FC2ブログ
うさぎ

恋しい婚約者殿⑬

「アレクの恋 ①」

オディールと出逢ったのは、注文のワインをモンタニエ伯爵の屋敷に届けに行った時だった。

そのお屋敷は、村外れに立っていて、最近までは誰も住んでいなかったのだが、パリから来たモンタニエ伯爵が突然引っ越してきて住み始めたとの噂を聞いていた場所だった。

農園を手伝いに来ていた俺が配達に行くことになり、俺は注文のワインを抱えて屋敷を訪れ、呼び鈴を鳴らした。

すると扉を開けたのは、一人の青年だったんだ。

俺と同じくらいの年かな?

しかし身なりといい、持っている雰囲気といい、まさに身分が高い人だと一目でわかる。

しかもかなりの美青年じゃないか!

「リヴィエール農園のものですが、ワインをお持ちしました」

「こっちだ、入ってくれ」

青年は冷めた表情で俺を屋敷に招きいれた。

俺はワインを抱えて屋敷の中に入っていったが。

中は綺麗に掃除されていて空き家だった頃とは大違いだ。

長い廊下のガラス窓には豪華なカーテンが吊るされ、壁には美しい絵画が、そして細工の施した台の上には値打ちのありそうな壺などが置かれてある。

大広間を通ったときはあまりに豪華なシャンデリアがつるされているのにしばし見蕩れていたと思う。

そして奥の召使のいる部屋に着き、青年はメイドに声をかけた。

「注文のワインを持ってきてくれた、受け取ってくれ」

メイドにワインの受け取りを命じるなど、やはりこの屋敷の息子なんだな、

「わかりました、オディール様」

オディール?女みたいな名前だな?

俺はメイドからワインをどこに置いたらいいかを聞いている間に、オディールは部屋から出て行った。

メイドは俺からワインを受け取りながら話しかけてきた。

「あたし、最近雇われたばかりなんだけど、ここがすごいお屋敷なんでびっくりしたわ」

「しかもオディール様、綺麗でしょう、」

「ああ、そうだな」いくら綺麗でも俺は男には興味は無いんだが

「やはりパリに住んでいた貴族は違うわ、以前はパリに住んでらしたのよ、でもお母様が病気のためにのどかで静かな田舎で住むほうがいいってお医者様に言われて引っ越してきたんだって」

メイドはおしゃべり好きな女で俺にこの家のことをいろいろと教えてくれた。

オディールの父は貴族としての権威を守るためパリに残った。

兄もいたが、もうそれぞれ家庭を持っている、そこで一番下のオディールが母親に付き添いこのルシェル村にやってきたのだ。

「いきなり知り合いもいないこんな田舎町に連れてこられて寂しいでしょうね」

オディールは華やかなパリに住んでいた貴族だった。

冷めているように見えたが、心の中では一人ぼっちの孤独を感じているのだろうか?・・


次にオディールと会ったのはまたモンタニエ伯爵様の屋敷にワインを届けにいったときだった。

呼び鈴を鳴らして、すぐに扉が開いてメイドが出てきた。

「ご苦労様、奥の部屋にまで持っていって頂戴」

メイドに言われたとおり、俺はワインを抱えて屋敷の廊下を歩いていった。

途中にある中庭に眼が行くと、そこにはテーブルが置いてあり、その前の椅子に一人の女性が座っていた。

ゆったりとして着やすいデザインのドレスを着ているが、メイドの服とは明らかに違う高価なもの。

髪には何もつけていないが、輝くような金髪が腰まで垂れ下がっている、それだけでも美しくみえてしまう。

ぼんやりと庭の景色を眺めていて俺には気がついていなかった。

何て綺麗な人だ。

俺は思わず見蕩れてしまいその場に立ち尽くしてしまった。

それに気がついたメイドが声をかけた。

「どうしたのアレク?」

その声に女性ははっと気づき、声のした俺達がいるほうに顔を向けた。

その時、真正面の顔を見たとき驚いてしまった。

その女性は、何とあの先日のオディールだった。

オディールも俺に見られたのが恥ずかしかったのか、急いで立ち上がりすぐにその場を立ち去ってしまった。

「女だったのか?・・」

道理で男にしてはきゃしゃだし、綺麗すぎるはずだ。

「アレク、貴方知らなかったのね」

メイドは俺がオディールを女性だと知らなかったのを知り、またいろいろ教えてくれた。

オディールには3人の兄がいる、最後に生まれたオディールだけが女だった。

母親は身体が弱くて寝たきりが多かったので、オディールは兄達と過ごすことが多く、兄達の真似をしているうちに男の子のように育ってしまったのだという。

しかし、兄達は結婚して長男が家の後を継いだ。

後はオディールが残されているだけ。

だが、いつまでもこの姿のままでいれば求婚者も現れない。

オディールは母親からそろそろ貴方も女性の姿に戻りなさい、

貴族の娘は貴族の令息と結ばれて何不自由なく暮らすのが幸せだと説得された。

最近では求婚者を募るために画家を呼んで絵姿まで書かせているらしい、今日はそのためあの姿だったのだ。

メイドはあの姿を見れば求婚者なんてすぐに集まるでしょうねといった。


確かにそうだろう、あの美しさを見れば誰でも・・

だけど俺は話を聞くうちにオディールが可哀想になった。

もともと女性なのだから、女性らしくなるのは自然なことだが、今まで男の子のように育ってきて突然戻れといわれても心が追いついていかないだろう。

しかもここには誰も彼女を思いやる友達もいないのだから。

俺はその後も屋敷にワインを届けにきてはオディールを見かけた。

俺がワインを持って現れる時間は彼女がここでお茶を飲む時間らしい

いつも庭に置いたテーブルを前に一人座っていた。

オディールの姿は、また男装姿に戻っていた。

メイドが言うにはもうしばらくは、せめて求婚者が現れ、訪れる日までは、この姿でいたいと母に願ったという。

きっとオディールにとってこの姿でいるうちが自由でいられるんだ。


俺が見るあの人はいつも寂しそうだ。


ある日、俺はいつもより少し早めにモンタニエ伯爵の屋敷を訪れた。

メイドにワインを渡して屋敷を出る前に庭園に出て行く。

まだオディールは来ていない、俺は手に持った一輪のバラをテーブルの上に置いていった。

こんなものあの人の慰めになるのかはわからなかったが、彼女のために何かしたい気持ちだった。

それからも俺は屋敷に来てはテーブルの上に一輪のバラを置いて行く。

バラは赤であったりピンクであったり白のときもあった。

この花で少しでも彼女の心が癒されたら・・・そんな気持ちからだった。

バラは次の日には必ず無くなっていた。

もしもオディールがバラを愛でてくれたならうれしいのだが。

あの表情を出さないオディールがこのバラを見て笑顔になってくれたら・・いつの間にかそんな想像さえしてしまう俺がいた。


そしてその日もいつものように屋敷を訪れ、ワインを届けた後バラをテーブルの上において帰ろうとした。

庭に出てテーブルに向かおうとする。

すると・・そこにはオディールが立っているではないか。

バラを手に持っている俺を彼女は見つけ、声をかけた。

「やはり、君だったんだな・・」

スポンサーサイト



うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 10

There are no comments yet.

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/03/21 (Tue) 21:19

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/03/21 (Tue) 23:39

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/03/22 (Wed) 08:03

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/03/22 (Wed) 12:46

-

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

2017/03/22 (Wed) 12:50

うさぎ

Re: No title

AN様どうしてもオスカル様みたいな相手になってしまうんです。

おっしゃるとおり、彼女に似たオスカル様が現在目の前にいて、彼は何を思うのか?

きゃ~、AN様アンドレの嫉妬予感ですか!愛し合っているからこそお互い嫉妬深いし、あるかも・・・


AN様妄想してくれてるんですね、今日は昨日より盛り上がると思いますので、妄想広げてください(笑)

2017/03/22 (Wed) 15:53

うさぎ

Re: テーブルに置かれたバラ

MI様フィルム映像とはクラシックな映画のようなのでしょうね。(白黒かな?)

そうなんですよ、やはりアレクもロマンチスト♪

人知れず一輪のバラを置いて帰る、それもアンドレみたいな彼だったら最高ですね!

MI様が感じてくれたように、まだ恋ともいえない段階の二人。

今日は二人が初めて繋がりを持ちます。

2017/03/22 (Wed) 16:00

うさぎ

Re: アレクの想いの強さは?

TM様こんにちは、「ショコラのハネムーン」での「オルガの涙」知っていてくれてうれしいです。

アレクのお相手もオスカル様と同じ男装の美女、というかやっぱりこんな彼女になってしまうんです~(笑)

TM様の感じているとおり、オスカル様とアンドレは幼い時に出会い、心のつながりを持ち、20年後に再び出会い月日をともにして心を燃え上がらせました。

しかし、今回のアレクは16歳の今出会い、それも短い期間しか接していない。

これって本人にとって恋だという自覚もまだ完璧ではない危うい感情です。

アレクはこの想いを貫けるのか、それとも青春の思い出のひとつにしてしまうのか?

恋にもいろんな形があります、アレクの恋は何処かはかなさのある青年の恋にしたかったです。

今日の一日で二人の心は近づきます。

2017/03/22 (Wed) 16:12

うさぎ

Re: No title

N様、わかりますか!そうなんです、自分が引かれた人とにた境遇のオスカル様。

だからオスカル様を一目で女性だとわかったし、オスカル様に好意的なのも、それが理由のひとつです。(タイプでもあるんでしょう、アンドレ似だから(笑))

アレクもちろん優しいです、今日の彼を見てくれたらよけい思うのではないでしょうか。

N様、貴族や金持ちや権力者は、自分の子供が女であっても軍人にするとか男のように育てるとかはあったようです。(オスカル様ほど完璧にではないけど)

男側も女装していた貴公子達もいるほどで、やはり変わったことがすきなんですね。

2017/03/22 (Wed) 16:23

うさぎ

Re: No title

N様ちゃんとコメント欄に届いてますからご安心を!

2017/03/22 (Wed) 16:24