FC2ブログ
うさぎ

アンドレの願い④

「わかった、今すぐに返事は出来ないだろう、・・だが二日後に私はブルゴーニュに帰らなくてはいけない、植物とは生き物なのでね、世話を怠ってはいけないのだよ」

「貴族で領主の貴方自らお世話するのですか?」

「領主と言ってもそんな優雅なものではない、貧乏貴族なのだから使用人と一緒に働いているよ、だがワイン事業が成功すれば再び良い暮らしが出来る、使用人たちにもお返しが出来るというものだ」

マロンは驚いてしまった、エドモンドは昔から苦労しらずのおぼっちゃんでしかなかった、それが自ら汗を流して働くなど想像も出来ない事実であったのだ。

「アンドレ、出発までに返事をくれるとありがたいのだが・・・ベルサイユからブルゴーニュは遠い、早く帰らなくてはいけないんだ」

「わかりました、お返事はできるだけ早くいたします」

エドモンド男爵を送り出してからマロンは、アンドレに「お前まさかあの男の元に行く気かい?」

アンドレは「おばあちゃん・・・俺は・・・」

「お前の父親はライルだよ、それを忘れてはいけないよ・・・けどお前が決めたのならあたしは反対はしない」

「お前の未来はお前だけのものだからね、自分の行きたい道を選べばいいよ、どんな道を選ぼうとあたしは応援してるからねアンドレ」

「おばあちゃん、・・・ごめん、そしてありがとう」アンドレは思いがけないマロンの返答に思わず涙が出そうになった、これまで一人で自分を育ててくれた祖母、いつまでも側にいようと考えていたが。

その後、アンドレは自室で再びエドモンド男爵の申し出について考えていた。

そこへオスカルが入ってきた、心配していたオスカルはことの成り行きをマロンから聞きだし、急いでアンドレの元へ駆けつけたのだ。

「アンドレ!いったいどういうことだ!」

「オスカル、どうしたそんなに興奮して」

「これが興奮せずにいられるか!エドモンド男爵がお前の本当の父親だというのだけでも驚きだが、お前を跡継ぎにしたい話が起こるなどまさに天変地異な出来事ではないか!」

「そうだ、俺も何が何だかわからない状態だが、ともかく男爵は2日後にベルサイユを去る、その前に決めなければ」

アンドレの思いもかけない返事にオスカルは再び興奮してしまった。

「アンドレ!まさかお前男爵の申し出を受けるつもりなのか?」

「今の考えが変わらなければ、そうしようと思う」。

「何故だ、お前とお前の母君を見捨てた男だぞ」

「ああ、だが俺の本当の父親であることには違いない」

「それに今は落ちぶれた貴族で葡萄園をやってるらしい、しかも自らが汗を流して働いて、昔の権勢を取り戻すよう頑張っているのが話から伺えた、俺はやってみたい、と思った、そこで働く領民のためにも」

オスカルはアンドレの話を聞くうちに彼の気持ちの流れがわかったような気がした。

貴族になり、領地を持てるとはいえ、贅沢な暮らしが出来るわけではない、しかし心優しい彼は実の父親が苦労してるのを見て、見捨てられない気持ちになったのだ。

彼は決めたのだ、ブルゴーニュへ行くことを・・・エドモンド家を継ぐことを。

だが、それは二人の別離を意味する。

「だが・・・ブルゴーニュは遠い・・・」

「そうだな・・・パリからもジャルジェ家からも遠いな・・・」

「それでもお前は行くと決めたんだな、ばあやはどうする?」

「おばあちゃんは俺がどんな答えを出そうと反対しないと言ってくれたよ」

「父上や母上も寂しがる」

「お前がいるから大丈夫だ」

「召使達も寂しがるぞ、」

「召使連中はたくましいんだ、いなくなるやつにいちいちかまっていられるほど暇では無い!常に前に進むことで頭が一杯で俺のことなどすぐに忘れるさ」

「それではお前に気がある侍女達は、どうするのだ?」

「それには勿体無さを感じるが、すぐに他の男に乗り換えるさ」

「・・・それでは・・・私は・・・私は、どうなるのだ・・・」

「それが、唯一心残りだ・・・」

「それでもお前は行くのだな、・・・私を見捨ててでも、私の目の前から去っていくのだな・・・」唇を震わせながら悲しそうに語るオスカル。

「オスカル・・・俺は・・」

「もう良い!お前はお前の信じた道を歩めばよい!私とお前は固い友情で結ばれていると信じている、どんなに離れていても、また会えると私は信じているぞ!」

寂しい感情を振り切るようにオスカルは大きな声でアンドレに伝えた。

「アンドレ!何か入用なものがあれば、遠慮なく伝えよ!大事な友の旅立ちだ!どんなものでも用意してみせるぞ」

「気が早いな、まだ男爵に返事もして無いんだぞ、さっさと追い出す気だな!」

「そうとも、主人を平気で見捨てるやつなど、こちらから願い下げだ!」

「オスカル、ほしいものはお前の持つ銀の十字架だ、いつも首に下げているやつだ、それを俺にくれないか?」

「こんなもので良いのか?」

「ああ、そうだ、お前には俺の持っているものを変わりに渡しておくよ」

二人は互いの十字架を交換した。

「ありがとう、これでお前と離れていても側にいるような気持ちに慣れる」

アンドレの言葉にオスカルは涙が出そうになった。

「では、またな、私はもう行くからお前は一人でこれからのことを悩め!」

そしてオスカルはアンドレの部屋から急いで去っていった。

まるで台風のように去っていく彼女の後姿をアンドレはいつまでも見つめていた。

そして悲しそうに語るのだった。

「見捨てられたのは俺のほうだ・・・オスカル」
スポンサーサイト



うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 0

There are no comments yet.