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うさぎ

リトルレディの後見人⑩

アンドレはオスカルの風邪が良くなってきたと判断して、オスカルが薬を飲んで眠った後は自室で作品を書くようにした。

少し書いては考え込む、書いたものを読み直してまた考えては続きを書いていく。

果たして出来上がるのかと不安になる細かい作業だが、これを続けていくと不思議にそのうち終わりが見えてくる。

そしてとうとう完成させたその時が究極の喜びを感じれる瞬間だ。

以前アパルトマンに一人住んでいたときは、自分ひとりで喜びを感じていたものだが。

このジュベルの屋敷に住み始めてからはその喜びをともに味わう仲間ができてしまった。

そんなことを考えるとアンドレはふと笑ってしまった。

「オスカル、もうすぐ作品ができそうなんだ」と伝えてやると

あの蒼い瞳をキラキラさせながらこう答える。「そうか、それは楽しみだ!早く出来上がったのを読んでみたい!」

オスカルは、俺の作品の一番のファンだから、物語の完成を誰より願い、喜んでくれる。

以前は単に自分の書いたものが形になるのがうれしかっただけだが、今ではあの天使の笑顔が作品作りの喜びに加わってしまった。


そのとき、ドアをノックする音が聞こえた。

誰だろう?

そしてすぐに声が聞こえた。

「アンドレ、私よ、ベルナデットよ、お仕事中ごめんなさい大事な話があるの」

話?

「わかった、すぐに開けるよ」

アンドレは立ち上がり部屋のドアを開けた。

ベルナデットはやや緊張気味に立ちすくんでいた。

「良ければ部屋の中で話をしないか?本ばかりで君のような令嬢には不似合いな地味な部屋だが」

中に入る様子のないベルナデットを気遣いアンドレが部屋の中に入るよう誘った

それを聞いてベルナデットは緊張しながらも部屋の中に入った。

「では、お邪魔するわ、でも令嬢といえばオスカルなんて毎日のように貴方の部屋に来ると聞いたわよ」

「ああ、勝手に入ってきて勝手にそこのソファーに座り込んで、もう作品はできたのか、とえらそうに編集者気取りだ」

「とても令嬢とは思えない態度だ」

アンドレの話にベルナデットは笑ってしまい、緊張は解けた様子だった。

アンドレに進められるとおり、ソファーに座り、ベルナデットは話をはじめた。

「実はね、アンドレ、貴方の後見人問題なんだけど・・・」

「先日話し合いがあって、私の父をはじめ、レイモンド叔父様もほとんどの方は貴方がオスカルの後見人と認めてもいいと言い出したの」

「それは・・・本当なのかい!ベルナデット!」

アンドレは思っても見なかった明るい展開に喜びを隠せなかった。

「ここ数日で貴方がいかにオスカルのことを思い、愛情を注いでいるかが親戚たちにも通じたのね」

「それに関してはおばあ様も同じ意見で、もう貴方を財産目当てなどとは疑ってはいないわ」

「そうか・・・それは良かった、これでようやく俺は認めてもらえたのだろうか?」

これでオスカルを安心させてやれるアンドレはその思いで一杯になった。


ベルナデットは一息置いてそして決意するように話の続きを語り始めた。

「でも・・・おばあ様やお母様がひとつ気になる点がある、と言い出したの」

「気になること?」

「そう、貴方とオスカルがとても上手くいってるのは誰が見ても理解できる」

「ただ・・・おばあ様は貴方たちは惹かれあいすぎている、まるで恋人同士に見えるとおっしゃるのよ」

「何だって?・・」

アンドレはあまりに意外なベルナデットの言葉にショックを受けた。

まさか、そんな目で自分たちが見られるなんて・・・

「もちろん私はそんなことあるはずがないと信じているわ、だけど・・・オスカルはあのとおり、美形の子だし、いささか大人の雰囲気も備わってる」

「先日のパーティーで貴方も感じたでしょう、あの子はどこにいても注目を集めて見られてしまうの、それはあの中性的な魅力も大人たちを惹きつけてしまう」

「あんな子供にって思うでしょうけど、オスカルの祖父アルフォンス・ジュベル氏が元気でパーティーが開かれてたときオスカル目当ての客も少なくはなかったのよ」

ベルナデットの言葉は真実だ、確かにオスカルは注目を集めるほどの容姿、そしてこのような存在が上流階級の連中に好まれるのは十分ありうること。

オスカルがパーティーを好んでいなかったのはそういう理由だったのか・・・

あのプライドの高いオスカルがそのように見られるなど、どれだけ嫌悪感を感じていたことか、気がついてやれなかった自分に腹が立つ。

もっと傍にいて見守るべきだった。・・・

「だからおばあ様が心配するのも無理はない話しなのよ」

「だから提案があるの」

「アンドレ、貴方、私と正式にお付き合いしてみない?」

いきなりのベルナデットの提案にアンドレは一瞬言葉を失った。

「驚くのも無理はないけれど、私は真剣よ」

「ベルナデット、どういうことなんだ?」

「貴方がオスカルの後見人でいたいのなら、オスカルを恋人のように思っていないと証明することが必要よ」

「そのためには、他に好きな人がいるというのが一番よ、それに私がお相手と知ればおばあ様も貴方を認めざるを得ないわ」

「それはそうかもしれないが・・・」

確かにベルナデットと自分が付き合いたいと申し出れば、その場でオスカルとの誤解は解消され、しかも可愛い孫の付き合っている男性だ、後見人として認めざるをえない。

だが・・・

「君の提案はありがたいけど俺は今誰とも付き合う気がないんだ」

「それは聞いて知ってるわ、だけどこの際付き合っているふりでもいいのよ、おばあ様を納得させるためよ」

アンドレはわからなかったなぜベルナデットが自分と嘘の付き合いまでしてくれようとするのか。

「君はなぜそこまでして俺に加担してくれるんだ?」

「それは・・・たぶん貴方に惹かれているから・・」

「まさか!そんな!」

「どうして驚くの?おかしなことではないでしょう、貴方を素敵だと思うのは」

「だって君には大勢の取り巻きがいる、それが何で俺なんかを?」

アンドレの言葉に今度はベルナデットが驚いた、彼は、不思議な人、だって彼は十分素敵なのに。

「貴方は自分の魅力に気がついていないのね、貴方は見た目だけでも十分素敵よ」

「それは、どうも・・」アンドレは半信半疑で答えた。

「からかっているんではないわ、でもそれだけが理由ではないのよ」

「パーティーの席でも言ったように私の取り巻きは働きもしないお坊ちゃんばかりだわ、その点貴方は自分の夢である職業に自分自身の力でついている」

「それだけでも私の周りの男性よりも魅力的に見えた、だけど本当に素敵だと思ったのはオスカルへの愛情の深さよ」

「オスカルの後見人になる願いを聞き届けて、その上で両親のいないオスカルに無心の愛を注ぐその姿に私は感動したの、貴方みたいな人はじめてよ」

「貴方のオスカルを見つめるやさしい眼を見ているとうらやましいとさえ思ったわ」

「貴方のような人は簡単に女性と付き合うとは思えない、けれどオスカルのためと考えればそれも出来るはず」

「オスカルの後見人として認められるためでもいいの、少しでも私のことを考えてみてほしい」

アンドレは考えてしまった、オスカルのためとはいえ、ベルナデットを利用するなんて、したくはない。

だけど、オスカルと自分との仲をそのように見られているのを払拭するのは、彼女の案に乗るのが一番だ。


ベルナデットはアンドレが悩んでるのを見て取り、今すぐ答えが出ないのがわかった。

「返事は今でなくともいいの、でも後見人の話はいずれあるでしょうから急いだほうがいい」

「私はオスカルの後見人として貴方を残らせたいとも思っているのよ」

「わかった・・・ありがとうベルナデット君の好意には感謝するよ」

そしてベルナデットはアンドレの部屋を出て行った。

一人になりアンドレは再びいすに座りなおし深いため息を吐いた。

オスカルと俺の仲が疑われるなんて・・・俺はただオスカルを誰よりも大事にして幸せにしてやりたくて、あの子の笑顔が見られるなら、何でもしてやりたい。

そう思ってるだけだ。・・・

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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 5

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2016/11/13 (Sun) 02:28

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2016/11/13 (Sun) 11:53

うさぎ

No title

T様アンドレとしては実に苦しい状況です。

リトルオスカルとあまりにも仲が良くて男女の愛だと疑われると、後見人にはふさわしくないと見られる。

そこへいくとベルナデットなら年相応の相手だし、可愛い孫の彼氏なら大事にするだろう、という計算です。

しかもあまり時間がない、そのせいで追い詰められました。

しかしT様のいうとおり、問題はリトルオスカルです。

嵐の前触れ、かな?

イライラするでしょうが、続けて見てください。

2016/11/13 (Sun) 12:14

うさぎ

Re: うーん…

MI様気になる展開になってきました。

そうなんです、問題はオスカルちゃんで、アンドレが他の女性と付き合うのを前回のお話で気にしていたくらいですから。

ショックは相当なものと思われます。

もしも説明があったとしても、う~ん、やっぱり嫌だろうなあ。

2016/11/13 (Sun) 12:21

うさぎ

Re: No title

N様アンドレ、本や小説に埋もれて生きてきたので、色恋沙汰から遠ざかってました。

だから周りから自分がどう見られるなんて考えてなかったんですね、もったいないことです。

交換条件かあ、そうですね、アンドレに付き合わないと後見人をおろされるって言われれば気持ちはぐらつくし。

疑いを解くには、オスカルちゃん以外の大人の女性に好きな人がいるってのが一番だし。

そうです、一番の問題は当の本人のオスカルちゃんの気持ちなんです。

2016/11/13 (Sun) 12:31