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うさぎ

愛しの婚約者殿②

やがてルシェル村についた。

村は御車が言ったとおりあちらこちらにぶどう園や花農家を見かけた。

馬車が進むたびにぶどうと花の良い香りがした。

ぶどう園が見えたかと思えば、次はバラ園が見えてくる、景色の良い村だ。

涼しい風に吹かれながら穏やかな景色を眺めていると、気持ちが晴れていくようだ。

街の暮らしでは味わえない景色だな・・・


その時突然一軒の屋敷前で馬車は止まった。

「お客様、ここがグランディエ様のお屋敷ですよ」

「わかった、ご苦労だったな」

オスカルは屋敷前につくと御車に別れを告げて、屋敷の玄関前に立ち、呼び鈴を鳴らした。

すると、出てきたのは一人のかわいらしいまだ少女といっても可笑しくない女性、ここの屋敷のメイドだろうか?

「はい、どなた様でしょうか?」

えっとどういえばいいのだろうか?

「実は・・・」

求婚の申し込みを断りに来たなどと玄関で言うべきことではないだろうし、言うのなら当人に伝えるべきだろう・・

「私は、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェと申します、ご当主は在宅だろうか?」

「オスカル様?・・・では!貴方様がアンドレの婚約者のオスカル様なのですか?」

オスカルは驚いてしまった。

何ともう婚約者として知れ渡っているのか?

「まあ、どうしましょう、そちらからお尋ねくださるとは!光栄ですわ、伯爵令嬢自らいらしていただけるなんて、アンドレも喜びます!」

「あの、私は婚約者では・・」

相手は興奮しているらしく、オスカルの言葉も耳に入っていない状態だった。

「先日、ジャルジェ伯爵から、結婚の申し込みを受けてくださると手紙が着いてから、我が家では皆歓喜していました、だって伯爵令嬢を我が家に迎えれるなんてまるで夢のようですもの」

「あの娘さん」

「ロザリーとお呼びください、オスカル様、私はアンドレの妹ですわ」

このまだあどけない娘さんは、求婚者の妹!

それにしても父上は私に結婚の話をする前に了承の返事を送ったのだな。

その上で私に結婚の話をするなど何と横暴な!

オスカルは父のあまりの手際のよさに腹を立てた。

「どうぞ、お入りください、貴族のお屋敷に比べると粗末な屋敷で、お恥ずかしいですが」

「いえ、そんなことは・・ではお言葉に甘えて失礼します」

屋敷の中はロザリーが言うようにオスカルの住む館よりも質素だ、しかし平民の住まいとしてはかなり広いし、良いつくりの屋敷であった。

「アンドレは今日は隣村まで商談に行っていますから夜まで帰らないんです、残念だわ婚約者がわざわざ来てくださったと言うのに」


求婚者殿は留守か・・・夜まで待つしかないのか・・・

「ロザリー、誰かお客様がいらしたのかい?」

声のするほうを見ると、一人の老婆が階段からおりながら声をかけてきた。

それも手すりを持って危なっかしい歩き方で。

「おばあ様、一人で危ないわ」

ロザリーが声をかけたと同時にオスカルは急いで進み出て階段のマダムに手を差し伸べ降りるのを助けた。

「大丈夫ですか?マダム私に寄りかかりください」

「これは、ご親切にありがとうございます」

「このままお部屋までお連れしましょう」

「ロザリーこちらの方はどちら様かしら?」

立派な服装だし、品のある顔立ち、まさに身分の高い方のよう?

マダムはこの見知らぬ親切な訪問者が誰なのか気になって仕方ない。

「こちらはアンドレの婚約者のオスカル様よ」

「オスカル様って!まさか?」

マダムは目を丸くしながら答えた。

「この方がオスカル様、でもオスカル様は女性では?」

オスカルはいつも男装だからマダムが驚くのは無理も無い

オスカルも男と間違われるのはもう慣れっこだ。

「このなりですから間違えるのは無理はありません、だが私は正真正銘の女なのですよ」

「それは・・失礼しました、そうですか貴方がオスカル様」

マダムは驚きながらもあらためてオスカルの顔を見つめて、男性にも見えるけれど、女性と言われればそう見える、しかも彫刻のように美しいこと

この方がアンドレの・・・

マダムは何だかうれしくなってきた。

このようにまで美しい人が孫の嫁になるなんて、しかも感じも良くて親切な女性だ、こんな方が孫の嫁になってくれるなんて!

マダムは笑顔で話かけてきた。

「私はアンドレの祖母のマロン・グラッセです、オスカル様よろしくお願いしたします、そしてこちらがアンドレの妹のロザリー」

「よろしくお願いします、オスカル様」

「こちらこそよろしく」

「玄関で立ち話など失礼ですから、どうぞ中にお入りください」

マダムに促されてオスカルは客間に通された。

とてもやさしそうなご婦人だ、ロザリーも可愛らしい女性だし、アンドレは家族に恵まれているのだな。

「アンドレはまだ戻ってきませんが、ゆっくりなすってください」

「どうかおかまいなく」

お茶とお菓子を出されたが、それ以外にもお腹はすいていませんか?お食事をお持ちいたしましょうか?ワインもございます、疲れたでしょうからお部屋でお休みになりますか?など二人に気を使われた。

何とも好意的な二人だ、オスカルはますます話を切り出しにくくなってきた。

仕方ない、アンドレとやらが戻ってきて二人きりになってから話をつけるか。


しかし、その後どれだけオスカルとアンドレとの結婚を喜んでいるかマロンから聞かされることになった。

「まさか、私の孫が貴族の伯爵令嬢をいただけるなんて夢にも思っていませんでした」

「私の若い頃では貴族の令嬢との結婚などありえなかったこと・・これで亡くなった夫も浮かばれます」

マロンの話では亡くなったご主人は貴族と縁続きになるのが念願だったという。

若い頃から実業家を志してその才能を発揮して財を得たが、いつも足を引っ張るのは貴族と平民との身分の違いだったという。

どんなに資産家になろうが、ただの平民は上流階級の人間として認められない

両親が早く亡くなり二人きりの兄妹のアンドレとロザリーには幸せになってほしい

そんな思いでアンドレには貴族の令嬢との結婚を勧めていたという。

しかしオスカルはこう思った。

やはりアンドレは私自身を見初めたわけではなくて、貴族の身分が目当てで結婚を申し込んできたのだ。

それなら断っても差し支えないだろう、だって貴族の令嬢など私でなくとも良いのだから。

そんなことを考えながら話を聞いていた。


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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 4

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2016/12/07 (Wed) 18:24

うさぎ

Re: ♪嬉しいです♪

MI様私が勝手にやったことなので気にしないでくださいね。

いつもありがとうございます。

今回のオスカル様確かに元気がありあまってる方ですから、一体どうなっていくのでしょう?

果たしてアンドレはこんなオスカル様の心を射止めることが出来るのか?

せっかくだからアンドレ登場まで話を進めます。

断るつもりで意気揚々とやってきたオスカル様ですが、ロザリーとマロンさんに気に入られ、ますます断りずらくなり、おまけにアンドレは思っていたよりカッコいいじゃないか、の展開です。

その後はもう少しお待ちくださいね(汗)

2016/12/08 (Thu) 17:19

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2016/12/09 (Fri) 09:11

うさぎ

Re: No title

N様2話目はまだアンドレ登場しませんです。

かわりにロザリーとマロンさんのみです。(しかもロザリーは妹)

この人たちがいれば、歓迎されるのは当然。

ジャルジェパパは原作と同じく勝手に話を進めています。

2016/12/09 (Fri) 17:03