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うさぎ

偽りの恋人21

オスカルはクレメンスの中庭で一人ベンチに腰掛けていた。

待ち合わせの相手は、アンドレではなく、ジェローデルだった。

今日、オスカルは彼に婚約を解消してほしいと告げようと思った。

昨日、ベルナールに言われたとおり、アンドレと付き合ってることはすでに大学で噂が広まっているのだ。

だから、ジェローデルに言うべき時期は来ている。


それはわかっていた。・・

わかっていながら、ずるずると引き延ばしていた。

だって、ジェローデルに告げて婚約を解消されれば、彼はすぐに卒業する身、もう会うことはない。

そしたらアンドレと付き合い続ける理由が無くなる。

今のように恋人のふりなどする必要は無い。

アンドレお前と離れがたくなってしまい、もう少しもう少しと先延ばしにしてきた。

そんなずるい思いにとらわれ今日まで来てしまった。

だが、いつまでもお前をつなぎとめることなど出来ない。

もう偽りの関係は終わりにしなければ。・・


オスカルは緊張しつつ、ジェローデルが来るのを待った。

そして、時間が来て、彼が大学の校舎から出てくるのが見えた。

彼もいささか緊張気味に見える。

オスカルの話が何か予期しているようだ。

「お待たせしたね、オスカル」

「いや、私も先程来たところだ」

「卒論のことで教授と話があっておそくなってしまった・・」

ジェローデルはオスカルの隣に腰掛け、独り言のように言う。

少しの間気まずい空気で沈黙した。

しかしオスカルが先に話をした。

「ジェローデル、君との婚約のことなんだが」

「以前君は言ったね、私に好きな人が出来たら婚約を解消すると」

続いてジェローデルが答えた。

「ああ、言った」

「その言葉は今でも健在だろうか?」

「もし、それが真実ならね」

オスカルはそれならと本題に入った。

「では、ジェローデル私との婚約を解消してほしい」

「私に好きな人が出来たんだ」

ジェローデルは驚きもしなかった。

「それは・・噂のアンドレ?」

やはりジェローデルは知っていた!彼の耳にも噂は届いていたんだな。・・

「そうだ、私は今、彼と付き合っている」

「オスカル、彼と君とでは住む世界が違うよ、それでも?」

ジェローデルのアンドレと自分は違うとの問いにオスカルは興奮気味に答えた。


「彼が上流社会の人ではないから、だからすむ世界が違うと?」

「だから、わかりあえないとでも言うのか?」

「そんなのは金持ちの優越感にしか過ぎない、彼はそれを私に教えてくれた!」



「だが・・・そうだな・・・」

「ジェローデル、私もそうだった、私もアンドレをそんな目で見ていたんだ!」

だからこそ、彼をお金で雇う方法しか思いつかなかったんだ。・・


「私は、彼に学費を援助する変わりに私の偽の恋人になるよう仕向けた!」

「私は君が婚約解消してくれるようにアンドレに芝居をするように頼んだんだ」

オスカルは真実を話そうとした、嘘で固めた話ではなく真実を話しジェローデルに許しを請う気持ちだった。


オスカルの突然の告白にそれまで冷静だったジェローデルの顔色が変わった。

「オスカル・・君はそこまで僕が嫌いだったのか?」

「違う、そうじゃない、むしろ好きだ、君は私に優しくしてくれていい人だ、・・でも愛せないとわかったんだ」

「わかってほしい、私は両親のようになりたくは無かった」

「君だって知ってるだろう?うちの両親は名ばかりの夫婦で愛情などかけらも無い」

「そんな夫婦の間に生まれた私だからこそ、愛情の生まれない結婚はしたくなかった」


「、愛情の無い二人の間に生まれた私だからわかるのだ、本当に愛した人との結婚でなければ幸せにはなれない」

「それは君が不幸せだということ?」

「違う、不幸せなのは私の両親だ」

「あの二人だって愛する人と結ばれれば幸せになれたに違いない」

「それなのに、両親に進められるままに結婚して後悔にさいなまれる日々だ」

「私はあのようにはならない、なりたくは無いんだ」

「では・先程のアンドレのことは?」

「彼は・・・真実私が好きになった人だ、」

「けど、さっき彼とは偽の恋人だと君は言った」

「そうだ、・・私は彼を偽の恋人になってもらってから好きになってしまったんだ」

あまりにも意外なオスカルの話にジェローデルは戸惑どう。

だがオスカルはそのまま語り続けた。

「アンドレは画家になろうと努力する中、おばあ様に苦労かけまいとアルバイトして学費を稼いでいる、そんな苦学生だ」

「それなのに私が高いデート代を支払うのを良しとせず、もし私が支払い続けるのなら礼金を返すとまで言った」

「最初は変なやつだと思っていたが、彼と親しくなるにつれてその訳がわかったよ」

「彼は誰にも頼らず自分の力で生きようとする誇り高い人なのだ」

「自分で努力し、手にした物にこそ値打ちがあるとアンドレは知っていたんだ」

「そのような彼には、高額な服も車も贅沢も必要はないんだ」

「私は、そんな彼に惹かれていった」


「それに比べ私は、両親の愛情の無い結婚を非難する気持ちでいながら、父の財産で贅沢をしていた」

「一人では何も出来ず、ただ両親の生き方を非難するだけでは母と何も変わらない」

「そう気がついたら恥ずかしくなった」

「彼はそのことに気づかせてくれた人だ」

「私に人生の大事なものを教えてくれた」


「ジェローデル、君のことだってそうだ、」

「私は君に嘘偽りなど言わず最初からこうして本音を語るべきだったんだ」

「すまない、ジェローデル、君には本当に申し訳ないと思う」

「それでも私のわがままを聞いてほしい」


ジェローデルはオスカルの真剣な言葉に聞き入っていた。

こんな彼女は初めてだ。

いつも冷めた表情で冷静な彼女が感情をむき出しにして熱く語るなど。

これもアンドレの影響なのか・・・

初めて見たときから美しく誇り高い彼女が好きだった。

いつか心を開き、自分のものになると信じて待った。


だがやはり、オスカルの心は、手に入らないのか・・


「わかった、婚約を解消しよう」

いきなりのジェローデルの快諾の言葉にオスカルははっとした。

「本当に?」

「本当だよ、約束だからね、君が本当に好きな人が出来れば婚約を解消すると僕は言った」

そしてふっと笑った。

「オスカル、優しくなったね」

「え、そ、そうかな?」

「そうだよ、君はもう氷の姫じゃない」

次の瞬間寂しそうな顔をした。

「しかし・・君の氷を溶かす役目は僕でありたかった」

「ジェローデル・・」

彼には申し訳ない気持ちで一杯だ。

最初からこうするべきだった。

彼に真摯に向き合えば、こんなに彼を苦しめることも無かったかもしれない。

何故私はそのことに気づかなかったのだろう。

そしてそれを気づかせてくれたのは。
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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 10

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2017/05/18 (Thu) 18:22

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2017/05/18 (Thu) 23:03

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2017/05/18 (Thu) 23:41

こあさ

あえて捻りが加わるから王道を想像してて「ほぉ!こう来たかぁ🤣」って、楽しめるのですよ。

婚約者はなかなか良いヤツなのでしょうか?
真逆の方向で幾つか妄想致しました。
基本、お嬢様のしあわせを願う人ですから、自分の妄想に「いくらなんでもそれは却下」と言うパターンも考えつきましたよ💦
お嬢様の必死な姿は萌えますね👍
私的には今後のおばあちゃんからも目が離せません。

2017/05/19 (Fri) 08:02

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2017/05/19 (Fri) 10:10

うさぎ

Re: No title

AN様オスカル様の告白は当のアンドレにでなくジェローデルにいう形になりました。

これは今までの自分への反省を込めて、本心をさらけ出すことに決めたのです。

今までと違う自分を見せてわかってもらう、ジェローデルへの贖罪とアンドレを自分と同罪にさせない彼女なりの思いやりです。

今日は彼に愛されないと思い別れを告げる気だった彼女ですが、彼から意外な話を聞かされます。

2017/05/19 (Fri) 16:30

うさぎ

Re: No title

N様オスカル様本当のことをジェローデルに語ることで彼の心を動かしました。

ここまで言われ、しかも他の男性によって変わった彼女を見ると、あきらめるしかないジェローデルでした。

ジェロ様、原作でも一見優男でしたが、意外と男らしかったです。

でもそうなんです、まだ問題は山づみです。

どっちもお互いの気持ちがわかってない。

両方ともふさわしくないと考えてる

オスカル様の家のこと

だからはらはらは続くのですが。

でも、今日は少しうれしい話かもです♪

2017/05/19 (Fri) 16:35

うさぎ

Re: 素敵です…

MI様「素敵です」のタイトルでほっと一安心しました。

内心今回のオスカル様の告白は人から見てどうなんだろう?って考えてました。

相手がジェロ様だし、目的は婚約解消のお願いだし、アンドレのこともいわなくてはいけない、本当のことを告白し、許しを請う。

これらの目的を達しなければいけない。

でもあまりにしつこいと嫌味になる、(特にアンドレのことを言いすぎると嫌味なので、他の理由もからませながら、両親のことなど)

そういうあらゆることをクリアしなければいけない今回の告白はかなり頭を痛めたので、MI様に言われて報われた気持ちです♪

ご心配のオスカル様、アンドレに別れを言うつもりですが、やや意外な展開になります。

2017/05/19 (Fri) 16:43

うさぎ

Re: タイトルなし

KO様私のでも楽しんでもらえてたらうれしいです。

婚約者を疑ってますか?

そういうパターンもあるのでしょうが、ここまで言い切った婚約者ですからこれでお別れです。

それにさらにしつこいと嫌われるだけなので。

お嬢様の庶民講座のテストみたいな回でしたね、皆さんの反応からすればお嬢様よい点数がもらえたようです。

今回頑張ったお嬢様にご褒美?みたいな回です。

2017/05/19 (Fri) 16:50

うさぎ

Re: 自分の意思で!

TM様こんにちは!

ベルナール爆弾の威力すごいです。

でもお陰でオスカル様アンドレへの意識がはっきりしたともいえます。

原作はもっと鈍い人ですが、原作での不満を解消できるのが二次創作のよいところです。

でも、これは別の作品なのだと思ってください。(なら萌えないか(汗))

TM様ジェローデルへの話はタイミングだと思ってたんですか!

でも、それにしては長いなあ、と思いませんでした(笑)

子供でも楽しいともう少しもう少しってなるじゃないですか、あれです。

ジェローデルとの婚約破棄を報告しようとするオスカル様ってのはあたりです。

まだアンドレの本心はオスカル様には見えませんが、それでも今回二人の心が近づくきっかけが出来ます。

2017/05/19 (Fri) 16:57