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うさぎ

愛しの婚約者殿29

甦る思い出、それは・・

ああ、そうだ、家庭教師との勉強を終えて自分の部屋に戻るとこの手紙がおかれてあった。

私が戻らぬうちに帰ってしまったことを恨んだが、せめてもの救いがこの手紙だった。

アンドレは約束を守っていつか会いに来る、彼は私を迎えに来てくれる、その時の私はこの手紙を眺めながらそう信じていた。

だけど待ってる時間はあまりに長くて何度もばあやにアンドレのことを聞いた。

「ばあや、アンドレは、来ないのか?」

「オスカル様、アンドレは平民の子です、オスカル様に会いに来るなど許されないのですよ」

「だって、アンドレは僕に手紙を残してくれたんだ、いつかきっと迎えに来るって」

「それは子供の遊びでしょう、よく小さい頃に言ってみたくなるその場限りの言葉遊びですよ」

「ばあやのバカ、アンドレは僕と約束したんだ!」


困らせる私をばあやは何とかあきらめさせようと言葉をつくして説得した。

「オスカル様、貴族と平民とでは身分が、住む世界が違うんです、貴方様は雲の上のお方、それが簡単に会いに来る、ましてや迎えに来るなどどれだけ恐れ多いか」

「アンドレだって、もう忘れていますよ、あきらめるんですオスカル様」

ばあやは、アンドレが私を迎えに来ることはない、待っていても無駄だと何度も私に言い聞かせた。

いつか私はその言葉を信じるようになり、もう彼は来ないものと思うようになった。

「アンドレはもう来ない、私との約束など忘れている」

「こんな手紙ひとつで帰ってしまったんだ、彼にとって旅先の思い出にすぎないんだ」

「アンドレの、嘘つき」

本当は破り捨てようとしたが、どうしても出来なかった。

私を慰めようとした彼の優しさは本物だったと信じたかったから。

だからこの手紙を記憶とともに封印することにした。

忘れてしまおう、お前のことは、私はジャルジェ家を継ぐのだから武芸や勉学に励み、領民に慕われる貴族になるのだ。


大きくなるにつれて、私はいつの間にかあの思い出は夢だと信じるようになっていった。

男として育った私には恋など無縁だ、誰よりも自由に誰よりも誇り高く生きていこうとした。

お前との約束を忘れ、あれは夢のことだと記憶の片隅に封印をして。


待っていたのに、待っていたかったのに、私は忘れてしまった・・


それなのに、お前は覚えていた。

私は忘れていたのに・・・


私はあれは夢だと、お前の話を聞くまでは忘れていたのにお前はずっと覚えていてくれた。

私を迎えに来ようとした。


私を迎えに来るといったあの言葉は

あの時の約束はあの口づけは・・真実


私のために・・・

こんな私のために・・


オスカル

笑顔で私を出迎えてくれたお前


良く来てくれたね婚約者殿


あの瞬間私はお前の黒い瞳に幼い頃のお前を見つけた


オスカル愛しているよ


ああ・・・アンドレ、私もだ

私もお前を、愛している



オスカルは眼から涙が溢れ落ちた。



オスカルはベランダの側にある木を伝って庭に下りていった。

以前アンドレの住むルシェル村を目指したときと同じ服装で、剣を腰に刺して。

鞄にいくばくかの荷物をつめて出てきた。

屋敷の庭の壁近くまで来ると壁の外側に荷物を放り投げ、壁をよじ登り、今度は降りて、鞄を拾う、そうして屋敷の外に抜け出していった。

ばあやが戻ってくるまでに少しでも遠くに行ってしまわなければ。

街まで出て馬車を雇う、そこまで急いで駆け出そうとした。

しかし、その時、向こうから一人の男がこちらに向かってくるではないか!

それも自分を知っているようで名前を呼ばれた。

「オスカル!」

その男は、アランだった。

アランは屋敷を訪れ、オスカルの姿を見つけて追いかけてきたのだ。

しまった、アランに見つかってしまった!

急いで走り出したが、すぐに追いつかれ腕を掴まれてしまった。

「どこへ行く?」

アランに言えるわけもなくオスカルは黙りこんでしまった。

鞄にどう見ても旅姿のオスカル・・・まさか・・

「オスカルお前、アンドレのところにいくつもりか?・・」

アランに知られてしまった、見つかった時点でばれるのは時間の問題だったがな。

オスカルは観念した。

「そうだ・・」

「何故だ?あいつはお前を見捨てた男だぞ!」

アランには理解できなかった、あの誇り高いオスカルが自分を見限った男のもとに行こうとは。

しかし、オスカルの決意は変わらなかった。

「そうではない」

「彼は私のために身を引いたのだ」

「将来を嘱望された貴族のお前と結ばれれば、私の未来は約束されたも同じ」

「彼は私と身分が違うことを気にしていた、自分と結婚すると私の貴族としての栄光は失われ、つましい暮らししかできないことを」

「ここにきてあらためて貴族と平民との差に思い知らされてしまったのだろう」

「何故そんなことがわかる?」

「わかるよ、アンドレのことなら」

それほどまでにやつのことを・・

オスカルの言葉にアランは激昂し握った腕に力を込めた。

「行かせない!」

「離せ!」

オスカルは驚いてアランの顔を見たが、その顔は怒りに満ちている。

「絶対に行かせるものか!アンドレのところへなどお前をいかせはしない!」

「腕ずくでも止めてみせる!」

アンドレのもとにいくなどアランには到底認められぬだろう、ならば・・仕方ない

「そうか・・」

「あくまで私の邪魔をするというのなら・・」


オスカルはどさっと鞄を放り出し、腰に刺したサーベルの柄をぐっと握った。

そしてスラリと剣を抜きアランの前に突き出して見せた。

「私を倒してからにするのだな」


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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 8

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2017/01/11 (Wed) 21:42

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2017/01/11 (Wed) 23:05

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2017/01/12 (Thu) 00:42

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2017/01/12 (Thu) 08:24

うさぎ

Re: No title

AN様アランとの対決はもちろん覚えておられますよね、あのシーンを知っている方ならアランがどれだけ好敵手だったか理解できるはず。

それに感涙していただけて感無量です(笑)

そーだ、あの時アンドレ心配しながら見守ってましたね。

でもそのアンドレはおらず、けれどアンドレのもとに行こうとする気力がが今のオスカル様のパワーです。

私の文章力で上手く描けるかが心配ですが我慢してみてやってください!

2017/01/12 (Thu) 11:39

うさぎ

Re: さすが!

MI様アンドレの残した手紙によって生気を取り戻したオスカル様です。

アンドレからの別れのシーンからこれまで落ち込みに落ち込んだ彼女が決意したからこそ強くなる、そうなんです、MI様のいうとおり、それがオスカル様の魅力なんですね。

その裏での心の葛藤がある、だからこそ魅力を感じるとは深い読みですね、さすがMI様!

ばあやは、自分が知り合いに頼まれたばかりに大事なお嬢様が身分違いな子に深い想いいれしているなど到底恐れ多かったんです。

ほんのひと時をすごした間なのにいつになっても忘れようとしないと心配になりますからね。

アラン、やはり人気なんですね!

そうか、ずっと一人の人に片思いするアランが女性にとって魅力的なんですね、(私本当に視野が狭くて)

けど今までの相手役の中では印象に残る役回りだって思うんです。

あの戦いのシーンはファンなら誰もがしってる名シーンですから♪

心配なのが私の文章力ですが、果たして私に戦いが描けるのか(汗)





2017/01/12 (Thu) 11:53

うさぎ

Re: お話、動きましたね!

TM様お話動きました(お待たせしました)

オスカル様が動き出したきっかけが昔の手紙一枚でしたが。(ここら辺は理解してもらえるか心配でしたが皆さん大丈夫みたいでうれしいです)

それでもあらためて自分はばあやに言われて徐々に忘れようとしたのに対して彼はどんなに言われてもあきらめなかった話もきいてるんです。

(アンドレの決意の強さは昔自分のために貴族の息子を殴りつけ全て自分ひとりのせいにした彼女を自分自身で幸せにしたいという想いからです。)

20年という長い年月を改めて考えるきっかけになりました。

それにTM様のオスカル様が昔のこと忘れてしまったことも理解できてもらえてよかったです。

だけど、オスカル様自分が忘れていたことでアンドレにあることを思っていました。

今回それをアランに別れの言葉として告げます。

TM様、ルシェル村から戻ってけっこうな日にち経ってるんです、父上もいきなり戻ってきて婚約しろとはいえないです(汗)

一ヶ月くらいたってると思ってください、だからおばあちゃんもロザリーももう知っています。

おばあちゃんの容態はアンドレやや大げさに言ったんです(笑)そうじゃないとオスカル様帰っちゃうから。

今回アランにケリをつけます、戦いのシーンが心配!



2017/01/12 (Thu) 12:12

うさぎ

Re: No title

N様オスカル様立ち直ってアンドレを追いかける決意をして、行動に移したところ早速アランに見つかってしまいました。

アランは自分の妻にと考えていたオスカル様が別の男のもとにいくなんて、絶対に許せるわけないですよね~。

どっちも剣の達人なので実際ならば名勝負なのでしょうが。(だけど描くのが私なので期待しないでください、剣とかを調べて書いたけどいかんせん自信がありません)

N様アランとの剣の勝負と聞いて心配してくれていますね、ありがとうございます、やはりアランとの戦いは期待値があがるんですね。

すごいほめてくださってありがとうございます、もう少しお付き合いくださいね。

2017/01/12 (Thu) 12:19