FC2ブログ
うさぎ

愛しの婚約者殿⑯

一部始終を知り、お前が俺のためにしてくれたことを考え、辛くて仕方なかった。

その後早々に公爵一家は出て行き、お前はそれでも部屋で謹慎を命じられたままだった。

俺はいてもたってもいられずに、夜になり、お前の部屋の前に立つ木に登り、部屋のバルコニーに侵入した。

窓の向こうにいるお前が見えた。

お前はしょんぼりと肩を落としてベッドに座り込んでいた。

俺は窓ガラスをたたいて合図したらお前はすぐに気がついて俺を部屋の中に入れてくれた。

「アンドレ!来てくれたのか!」

うれしそうに俺を迎え入れてくれて、俺はお前に何と言って詫びればいいのか悩んだ。

「オスカルごめん僕のためにお前は伯爵様にひっぱたかれて・・腫れてるんじゃないか?」

少し紅く腫れたお前の頬を俺は痛ましく感じながら見つめた。

「お前見ていたのか?」

俺はうなずき、すまない気持ちでお前の顔を見た。

「ごめんよ、お前は女の子なのに顔をたたかれて、痛かっただろう」

しかしお前は笑顔を作り返答した。

「あれくらいどうってことない、剣の修行なんかで怪我するのは慣れてるんだ」

「公爵夫人だって言ってただろう・・こんな乱暴な僕に求婚するやつはいない、だから顔が腫れても平気だ」

俺にはお前の悔しい気持ちが良くわかった、公爵夫妻に言われた言葉にお前は傷ついていた。


「そんなことあるもんか!」

お前はこんなに綺麗で優しいじゃないか

そんなお前を望む男は必ずいる。

僕だって・・

僕がもし、貴族の子息ならお前に求婚するのに

僕が貴族でありさえすればお前を幸せに出来るのに


だけど・・オスカルお前は平民の僕でも受け入れてくれるか?


「オスカル・・よければ、もしよければだけど、僕がお前の求婚者になってもいいかな?」

「アンドレ・・・お前、何を?」

お前は驚いて聞き返した。

「僕がお前に求婚したらお前は受け入れてくれるか?」

「聞いたことがあるんだ、平民でも金持ちなら貴族と結婚出来るんだって」

「・・ありがとう僕を慰めてくれるんだな、でもいいよ、こんな乱暴な僕に求婚するなんて」

お前は俺の言葉を単なる慰めの言葉と取った。


「慰めじゃない!お前はこんなに綺麗だし、それに僕にはお前がステキな女の子に写るんだ!」


「オスカル、僕では嫌か?貴族の生まれじゃないただの平民の僕では、」

「もしも申し込みを受け入れてくれるなら僕はがんばっておじいちゃんの後をついで金持ちになる、そしてお前を迎えに来るよ」

「貴族の子息のような贅沢はさせられないかもしれないけれど、僕はお前を大事にしてきっと幸せにする!」


「僕はこんなに乱暴で男の子みたいだぞ」

信じられないとでも言うようにお前はためらいの言葉を口にした。

「いいさ、僕のお嫁さんになるのなら、それくらいで丁度いい、だってワイン農家の妻だからたくましくなくちゃ」

「僕はドレスだって似合わないかもしれないぞ」

「そのままのお前でいいんだよ、十分綺麗だ」

「けど・・・だけど・・本当にいいのか?」お前は泣きそうな顔だった。

「いいんだ、だって僕は・・」

「僕はきっとオスカルお前が好きなんだ」

俺の告白は胸に届いたようでお前も思い切って告白の返事をしてくれた。

「僕も、アンドレお前が好きだ・・・」

このときのお前が結婚をどのように考えていたかはわからない、けど俺にとっては一生をかけた告白になったんだ。

「じゃあ、僕が迎えにくるまで待っていてくれる?」

俺の問いにお前はコクンとうなずいて答えた。


「約束だよ、オスカル僕たち大きくなったら結婚しよう」

俺はお前に初めての口づけをした。

それはいつかきっと迎えに来るという幼い俺達の誓いの口付けだった。

「これで僕たちは婚約したんだ」

お前は泣き顔のまま笑顔を見せた、その笑顔がとっても可愛くて綺麗で俺はいつまでも見つめていたいと思った。


将来を誓い合った俺達だが、別れの日は突然訪れた。

翌日のことだった。

お前は家庭教師との勉強中におじいちゃんが突然屋敷を尋ねてきて村に帰るぞと俺を迎えに来た。

母さんが倒れたと連絡があったと言う。

俺はお前の勉強が終わるまで待ってくれと頼んだがおじいちゃんは、一刻も早く帰らなくてはいけない早くしろと俺の荷物を馬車に運び入れていった。

それで俺は仕方なくお前の部屋に忍び込んで行き、テーブルの上に短い手紙を書いておいてきた。

『いつかきっと迎えに来るよ、オスカルそれまで待っていて、アンドレより』


俺はおじいちゃんに促されて馬車に乗り込んだ。

馬車はすぐに動き出して屋敷から遠ざかっていった。

俺はお前に会えないまま帰ることが心残りで仕方なかったが、それでも再び会えることを信じていた。


いつか僕がワイン農家をついで大きくしたら、そしたらお前を迎えに行くんだ、お前を花嫁にするために

絶対に忘れない 僕の初めての恋

きっと行くよ

オスカルお前を迎えに・・・




「お前が・・あの時の少年・・なのか?・・」

アンドレの告白に驚くオスカル

それを聞いて今度はアンドレが驚いてしかしうれしそうに答えた。

「覚えていてくれたのか・・うれしいよ、お前の様子からすれば何もかも忘れているのかと思ってた」

お前が・・あの時の少年・・・

「夢かと思ってた、時折思い出すんだ、黒髪の少年と私が遊んだ景色を・・何故そんな記憶が私にあるのかわからなかったが・・」

「確かに幼い頃の記憶だからな、しかも短い期間の出来事だ、忘れてしまったとしても無理は無い」

「けど、俺にとっては生涯忘れられない思い出だった、今でもはっきりと思い出す、オスカルお前との出会いと別れの記憶は、俺にとって何より大事な宝物だったから」

「俺の初恋は、男の子みたいで、剣が上手くて、正義感の強い心優しい女の子だった、その子は大人の女性になり、俺の目の前に現れ、再び俺は恋をした」

「オスカル、お前を愛している」

アンドレはオスカルをその腕の中に抱きしめた。


こんな、こんなことって・・・

抱きしめられた彼の腕の中でオスカルの耳にアンドレの心に訴えかけるような言葉が聞こえた。


「お前が覚えていないのだから、俺はもう一度やり直そうと思った、今の俺自身をその眼で見て選んでほしいと、心からそう思ったんだ」

「オスカルあの頃と同じことを聞く、俺では駄目か?」

「貴族の生まれではない平民の俺では」

「お前と俺では身分が違う・・・だけど・・・」


「初めて出逢ったあの時から今までずっとお前だけを愛していた」


「アンドレ・・う・・・う・・」

オスカルは涙が出て仕方なかった。


求婚者なんて現れなくても平気だった。

自分よりも弱い男と結婚なんてごめんだと思った。

騎士のように高貴な生き方に憧れた私には恋なんて無縁だって考えてた。

だけど、だけど、私はこんな男性にずっと愛されていた。


私との約束を、それも幼い頃の約束を彼はずっと覚えていてくれた。

私を迎えに来るために、彼はこれまで努力してくれた・・・


アンドレお前は、こんな私のために・・・

「アンドレ、私もお前を・・・」

「愛している」

スポンサーサイト



うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 4

There are no comments yet.

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/12/29 (Thu) 19:17

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2016/12/29 (Thu) 23:01

うさぎ

Re: (T^T)感動です…

MI様忙しい中ありがとうございます。

そうですよね、男装でも男色家に見られても気にしない、世間知らずで女らしいことは何も出来ないオスカル様でもかまわない。

これだけでも、かなりの好条件です。

それが子供の頃の約束を守るためにがんばってきたなんていわれて心を動かされない女性はいない。

オリンピック選手はわかりやすい例ですね、確かにあの方達のがんばりは十分尊敬に値します。

MI様に心が揺さぶられるといわれジーンとしました。

このような言葉ががんばって書いたご褒美に思えます。

2016/12/30 (Fri) 13:35

うさぎ

Re: No title

N様感動していただけてうれしいです!

書いておいてなんですが、アンドレ少年が金持ちになって迎えに来るってだけで可愛くてたまりません。

N様こそお忙しそうなので申し訳なく思ってます。

まさか、この話ここまで長い話になるとは私も想像がつかず・・・

今日は恋に目覚めたオスカル様です♪

2016/12/30 (Fri) 13:40