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アンドレの願い③

まだオーギュストが若くてエドモンド家も裕福であったころ、召使の中に黒髪のひときわ美しいメイドがいた。

名前はアンリエット、当時まだ15歳の少女であった。

オーギュストは、当時18歳、彼は清純で可愛らしいアンリエットに惹かれていた。

アンリエットも優しくスマートなオーギュストに惹かれ、二人は愛し合う関係になった。

しかし、当時のエドモンド男爵つまりオーギュストの父親が二人の仲を許さず、息子には貴族の出の娘と結婚させると決めてしまった。

けれど、アンリエットには、このとき、既におなかの中に子供がいた。

そこで、当時のエドモンド男爵は召使のライルにおなかの父親になり、アンリエットを娶るよう指示した。

ライルは以前からアンリエットを愛していて、たとえ、おなかの中の子が自分の子でなくとも良い、アンリエットさえ良ければ一緒になりたい、と自ら申し出たのだ。

オーギュストは貴族のおぼっちゃん育ちで父親に逆らえず、しぶしぶアンリエットと別れ、貴族の娘との婚姻を承知した。

そしてライルはアンリエットを連れてほかの土地へと出て行った。

しかしオーギュストの愛している女性はアンリエットだけであった、父親が死んで跡をついでからは彼女を忘れるために遊びまわり、放蕩の限りをつくし、気が付いてみれば財産の多くは失われ、今では細々と葡萄農園だけで食いつないでいる状態だ。

結婚した女性とは子供も出来ず、別れてしまい、独り身になった。

自分が頼りないせいでアンリエットにはすまないことをした、と悔いて、お腹の中の子供はどうなっただろう?無事生まれて育っただろうか?アンリエットとお腹の子供のことばかり考えて生きてきた、というのだ。

アンドレは自分の父親がライルだと信じて育ってきたのだから、激しく動揺した。

けれど、これが嘘ならマロンが嘘だというはずだ。

「おばあちゃん、嘘だろう、俺の父さんは8歳まで育ててくれたライルだろう」

祖母の顔を見ると、祖母は泣いていた。

「アンドレ・・・今まで隠していてごめんよ...アンリエットはお腹の赤ん坊を一人で育てるといったときは、どうしたらいいかと悩んだよ、けどライルが父親になって育てる、と言ってくれてね、彼は本当に優しい人だったよ、お前をいつくしんで育ててくれたしね」

「すまない、アンドレ私がふがいなかったせいで、アンリエットにもお前にも苦労をかけてしまって、私を許してほしい・・・」

「・・・・・・・」

「しかし、こうしてめぐり合えたのは神のお導きだ、アンドレ、お前は私の血を引く貴族なのだ、どうだろうエドモンド男爵家を継いではくれないか?」

「私には子供がいない、屋敷と小さな葡萄園しかもってはいないが、考えては見てくれないだろうか」

「とんでもない話ですよ!あたしとアンドレはジャルジェ家にお世話になっていて、不自由なく暮らしてるんです、あなたの財産なんて何一つ要りませんよ!」

「マロンさん、あなたには本当に申し訳ないことをした、アンリエットにもアンドレにも何とわびたらいいのか・・けどそれでも奇跡的にあえたわが子をあきらめる気にはなれない!」

「どうだろう!アンドレ小さな葡萄園ではあるが、ワインとして出荷するようになり、少しずつでも大きくして行ってる途中なんだ、だが跡継ぎがいなければ、その計画も駄目になる」

アンドレは、少し間をおいて答えた「少し考えさせてください・・・」

「アンドレ!」マロンは驚いて孫の顔を見た。

そこには深い苦しみを感じながらも、何かしら決意が固まりつつある表情であった。

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