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うさぎ

恋しい婚約者殿③

アンドレは屋敷に戻ってから早速忙しそうに旅の支度を始めた。

なんといっても新規の客がワインとバラを大量注文してくれたのだ。

張り切らざるを得ない。

それはわかっているのだが、オスカルとしてはやっとワインパーティーが終わり二人の時間がゆっくり持てると思っていたすぐにこの事態だ。

仕事に燃えてるアンドレは嫌いではないが、今の彼は自分のことを忘れてしまったようで寂しい。

「オスカル様バラ園から戻ってらしたんですか?早かったですね」

オスカルがぼんやり立ちすくんでいるとおばあ様に声をかけられた。

「バラ園でボードレール侯爵からの使いが来て大量のバラとワインの注文があり、新規の客だからアンドレも挨拶に向かうといって、急いで戻ってきました」

「まあ、新規のお客様が!」おばあ様もうれしそうだ、やはり顧客が増えるということは喜ばしいことなのだ。

「新しいお客様が出来るとアンドレはいつもこうして挨拶に伺うのですか?」

「そうね、お礼を兼ねてご挨拶は欠かさないようにしていますわ」

そうか、これは農園主としては必要なこと。仕方ないことなんだ・・

明日になれば彼はパリに旅立ってしまう。

少しでも顔を見ておきたい気持ちでアンドレの部屋に向かった。

アンドレは鞄に書類や荷物をつめている。

「アンドレ・・」

「何だ?」忙しそうにしながらアンドレは返事した。

「いつ戻ってくるんだ?」

「そうだな・・?往復の日数とあわせて早くて一週間、他のお客様にもご挨拶していけば10日くらいかかるだろう」

一週間・・早くても・・

オスカルにすれば一年ともいえる期間だ。

「もっと早く戻れないのか?3日くらいで・・」

「無理だよ、お前だって知ってるだろう、パリまで二日はかかるんだ、しかもワインとバラを送るんだ、ゆっくり進まないと商品に傷がつく」

そうなのだ、オスカルが以前このルシェル村にやってきたときも二日はかかった。

「だが・・それでももう少し早く戻れないのか」

アンドレはオスカルの寂しげな声と様子で気がついた。

鞄に荷物をつめる手を止めて立ち上がり、オスカルの肩に手を置いた。

「寂しいのか?」

アンドレにはすぐにばれてしまう、だが意地を張って反対の言葉が出てしまった。

「さ、さびしくなんて、ない」

「ただ、お前がいないとちょっと退屈だな、と」

アンドレにはオスカルの意地を張っている様子が可愛らしく映り、優しい言葉で慰めてきた。

「俺はお前と離れるのは寂しい、けど戻ってきてお前の顔を見るのを楽しみに出かけることにするよ」

そんな風に言われるとよけいに恋しさが増す。

オスカルはあきらめきれずある提案をおずおずと持ちかけてみた。

「アンドレ、パリに行くならば私も一緒に行っては駄目か?」

「何だって!」

オスカルの思わぬ言葉にアンドレは驚いた。

しかしすぐに却下された。

「今回は仕事だ、プライベートな旅行はまたいずれ連れて行ってやるよ」

オスカルはそれでもあきらめきれずに粘ってしまった。

「だ、だってパリなら私のほうが良く知っているし、知り合いも多いから役に立つはずだ」

だがアンドレはその意見を取り上げてはくれなかった。

「オスカル、お前とはまだ正式に婚約者として世間に披露していない、こんな中途半端な関係では客に紹介は出来ないんだ」

「だから今回はあきらめてくれ」

アンドレの手厳しい意見にオスカルはがっかりして顔を背けてしまった。

その様子は子供がすねているようだ。

アンドレはくすっと笑いオスカルの身体に両腕を巻きつけ包み込むように抱きしめた

「俺も寂しいが少しの間の辛抱だ」

ぜんぜん少しではない一週間もだ、もしかして10日かも・・

「今回の仕事しだいでパリでの仕事が増えるかもしれない」

それでは、これからもちょくちょくこのような長期留守の仕事が増えるということか?


「そうなればお前に貴族の暮らしを取り戻させるのも夢ではない」

「だから俺が帰るのを楽しみに待っていてくれ」


アンドレの言葉は愛情に満ちたものだ

だが、肝心のオスカルの心には空しく聞こえるばかりだ。


貴族の暮らしもいらない

贅沢もしなくていい

今の暮らしで満足だから側にいてくれ

心の中で唱えるように言ってみたが彼に伝わるわけもない。

またもや別離の寂しさを味わうのか!

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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 2

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2017/03/11 (Sat) 20:46

うさぎ

Re: No title

AN様新婚旅行中の妻が夫に置き去りに・・・だなんて言いえています!

まさにオスカル様そんな気分なんですよ。

それにアンドレとしては家族を食べさせていくため、働いて稼がねばいけない。

このお話は結構現実的な悩みになりました。

一緒にいたいと思うオスカル様のいじらしい思いがどうなるのか楽しんでいただければ幸いです。

2017/03/12 (Sun) 10:56