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うさぎ

恋しい婚約者殿⑫

ルシェル村の朝。

オスカルは自分の部屋で眼を覚ました。

寝起きの気分は最悪だ。

アンドレがパリでいく人もの貴婦人に誘いを受けている夢を見た。

それを遠眼で見つめる自分が夢の中に居た。

近づこうとしても近づけない、まるで見えない壁があるようだった。


せっかく伯父のトマス氏が二人の仲を認めてくれてよい気分であったのに、今日の夢で台無しな気分だ。

しかし、夢は夢だ。

いつまでも気分を害してはいられない。

さっさと起き出して一日をはじめなければ。

オスカルはその言葉通りに起き出し、着替えを始めた。

着替え終えれば一階の食堂に下りていく。

「おはようございます、おばあ様、そしてロザリー」

「おはようございます、オスカル様」

「おはようございます、良いお天気ですね」

三人で食べる朝食にも慣れてきた。

アンドレがいつも座る席が空いているのを見るのがいささか寂しい気がするが。


「お客様がお見えです、トマス様のところのアレク様ですが」

メイドのネルが客が来たと伝えに来たが、アレクとは何のようだろう?

「アレクなら先日お会いしているのだから私が行ってくる」

「ではお願いしますね」

オスカルが気軽に席を立ちアレクのいる玄関に出向いていった。

彼は玄関ホールで待っていた。

何やら布をかぶせた籠を持参しているが。

アレクはすぐにオスカルを見つけた。

「おはようございます、オスカル様」

ああ、やはりこの顔を見るとうれしくて懐かしい

本物ではなくとも慰められる気がする。

「おはようアレク、何か御用かな?」

「母からの届け物です、言ってたでしょう、オスカル様にアップルパイをご馳走するって」

「そういえば・・」

そうなのだ、先日トマス伯父のところで奥様のパトリシア様がアップルパイが得意だと話を聞いた。


「イチゴタルトのお礼に次回は私がアップルパイを持参いたしますわ」

「アップルパイ?」

アップルパイはクリスティーヌが得意だといってたな、しかもアンドレが好物なんだ。

「オスカル様、叔母様のアップルパイは美味しいんですよ、クリスティーヌも叔母様から習って上手くなったんですから」

叔母の代わりにロザリーが説明をし、その言葉を聞いてオスカルは思わず反応した。

あのクリスティーヌもパトリシア様に習ったのだと!

「そうか、それは私も習いたいな、パトリシア様、どうか私もその美味しいアップルパイの作り方を教えていただけませんか」

オスカルに見つめられながら願われると断れるわけも無い。

「え、ええ、それはもう、私でよければいつでも・・」

「それはうれしい!是非お願いします」

やった、これで上手くアップルパイが作れるようになればアンドレに食べさせてやるのだ


「オスカル様にアップルパイを教えるのはいずれとして、ともかく一度食べていただきたいと母が朝早くから作っていましたよ」

「私のためにパトリシア様がわざわざ・・」

オスカルはパイが入った籠をアレクから受け取りながら感激してしまった。

「アレク、パイを持ってきてくれてありがとう、良ければ上がっていってくれ、おばあ様も君に会いたがっているだろう」

オスカルはおばあ様とロザリーがいる部屋にアレクを通した。

「まあ、アレク久しぶりね」

「こんにちは、おばあちゃん元気にしてた?」

「ええ、もちろんよ、オスカル様という家族も増えて楽しくやってるのよ」

久しぶりに会う孫との対面に祖母も喜んだ。

「アレク、貴方の婚約者を決める話は進んでいるの?」

「名家の娘を父さんが吟味しているらしい、けど俺としてはまだそんな気になれないけどね」

アレクは気のないそぶりで答えた。

「素敵な娘さんならいいわねえ」

婚約者か、私もアンドレとのきっかけは父上が進めてきたことから始まったのだな。

それが今では、こんなに離れがたい相手になるとは・・・

オスカルが考え事をしているとアレクがオスカルに話しかけてきた。

「オスカル様、ここのバラ園では新種のバラがあると聞いたのだけど、そのバラを見たいので、案内してくれるかな?」

「ああ、かまわないよ」

「では早速行こうか」

すぐに二人は屋敷を出てバラ園に向かった。

「新種のバラを作るなんてアンドレも思い切ったな、今までの種だけを作っていれば失敗することも無いのに」

「新種を作るのはそんなに大変なことなのか?」

「新種を育てるのは手間も時間も食うんだ、まあ、成功すれば喜びも大きいし、バラ園にとっても大きな利益につながるが」

アレクもアンドレと同じく農園主になるのだ、今から経営者として勉強しているらしい。

バラ園につき、オスカルはアレクを新種のバラのある場所に案内していった。

「これが新種のバラか・・」

アレクは感動するように魅入っていた。

「素晴らしく美しいバラばかりだ、見事だね」

そういいながらアレクは真っ直ぐに『オスカル』に向かって歩いていった。

「そしてこれが『オスカル』貴方のバラ?」

アレクは『オスカル』を指差しながら言った。

「どうしてそれを?」『オスカル』を見るのは初めてだといってたのに何故?

「わかりますよ、まさに貴方のイメージだ、アンドレの貴方への想いがわかる」

アレクは『オスカル』をじっと見つめながら言った。

「貴族と平民でも愛し合えるんだな、貴方とアンドレは・・」

「う、うん、まあ、そうだな」

昨日トマス氏の前でアンドレを愛しているといったときにアレクもその横にいたのだ、今思えば恥ずかしくてたまらない。

オスカルはアンドレが自分に捧げてくれた『オスカル』を見つめている様子を見ながらアレクは考えていた。


貴族と平民でもか・・・でもそれは貴方達二人に限っての話だ。

貴族と平民ではあまりにも違う・・だって・・そう、あの人にとって俺はただのバラの配達人にしか過ぎなかった。


この次のお話は「恋しい婚約者殿」の中に挟んだ形で「アレクの恋」が3話ほど続きます。

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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 8

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2017/03/20 (Mon) 16:41

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2017/03/20 (Mon) 21:22

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2017/03/20 (Mon) 22:06

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2017/03/21 (Tue) 00:20

うさぎ

Re: アレクの悩み。。

TM様投稿が出来ない件、納得しました、よく漢字間違える私が言うのも何ですが、漢字ややこしいですね。

今回いよいよアレクの恋です。

彼は最初はオスカル様に惹かれる青年でも良かったのですが、出会いの場面や、アップルパイを持って登場し、バラ園にいくのを書いていくと、少し愛着がわきまして、彼自身のラブストーリーを書いてみたくなりました。

そこで「ショコラのハネムーン」の中の「オルガの涙」と同じで、物語の中に短編を入れる形にしました。

でも、前回と違うのはオルガは映画の中でしたが、今回は実際に目の前にいる男の子のラブストーリー。

ですから、オスカルとアンドレとのつながりに悩みました。

散々悩んで考え付いたのが現在の形です。どんなふうなのかは読んでみていってご判断を~(汗)

オスカル様の悪夢というか、正夢ですよね(笑)

結ばれて最高に盛り上がってて、突然いなくなられたので余計に心配なんですよ(笑)

2017/03/21 (Tue) 16:01

うさぎ

Re: No title

AN様、すみません~、私その人はまったく好みではないので、つなげることはありえないのです~。

アレクとは大和和紀先生の作品の中にいた黒髪の青年です。(かなり昔のですが)

アレクって名前が気に入ったのです、すっきりとしていいなあと思い採用しました。

AN様悲恋を予感しているんですね、そういわれてみれば、アレクの独り言(心の中)聞くとそうですね、失恋してます。

う~ん、それは読んでみて判断ください~(悩)

応援ありがとうございます!

2017/03/21 (Tue) 16:10

うさぎ

Re: No title

N様アップルパイの師匠が出来てオスカル様がぜん張り切っています。

ロザリーの話からいわくありげのアレクでしたが、ここに来てようやく彼の元気の無いわけが明かされます。

書いていくうちに、彼はちょっと面白いな、と興味が出てきて彼自身の物語を書いてしまいました。

アンドレの従弟の彼だからオスカル様みたいな女性が好みって、N様もう想像できていますね。

まさにその通りです!

アンドレが青年に戻って恋するように描きました、楽しんでくだされば幸いです♪

2017/03/21 (Tue) 16:23

うさぎ

Re: 嬉しい♪

MI様そうそう!アップルパイの師匠はパトリシア叔母でした。

これでオスカル様も努力して作れるようになればアンドレの胃袋をつかめます(笑)

アレク、気になってましたか、気にしてくれてうれしいです。

完成度はわかりませんが、散々悩んだんで、出来たときは感無量でした。

最初はもっとさりげない話にするはずが熱がはいったのか、きっちり短編の物語になってるじゃないか!と自分でも驚きでしたが。

ともかく見てやってください。

2017/03/21 (Tue) 16:31