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アンドレの願い⑫

そこへドアをノックする音が聞こえた。

アンドレがソファーから立ち上がり、扉を開けた。

扉の向こうにはカロリーヌが立っていた「アンドレ、葡萄農園の土地を売ってくださる方が貴方に会いに来ているわ」

「こんな時間に、わかった、すぐに行く、オスカルちょっと行って来る、農園を増やしてもっとワインの出荷量を増やす計画があるんだ」

「ああ、それなら早く行って来るが良い、話が上手くいきますように」オスカルは照れ隠しのため、明るく答えた。

そしてアンドレは部屋から出て行った。

カロリーヌがオスカルに「オスカル様お疲れのところ申し訳ないのですが、お話を聞いていただきたいのです」と真剣な眼差しで言った。

「何だろう話とは?」

「私とアンドレのことです。」

そういってカロリーヌはオスカルを直視しながら話し出した。

「私はアンドレがこちらに来てから一番親しくしています、私達はこの葡萄園を大きくしていこう、と支えあってここまできたのです。」

「そのため、いつしか、心が通い合い、特別な関係になっていきました」

「カロリーヌ、それは・・・」思いもよらぬカロリーヌの告白にオスカルは激しく動揺した。

「お分かりですね、もう私達はただのいとこ同士では無いのです

アンドレは当初悩んでいましたわ、だって彼はあなたのことが忘れられなかったのですから」

「彼が私のことを?違う、そんなはずは無い!」

「知らなかったんですか?彼の気持ちを?貴方は何もお分かりになっていなかったんですのね、そんな人の気持ちもわからない貴方だから、アンドレもあきらめる決心をしたのですわ

かわいそうなアンドレ、あんなに貴方のことを思い続けていたのに」

「ああ、でも貴方が気に病む必要はありませんわ、もう彼は私との将来に向けて歩き出したのですから」

「あなたとの将来?」まさか、アンドレが?

「そうです、アンドレと私は近々婚約するのですから」

婚約!アンドレがこの美しい人と!・・・オスカルは激しいショックを受けた。

「まだ、周囲のものには言っておりません、でもオスカル様はアンドレの幼馴染で初恋の人ですから、知っておいてほしかったんです」

「わかりますね、アンドレの心を悩ますのはおやめください、私はここの皆に信頼されています、彼が領主としてまとめていけるよう取り計らえるのは私しかおりません」

「彼は、もうエドモンド男爵なのです、そしてこの葡萄園の主人で私のパートナーなのです、どうかそっとしておいてくださいませ、

 言いたいことはこれだけです、では、オスカル様失礼します」そういってカロリーヌは一礼をして部屋を出て行った。

オスカルは呆然として、カロリーヌの言葉を頭の中で整理し考えた。


アンドレが私を愛していた?・・・


アンドレがカロリーヌと特別な間柄?・・・


私は長い間アンドレの気持ちを知らず、苦しめていたのか、そのことも知らず私は彼に甘え、頼り切っていた。

多分アンドレは、こんな愚鈍な私に耐え切れず、男爵の誘いに乗ったのだろう、私と離れるために。

そしてここでカロリーヌと出会った、彼女は美しくて魅力的な女性だ、アンドレが惹かれたのも無理はない。

では、私は?・・・

私はアンドレをどう思っている?

私はアンドレを兄とも親友とも想っていたが、実際はどうだったのだ?

彼がいなくなる、と聞いて悲しみで胸が張り裂けそうだった。

彼が馬車に乗っていってしまうとき、私は我慢できずに駆け出した。

彼が手を差し出したとき、彼を取り戻したい、その一心だった。

彼がいれば、何もいらない!ただ、彼を自分のものにしたかった!

私は・・・私は・・彼を・・・愛している。

認められなかったのだ・・・愛していることを・・・

こんな私を彼が見限り、カロリーヌに心惹かれたのも無理は無い話しだ!

許してくれ、アンドレ、長らくお前を傷つけてきたことを。・・・

もう無理なのか?本当にお前はカロリーヌを愛し始めているのか?

お前のきもちが知りたい!教えてくれアンドレ!



オスカルはアンドレの姿を求めて部屋を出て階段を下りていった。

客間からアンドレが土地の買取の相手と丁度出てきたところで、どうやら、交渉が上手く言ったようでどちらも満足げな顔であった。

客を送り出して、オスカルが声をかけようとすると、先にカロリーヌがアンドレに声をかけた。

「おめでとう、交渉は上手く行ったようね」

「ああ、丁度他の商売を始めたばかりで、現金が必要だったらしい、だから早めに金を用意することで同意してくれたよ、君が事前に調べておいてくれたおかげで上手く買い取り出来たよ、ありがとうカロリーヌ」

「彼が商売を始めたものの資金不足で困っているとサロンで伺ったのよ、何処でもおしゃべりな婦人はいるわ」

階下にいた使用人たちが二人を見て、「アンドレ様とカロリーヌ様、こうしてみるとお似合いねえ」「全くだ、仕事でも息がピッタリだもんなあ、」「ねえねえ、二人はご結婚なさるのかしら?」「それはまだ聞いたことが無いが、男爵家にとってそれが一番良いことなんだがね」


これを聞いていたオスカルは絶望的な気持ちになった。

仕事でも私生活でも息がピッタリな二人・・・まさにアンドレはこれで幸せになれるのだ。

自分は、というと女でありながら軍人で女らしさのかけらも無い。

私ではアンドレを幸せに出来ない、何もしてあげられない。

先ほどのキスだって、懐かしさのあまりの行動であったのだろう・・・彼の人生に、もう私は邪魔でしかないのだ。・・・ああ・・・だが・・アンドレ、愛している。

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Posted byうさぎ

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