愛しの婚約者殿⑩
「オスカル、ルシェル村の繁華街ににカフェがオープンしたんだ、女性に人気だから、いってみないか?」
アンドレがオスカルをカフェに誘ってきた。
ルシェル村では街のように楽しめる場所は少ないが、それでもアンドレのワイン農業のおかげで人々が集まり、いくつか店も出来てきたのだ。
「私も先日行きましたがステキなお店ですよ」ロザリーも同じく進めてきた。
「それは、いってみたいな」街ではオスカルもたまにカフェを利用することがたびたびあったものだ。
ルシェル村ではカフェなどないと考えていたからうれしい驚きだ。
「では決まりだな、ロザリーも一緒にどうだ?」
アンドレがロザリーも誘ったがとんでもないとでもいうようにおばあ様が切り替えした。
「何を言ってるの!せっかくの婚約者同士のデートなのだから二人きりでいってらっしゃい!」
「そうよ、私に気を使わずに二人きりでいってくるといいわ」ロザリーも気を利かせて同じようにいってくれた。
そうだった、私とアンドレはおばあ様とロザリーからすれば父に認められた婚約者なのだ。
しかし、来月になればアンドレは街にいって父上に私との縁談の申し込みを取り消す算段なのだがな、それなのにこんなに結婚を期待されてもよいのだろうか?
だが、少々複雑な気持ちではあるが、久しぶりのお出かけだ、心が弾むのは仕方が無い、
出発前におばあ様から生地のお店に寄って注文の品を受け取ってきてほしい、と頼まれた。
馬車が準備され二人は乗り込んでいった。
しかし、おばあ様がデートなどと言うからアンドレと隣同士で馬車に乗っていると緊張する。
アンドレが馬車に乗りながら村のあちこちを説明してくれるが、言葉少なになってしまった。
村の華やかな通りにカフェはあった。
なかなかおしゃれでいいお店だ、すでに沢山の若者が入店している。
馬車を店の前に止めてアンドレとオスカルも入店していった。
「いらっしゃいませ、何にいたしましょう?」
席に着くと女性店員が聞いてきたのでアンドレは紅茶とクッキーを頼み、オスカルはコーヒーとマドレーヌを注文した。
「こんな店は久しぶりだな」オスカルは久しぶりのカフェに心が弾んでいた。
「お前は街に住む身だからこういう場所が恋しかったのではないか?」
「ここは街に比べるとずっと田舎だからな」
アンドレは私が村での生活に退屈していないか気を使ってこのような場所につれてきてくれたのだ。
「確かに街が恋しいときもあるが、こういう村の暮らしも悪くないとわかってきた」
「最初この村に来たときは、私には無理だなと思ったが、住んでみれば空気もよいし景色も綺麗だし、何より親切な人が多いからだんだんとここが好きになってきたよ」
オスカルの話を聞いてアンドレは次第にうれしそうな顔になっていった。
「それを聞いて安心したよ」
おしゃれなカフェは女性客が多いものだ。
それも若い女性が圧倒的に多いもの。
そんな中で男装のオスカルとれっきとした男性のアンドレの二人がいれば当然目立つ。
若いレディはステキな男性を見かけると注目したくなるのだ。
「ねえ、あの二人の男性客、すごく目立つわねえ」
「貴方も見ていたの?どっちもすごいステキ」
「どっちが好み?私は金髪のほうだわ、ナルシスが存在してたらきっとあんな美青年よ」
「私も!あの蒼い目で見つめられたら卒倒してしまいそう」
「私は断然黒髪の男性よ、だって整った顔立ちに優しげな風情がステキ・・」
オスカルは街のカフェに出かけたときなどはこのように若い女性に注目されることが多かった。
そこでも男性に間違われることもあったが、その時は気にならなかったものだ。
だが、今はデートという言葉が頭をかすめ、自分が女性と見られないことが不快に思える
だからレディ達の話が内心気になっていた。
しかし、しばらくして注文の品が来たのでオスカルはお菓子に注目した
花のような形の可愛いマドレーヌだ。
早速マドレーヌを口にした。
「うん、なかなか美味しいぞ!」
「そうか、街で食べるマドレーヌとどちらが美味い?」
アンドレに質問されて、オスカルはもう一口マドレーヌを食べて考えてみた。
「うーん、どちらも捨てがたい味だがあえて選ぶならば、こちらのほうが好ましいかな?」
真面目に答えたオスカルだが、その口元にはマドレーヌのかすがついている。
「オスカル、ついている」
アンドレはくすくすと笑いながら手を伸ばしてオスカルの口元についているマドレーヌを取ってやった。
「あ、ああ・・」
「アンドレ、お前も味見してみろ」
オスカルは恥ずかしいので急いで話題を変えようとアンドレにマドレーヌを差し出した。
アンドレはマドレーヌを受け取るのではなくオスカルが手に持ったまま、直接一口かじって「うん、美味だな」と感想をいった。
「お前も食べてみろ」
次に自分のクッキーをひとつつまんでオスカルの口に近づけてお返ししてきた。
ついマドレーヌを食べさせてしまったからお返しにクッキーを進めてくるアンドレにオスカルは一瞬戸惑った。
だけど、クッキーはもう口に、つきそうな場所だ。
自然と口を開けるとアンドレの指で口の中にクッキーを入れられた。
「どうだ、美味いか?」
アンドレが笑顔で聞くので、急いでクッキーをかみしめて出た言葉は
「甘くて・・美味だ」
こんなカップルが憩う場所でお菓子を食べさせあうなど、仲のいい恋人同士のやり取りではないか・・・
しかしアンドレは満足そうに紅茶を飲んでいる。
こんな私とお菓子を食べさせあって、こいつは楽しいのか?
本当の婚約者ではないのに、おかしいではないか・・
アンドレがオスカルをカフェに誘ってきた。
ルシェル村では街のように楽しめる場所は少ないが、それでもアンドレのワイン農業のおかげで人々が集まり、いくつか店も出来てきたのだ。
「私も先日行きましたがステキなお店ですよ」ロザリーも同じく進めてきた。
「それは、いってみたいな」街ではオスカルもたまにカフェを利用することがたびたびあったものだ。
ルシェル村ではカフェなどないと考えていたからうれしい驚きだ。
「では決まりだな、ロザリーも一緒にどうだ?」
アンドレがロザリーも誘ったがとんでもないとでもいうようにおばあ様が切り替えした。
「何を言ってるの!せっかくの婚約者同士のデートなのだから二人きりでいってらっしゃい!」
「そうよ、私に気を使わずに二人きりでいってくるといいわ」ロザリーも気を利かせて同じようにいってくれた。
そうだった、私とアンドレはおばあ様とロザリーからすれば父に認められた婚約者なのだ。
しかし、来月になればアンドレは街にいって父上に私との縁談の申し込みを取り消す算段なのだがな、それなのにこんなに結婚を期待されてもよいのだろうか?
だが、少々複雑な気持ちではあるが、久しぶりのお出かけだ、心が弾むのは仕方が無い、
出発前におばあ様から生地のお店に寄って注文の品を受け取ってきてほしい、と頼まれた。
馬車が準備され二人は乗り込んでいった。
しかし、おばあ様がデートなどと言うからアンドレと隣同士で馬車に乗っていると緊張する。
アンドレが馬車に乗りながら村のあちこちを説明してくれるが、言葉少なになってしまった。
村の華やかな通りにカフェはあった。
なかなかおしゃれでいいお店だ、すでに沢山の若者が入店している。
馬車を店の前に止めてアンドレとオスカルも入店していった。
「いらっしゃいませ、何にいたしましょう?」
席に着くと女性店員が聞いてきたのでアンドレは紅茶とクッキーを頼み、オスカルはコーヒーとマドレーヌを注文した。
「こんな店は久しぶりだな」オスカルは久しぶりのカフェに心が弾んでいた。
「お前は街に住む身だからこういう場所が恋しかったのではないか?」
「ここは街に比べるとずっと田舎だからな」
アンドレは私が村での生活に退屈していないか気を使ってこのような場所につれてきてくれたのだ。
「確かに街が恋しいときもあるが、こういう村の暮らしも悪くないとわかってきた」
「最初この村に来たときは、私には無理だなと思ったが、住んでみれば空気もよいし景色も綺麗だし、何より親切な人が多いからだんだんとここが好きになってきたよ」
オスカルの話を聞いてアンドレは次第にうれしそうな顔になっていった。
「それを聞いて安心したよ」
おしゃれなカフェは女性客が多いものだ。
それも若い女性が圧倒的に多いもの。
そんな中で男装のオスカルとれっきとした男性のアンドレの二人がいれば当然目立つ。
若いレディはステキな男性を見かけると注目したくなるのだ。
「ねえ、あの二人の男性客、すごく目立つわねえ」
「貴方も見ていたの?どっちもすごいステキ」
「どっちが好み?私は金髪のほうだわ、ナルシスが存在してたらきっとあんな美青年よ」
「私も!あの蒼い目で見つめられたら卒倒してしまいそう」
「私は断然黒髪の男性よ、だって整った顔立ちに優しげな風情がステキ・・」
オスカルは街のカフェに出かけたときなどはこのように若い女性に注目されることが多かった。
そこでも男性に間違われることもあったが、その時は気にならなかったものだ。
だが、今はデートという言葉が頭をかすめ、自分が女性と見られないことが不快に思える
だからレディ達の話が内心気になっていた。
しかし、しばらくして注文の品が来たのでオスカルはお菓子に注目した
花のような形の可愛いマドレーヌだ。
早速マドレーヌを口にした。
「うん、なかなか美味しいぞ!」
「そうか、街で食べるマドレーヌとどちらが美味い?」
アンドレに質問されて、オスカルはもう一口マドレーヌを食べて考えてみた。
「うーん、どちらも捨てがたい味だがあえて選ぶならば、こちらのほうが好ましいかな?」
真面目に答えたオスカルだが、その口元にはマドレーヌのかすがついている。
「オスカル、ついている」
アンドレはくすくすと笑いながら手を伸ばしてオスカルの口元についているマドレーヌを取ってやった。
「あ、ああ・・」
「アンドレ、お前も味見してみろ」
オスカルは恥ずかしいので急いで話題を変えようとアンドレにマドレーヌを差し出した。
アンドレはマドレーヌを受け取るのではなくオスカルが手に持ったまま、直接一口かじって「うん、美味だな」と感想をいった。
「お前も食べてみろ」
次に自分のクッキーをひとつつまんでオスカルの口に近づけてお返ししてきた。
ついマドレーヌを食べさせてしまったからお返しにクッキーを進めてくるアンドレにオスカルは一瞬戸惑った。
だけど、クッキーはもう口に、つきそうな場所だ。
自然と口を開けるとアンドレの指で口の中にクッキーを入れられた。
「どうだ、美味いか?」
アンドレが笑顔で聞くので、急いでクッキーをかみしめて出た言葉は
「甘くて・・美味だ」
こんなカップルが憩う場所でお菓子を食べさせあうなど、仲のいい恋人同士のやり取りではないか・・・
しかしアンドレは満足そうに紅茶を飲んでいる。
こんな私とお菓子を食べさせあって、こいつは楽しいのか?
本当の婚約者ではないのに、おかしいではないか・・
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