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うさぎ

愛しの婚約者殿⑦

アンドレの本心を聞いて少し心が揺らいだ。

私自身に魅力を感じてくれたと言う彼、しかも彼は素敵だ。

かといって、結婚する気になった訳ではないが・・・


しかし、今日は何をしてすごそう?

ここでは時間がゆっくりと過ぎていく。

さっきまでおばあ様と話していたが、今はお部屋で休んでいらっしゃるし、ロザリーは庭の畑仕事をすると言う。

アンドレは仕事の商談があって出かけている。

何か私に出来ることはないか聞いてみたが

「オスカル様はゆっくりなさっていてください」とロザリーにいわれてしまった。

久しぶりに剣の練習でもするか、庭に出て一人で剣をふるって練習してみたが、どうも一人では長く続かない。・・・

仕方なく庭園を見ながらお茶を飲んでいた。


全く婚約者とは何をすればいいのだ?


その時、庭の生垣のほうで話し声が聞こえた。

誰かいるのか?

生垣のほうを注目すれば、人の影らしきものが動いている。

オスカルは気になってそちらを注目しているとまた話し声が聞こえた。

その声は複数で、子供の声のようだ。

子供は興奮すると声が大きくなる。

だんだんと大きくなる話し声で話の内容が聞こえてきた。

「あれがアンドレ様の奥方になる人か?」

「そうだよ、母さんが言ってたもん金髪ですごい綺麗な人だって」

「まさか!あれって男の人じゃないか?」

「違うよ、女の人だよ」

「だってスカートはいてないじゃないか!」

「ズボン姿でも私はれっきとした女性なんだが」

生垣に隠れていた子供達が声のほうを向くとそこにはオスカルがたっていた。

5人の子供達だ、3人は男の子で2人は女の子

「みつかっちゃった!」


「当たり前だろう!あんな大きな声を出して密偵として失格だな」

オスカルは笑いながら答えた。


やはりこの人がアンドレ様の婚約者?

しかも貴族の令嬢だって聞いたから、もっとおしとやかな人かと・・・

あっけに取られた子供達を見ながらオスカルは再び声をかけた。

「君達はグランディエ家の園で働いている人の子供達か?」

「そうだよ」
一人の子が答えた。

「貴方は本当にアンドレ様の婚約者?」

「う・うん、まあそんなところかな?」

子供でもそういっておかねば。

子供達は再びひそひそと話しをしだした。

「ほらなやっぱり女の人だっただろう」

「本当だ、じゃあ何で男装してるんだろう?」

「きっとこんな田舎だから動きやすい服装でいるのよ」

「聞きたいことがあるならはっきりと相手に聞くべきではないか?」

再びオスカルにいわれて子供達は聞かれているのにはっときがついた。

「私はオスカル・フランソワだが君達の名前は?」

オスカルに名乗られて子供達は一人ひとり名前を名乗り返した。

「俺はウィリー」

「僕はアシル」

「僕はグレン」

「あたしはエルザ」

「あたしはドロレスよ」

「よければ退屈していたところなので話などしていかないか?」

オスカルにいわれて子供達はうなずいた。

それから子供達にお茶とお菓子をどうぞと言って話をした。

「君達からすれば私が男みたいな格好をしているのが不思議なんだろうね、でも、私にしたらこの姿が自然なんだ」

「私の家は男子が生まれなくてね、跡継ぎがほしかった父は私を男子として育てたんだ」

「貴族って変わったことするんだな」子供達は不思議そうな顔をした。

「いつも男の人の格好なの?ドレスは着たことがないの?」

ドロレスという女の子が聞いた。

「そうだよ、いつもこの姿でドレスは着たことが無いな」

「そんなの・・・可哀想だわ・・こんなに綺麗なオスカルなのに」泣きそうな顔でドロレスが言った。

「可哀想?」そんな言葉初めて聞いたな?それに考えたことも無かった

「でも、アンドレ様と結婚するときはドレスを着るんでしょう?」

「まあ・・・そうだな・・」

「そうよね、ウェディングドレスは女の子の憧れだものね」

「アンドレ様もお喜びになるわ」

ドロレスとエルザは顔を見合わせながら言い合っていた。

やはり男性は綺麗なドレスを着た女性が好きなのだろうか?

「ドレスなんてどうでもいいじゃないか」

「問題は中身だよ、どんなに綺麗に着飾ってても冷たくてきどった女は俺はごめんだ」

話の流れを変えるようにウイリーが言った。

「それもそうだな、僕もウイリーと同意見だな」

「僕もそう思う、だってオスカルは今の姿だってすごく綺麗だもん」

「あたし達だって綺麗だと思ってるわよ」

オスカルはじーんとしてしまった。

私はどうやら慰められているようだ・・


オスカルは子供達といつの間にか打ち解けてすっかり仲良くなってしまった。

特にリーダー格のウイリーとは気があって、ふざけあって追いかけっこしたり、ボール投げしたりして遊んでいた

そうやってすごしているとあっという間に時がたち、もう夕方になってしまった。

「暗くなってきたわ、もう帰らなくちゃ!」

「えぇ~っ、もうそんな時間?」

「遅くなると母さんに叱られる」

子供達は急いで帰り支度を始めた。

「気をつけて帰るんだよ、寄り道せずに気をつけてね」

オスカルは子供達にお菓子を持たせてやって見送った。

「オスカル、また来てもいい?」

「そうだね、今度はお母さんに聞いてからにするんだよ」

「わかった!」

子供達はうれしそうに帰っていった。


翌日、アンドレがバラ園に出かけてきたとき、一人の女性が働く手を止めてアンドレに話しかけてきた。

「あの旦那様、」

「ああ、何かな?マリエッタ」

マリエッタという女性は恐る恐るアンドレに話をした。

「先日うちのウイリーが旦那様のお屋敷に忍び込んでオスカル様に会ったそうなんです」

「オスカルと?」

「そうなんです、旦那様の婚約者がどのような女性か仲間と見に行ったらしくて、オスカル様は気さくに話しかけてくれて遊んでくれたそうなんです」

「しかもまた遊ぶ約束をしたなどとずうずうしいことを言いましてどやしつけてやりましたよ」

「申し訳ありません、旦那様の大事な、しかも貴族のご令嬢を子守に使ってしまったみたいで、どうお詫びしていいものか・・・」

申し訳なさそうにあやまるマリエッタにアンドレは優しく声をかけた。

「そうか、オスカルが・・・マリエッタ、オスカルは子供達と遊べて楽しかったと思うよ」

アンドレの言葉にマリエッタはえっと顔を上げた。

「あいつは普通の貴族の令嬢とは違うから・・マリエッタ、良ければまた遊ばせてやってほしい、多分退屈していたと思うんだ」

オスカルのやつ、あいつは変わらないな・・アンドレは心の中で笑ってしまった。

その日アンドレは早めに屋敷に戻った。

「お帰りなさい、アンドレ」ロザリーが迎えに出てくれた。

「ただいま、オスカルは?」

「オスカル様なら庭のほうにいらっしゃるわよ」

アンドレは「そうか」といって庭のほうに出向いた。

すると子供達とオスカルの声が聞こえた。

「オスカル、もっと押して!」

オスカルはブランコに乗った子供達を押してやっていた。

「オスカル、こっちに来て遊ぼう!」

ウイリーも来ている、マリエッタに叱られたと言うのに

オスカルはまるで童心に返ったように子供達と遊んでいる。

それをアンドレは懐かしそうに見つめていた。

オスカル、お前はあの時とちっとも変わっていない。

俺と初めて出逢ったときと、まるで変わってはいなかったんだ。

アンドレはオスカルをまぶしそうにいつまでも見つめていた。

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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 3

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2016/12/21 (Wed) 17:45

うさぎ

Re: 秘密?

MI様平凡だけど、気に入っているエピソードです、いいお話だといってもらえてうれしいです♪

今回のエピソードはあまり意味がないようでアンドレとの出会いはこのようだったのだと予感させるのに貴重な場面でもあります。

純粋培養かあ、まさにそうですね、子供の心を持ちながら大人のオスカル様だから何事も真剣そのもの。

昔のことはねえ、オスカル様忘れてるしね。(笑)





2016/12/22 (Thu) 13:49

うさぎ

No title

AMA様まさに飾らない方ですよね、こんな風だと子供にも好かれるはずです。

そんな彼女の全てを愛せるのもAMA様のおっしゃるとおりアンドレなんです。

あらためて彼女は自分の愛したとおりの人だったと確信したアンドレは、どうするのか?ですよ。

2016/12/22 (Thu) 13:54