人がいっぱい住んでいるとか

そうだな、お前はこのジュベルの森からほとんど出たことがないのだから

何を見ても感動はひとしおだろう・・・

いつかお前にいろんな景色を本当に見せてやりたいな

お前の喜ぶ顔はまさに天使の笑顔そのものだ、その顔を見るためなら俺は何でもするよ


俺はその夜わかったことがある

あの人と結ばれる運命をくださらなかったが、そのかわり神は俺に一人の少女をお与えになったのだ。

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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 4

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2016/10/22 (Sat) 16:36

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2016/10/23 (Sun) 08:29

うさぎ

Re: やっぱり女の子の本能かな?

MI様やはり女の子が男性のベッドに入り込む光景は大胆でしょうか(笑)

自分の読み聞かせで眠ってくれたアンドレに母性本能を感じるかあ、なるほど、そういえば母親が子供に対するシーンのようですもんね。

アンドレの寝顔直接見られるんなら、行列が並びそう(笑)

オスカルちゃん、夢で自分の名前を呼ばれたのがよほどうれしかったのでしょうか、それともそれを理由にただ一緒に寝たかったのか、まあ、両方でしょうね。

でも、そのおかげでアンドレの次の夢には本当にオスカルちゃんが登場してオスカルちゃんの望みの夢を見ます。

もうどれだけ心が結ばれてるんだってことです。

2016/10/23 (Sun) 14:48

うさぎ

Re: No title

N様、アンドレはまだ異世界のオスカル様を忘れたわけではないのです。

オスカルちゃんに愛情を持っているけれど、オスカルちゃんはまだ10歳の子供だから、性の対象として見られないです。

でも、反対に10歳の子が大人に恋することはありえます、だからその辺がオスカルちゃんのつらいところ。

ただ、どんどんと存在が大きくなっていく過程ではありますね。

本人もがんばってるし、N様のいうとおり、アンドレの影響で少しずつ大人になっていくオスカルちゃんです。

2016/10/23 (Sun) 14:55