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うさぎ

偽りの恋人①

クレメンス大学を設立したのはフランスでも指折りの資産家達によるもので、そのため金持ちの子息や令嬢たちが多く入学していた。

しかし、金持ちばかりの学生になれば、この国の自由、平等、博愛の精神に反するとの考えで、学生の半数は中流階級の生徒を受け入れるようにした。

金持ちが作った恵まれた環境の大学に一般市民の生徒も受け入れる、それは一見平等な世界に見えるのだが、事実は違っていた。

上流階級と中流階級がともに学んだところで生まれも育ちも、そして考え方も違っているのだ。

だから、大学の中では二つのグループに別れ互いに交流を持つことはほとんど無かった。


アンドレはそんなクレメンス大学の学生だった。

両親がいなくて、祖母と二人暮らしの彼は、中流階級どころか貧しいくらいだ。

何故そんな彼がクレメンス大学に入学したかというと、この大学は芸術面が優れていて、有名な芸術家を教授に据えたり、専門家が認める規模のコンクールの主催も行なう。

そこで特選となり才能を認められれば学費免除も認められる。

中流階級の学生であってもクレメンスは有名な画家や写真家などのアーティストを多く排出している大学だ。

アンドレは画家を志している学生だ、彼は自分の将来のために恵まれた環境のクレメンスを選んだのだ。

だが、彼は今悩んでいた。

このクレメンスは授業料が高額だ。

それは入学当初からわかってはいたのだが、何とか今までアルバイトをして支払ってきた。

だが、勉強もしなくてはならない、絵も描かねばならない彼はバイトばかりを優先できる生活ではなかった。

そのため、アルバイトの日数を減らさねばならず、給料の額が減ってしまい、結果授業料を滞納することになってしまったのだ。

このまま学費を支払えないと大学を退学せざるを得ない。

祖母に心配をかけたくは無い、ただでさえ苦労してこの大学に進学させてくれたのだ。

大学の入学費用の一切を支払ってくれた上、これまで面倒をみてくれた祖母にこれ以上甘えることなど出来ない。

どうすればいいのか悩むばかりだ。


「アンドレ、何悩んでるんだ?」

友人のベルナールが声をかけてきた。

「ベルナールか・・」

「ベルナールか、とはご挨拶だな心配事があるようだから聞いてやってるのに」

ベルナールは写真家志望の学生だ、芸術の話をする仲間の一人だ。

「聞いてもどうにもならんぞ、金のことだからな」

「それは無理だな、金の無いのはお互い様だ」

その返答にアンドレはため息をついた。

同じ中流階級の学生だ、ベルナールだってぎりぎりで学費を支払っているのだから何ともできないのはわかっている。

そんなとき、同級生のベルがアンドレを呼びに来た。

「アンドレ、貴方をあの方が呼んでるわよ」

「あの方?」

アンドレはベルの指差す方向を見た。

教室の出入り口に一人の女性が立っていた。


何故彼女が俺に?


そこにいたのは、上流層の生徒、しかもクレメンスでもトップクラスの資産家令嬢オスカルだった。

彼女はこのクレメンスを設立した富豪の一人ジャルジェ氏の一人娘。

貴族の血筋を持ち、その上国でも有数の資産家の出、そして誰もが見蕩れるほどの美貌を持つ人

いつも彼女は取りまきに囲まれているため、普通の時では近寄るなど出来ない。

常に成績は上位でその神秘的な美貌と気品で上流層の生徒はもちろん中流層の生徒までも憧れている子がいるカリスマ的存在だったのだ。

アンドレもたまに講義が一緒のときに彼女を目にするのだが、彼女はいつも取り巻きに囲まれて、中流の生徒など近寄ることなど出来ない人だ。

彼女は上流の子達でさえ近寄りがたい特別な何かを持っていた。

その彼女が俺に?

アンドレは不思議に思いながらもオスカルが待つ方向に進んでいった。

「あの、俺に何か用があるとか?」

「ああ、大事な話があるんだ、中庭にでもいって話をしないか?」

真剣な目でアンドレを見つめオスカルは返答した。

いきなり言われて戸惑ったがオスカルはもう中庭へと歩き出していた。

仕方なくアンドレもオスカルの後ろから着いていく羽目に。

クレメンスは庭園のような庭がいくつもある、ちょっとした森のような景色だ。

そこにベンチも設置していて、学生達がくつろぐには最適に作られている。

二人はその中庭を訪れた。

アンドレとしてはオスカルの真意が読めずに来たのだから、戸惑うばかりだ。

そこで知らず知らずのうちに距離をとって歩いていた。

それを見てオスカルはアンドレのほうを振り向き、ふっと笑って話しかけてきた。

「別にとって食おうというんではない、恐れずにここに腰掛けろ」

オスカルは自ら先にベンチに腰掛けてアンドレにも進めた。

アンドレはオスカルの進めに従いベンチに腰掛ける。

するとオスカルは話し始めた。

「話というのはな、アンドレ、君にアルバイトを頼みたいと思ってな」

「アルバイト?」

「そうだ、君を見込んでお願いしたいのだ」

「バイト代ははずむよ」

アンドレとしてはオスカルが何のバイトを自分に紹介しようとしているのか、それも何故自分に?わからないことだらけだ。

「何のバイトだ?」

「バイトというのは、」

「アンドレ君に私の恋人になってほしい」

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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 12

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2017/04/28 (Fri) 12:46

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2017/04/28 (Fri) 17:00

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2017/04/28 (Fri) 18:48

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2017/04/28 (Fri) 18:57

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2017/04/28 (Fri) 20:03

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2017/04/28 (Fri) 22:31

うさぎ

Re: お久しぶりです!

Mi様お久しぶりです。

元気でした!といいたいところだけど、風邪ばっか引いてました。(汗)

物語の進行も悪くて、これ本当に出来上がるのか?もう駄目かも?とか、頭の中に挫折の文字がちらほら出たり・・

な~んにもいい報告がなくて申し訳ないです。

でも、そんな中、何とかまとまった気がするのでアップいたしました。

毎日見に来てくれてたんですね、(感涙)

物語はいきなり偽の恋人になれって唐突な展開ですが、それから面白くなるかが不安要素でもありました。

恋人になるっていっても嘘の恋人とはどうしたらいいのかが。

またよろしくお願いします!

2017/04/29 (Sat) 10:26

うさぎ

Re: タイトルなし

TO様こんにちは、ずっと待っていてくれたのですね、すごくうれしいです♪

(もういくつも書いてるから飽きられる可能性もありますからね)

今回は少し雰囲気を変えて現代物です。

中世物が続いたせいか、現代らしさを出したいのにイメージが抜けなくて困りました。(汗)

2017/04/29 (Sat) 10:32

うさぎ

Re: No title

AN様こんにちは。

このアルバイトはまさにAN様がおっしゃるように偽の恋人を演じるアルバイトです。

今日はオスカル様の事情とアンドレがアルバイトを引き受けるのか?の話です。

飛び切り美人で憧れの彼女が偽りとはいえ、恋人役なんて、こんな良いバイト・・・なのですがアンドレはどう思うか?

AN様の期待に沿える話だといいのですが、どーも盛り上がる話とは思えず、不安ばっか何です実は・・・

2017/04/29 (Sat) 10:38

うさぎ

Re: 待ってました!

M5様こんにちは!

前回のお話の時でもM5様が見に来てくれているような気はしていたんです。

それがあたっていてうれしいです♪

新作を書くとき、いつも苦労するのは、前作のイメージを引きづるんですが、前回の愛しの婚約者殿をふっきるのには苦労しました。


今回の話の先読めませんですか?ならうれしいです♪わかりやすいかなって思ってたから。

多分今日で大体わかると思いますよ。

2017/04/29 (Sat) 10:47

うさぎ

Re: No title

N様、もしかして忙しい時期だから、来られないかも・・と危惧していましたが来てくれたのですね、うれしい♪

N様のいうとおり、すごーいありがたいバイトですが、苦学生のアンドレには荷が重いバイト。

だけど、彼にはお金がいる。

この辺からもう彼女に振り回されてる。

楽しい話になればいいのですが、前回の物語をひきずり、なかなか新作の世界に入り込むのが難しかったです。

2017/04/29 (Sat) 10:54

うさぎ

Re: お待ちしてました

AM様待っていてくれたんですね(嬉)

お仕事の合間の楽しみにしてくれるなど感激です♪


そうそう!いきなりです、恋人になってほしい、などアンドレでなくても驚くわ。

もうAM様のなかでは、先の展開が見えてるようですね。

でも彼女はとびきりの美人であるとともにすごい金持ちなのです。

ということは上手くいくのか?




2017/04/29 (Sat) 10:58