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うさぎ

最後の恋人⑥

翌朝、目が覚めるとオスカルはいつもの自分のアパルトマンとは違う景色に驚いた。

まるで王朝時代の貴族の部屋のよう。・・

以前住んでいたジャルジェ家での部屋もこんな感じだったがな。

天蓋つきのベッドで眠る贅沢など久しぶりだ。

けど、一番の贅沢は・・

オスカルは横に眠るアンドレをうれしそうに眺めた。

やっぱり、彼・・

じっと見つめていると気がつくものなのか、彼もまた眼を開けた。

「おはよう」

「おはよう、アンドレ」

目覚めたと同時におはようの口付けを交わす。

「今日はおばあ様がいるアパルトマンに行く日だ、早く戻って顔を見せてあげないと」

「たった一日の贅沢だったな、こんな豪華絢爛な部屋の後に、おばあちゃんのいるボロアパルトマンに行かねばならないとはテンションが下がるよ」

ため息をつきながらアンドレは言うが、オスカルにとって、おばあ様に会えることがこのパリ行きでの一番の楽しみだ。

「何を言う!お前の大事なおばあ様だろう、それにおばあ様は私にとっても大事な方だ」

オスカルの愛情のこもった言葉にアンドレは思わず彼女の手を取り口づけをした。

「そうだな・・違いない、おばあちゃんは、俺とお前の大事な人だ」

そして二人は着替えを済ませ、朝食はルームサービスを頼んだ。

せっかくのスイートだ、部屋の中で、ゆっくり二人っきりで朝食を楽しもうとしたのだ。

ボーイがワゴンで運んでくれた朝食はクロワッサンとブリオッシュのパンにハムとソーセージがついたオムレツにサラダとグレープフルーツとイチゴとメロンのフルーツとコーヒー。

二人して向かい合わせのテーブル越しの朝食ははじめてではないが、アンドレにはこんな豪華な部屋での朝食は初めてだ。

まるで中世時代の貴族になったような気分になる。

それに対してオスカルはさすがに馴れていると見えて落ち着いて堂に入ったものだ。

食事している姿もこの豪華な景色に似合っていて溶け込んでいる。

やはり彼女は生まれつき洗練された気品があるのだ。

生きた芸術品のようなオスカル

彼女はこのような華やかな景色がよく似合う。

「どうした?」

いつの間にかアンドレはオスカルをじっと見つめていた。

「いや・・お前はやはり上流社会の人間なんだな」

「この部屋の風景はお前にぴったり似合っていて、俺とは違う・・」

「そんなつまらないこと言ってないで、さっさと朝食を済ませ、おばあ様のとこに行くぞ」

コーヒーカップをガチャンと乱暴においてつい不機嫌そうに言ってしまった。


オスカルはアンドレが自分を身分違いのように言うのがいやだった。

まるで私達は別の世界の人間のようではないか。

こんなに身も心も結ばれた仲なのに時々彼は私を遠くの存在のように言う。


二人はチェックアウトを済ませ、リッツホテルを出て行った。

そしてタクシーに乗り込みおばあ様が住むパリのアパルトマンに向かうのだった。

「おばあ様、元気かな?」

「電話したときは元気そうだったよ、それにベルナール達が時々見に来てくれるんだそうだ」

「ベルナールが?」

「大学時代からやつらを世話してきたから、おばあちゃんには恩を感じているんだろう」

そういえば、クレメンス時代、ベルナールとピエールとジャンがアンドレの家に押しかけてきたときがあったっけ。

あの時でもおばあさまは、みんなに食事を振舞っていたな。


アパルトマン前にタクシーは着き、オスカルとアンドレは車から降りた。

車から降り、久方ぶりに見るこのアパルトマンはアンドレには当然だが、オスカルにとっても我が家同然の懐かしい場所。

早くおばあさまの顔が見たくて急いでエレベーターに乗る。

「懐かしいな、このアパルトマンも」

「そうだな、俺もブランシュ先生の弟子になってから初めての帰還だ」

「お前、それから一度も帰らなかったのか?」

「おばあちゃんの言いつけでね、コンクールに一回でも受賞しない間は戻ってくるなって言われてた」

オスカルはおばあ様らしいと笑った。


二人はエレベーターを降りて祖母の待つアパルトマンの部屋の前まで来てインターホンを押した。

少ししてドアが開き、そこには懐かしい祖母の姿が。

「おばあちゃん、ただいま」

祖母は「おかえり」と言ってアンドレを見て、すぐ横にいるオスカルの姿を見つけた。

「オスカルさん!」

そういったかと思うと祖母はオスカルに抱きついてきた。

「おばあさま、お懐かしい」

抱きついてきた祖母をオスカルも抱きとめていた。

「元気でいたの?たった一人で家を飛び出すなんて、若い娘さんがなんて思い切ったことを・・」

「何で一言相談してくれなかったの?心配したのよ」

アンドレの祖母はオスカルに苦言を言いながらも泣いていた。

「おばあさま、ごめんなさい、ごめんなさい・・」

オスカルも思わず泣いてしまった。

こんなに心配してくれていたんだ。

やはりおばあさまはアンドレと同じく私の大事な人。

そこへ、後ろから男性の声が聞こえた。

「アンドレが戻ったのか?」

その声の主はベルナールだった。

「ベルナール!お前もいたのか?」

「いたのかとはご挨拶だな、おばあちゃんに頼まれて昨日からオスカルの部屋の準備を手伝ってたんだ」

「私の部屋?」

「そうですよ、昨日オスカルさんの部屋を作る準備をしているとベルナールが偶然あたしの様子を見に来てくれて、それで手伝ってもらったのよ」

ベルナールはアンドレが言ったように祖母の様子をちょくちょく見に来ていた。

やはり祖母は誰にでも好かれる偉大な人だった。

「せっかくアンドレが戻ってくるんだから、挨拶して行こうと思ってそのまま泊まって待ってたんだ」

「そうか、それは世話になったな、ありがとう、ベルナール」

「オスカル、久しぶりだな」

「ああ、久しぶりだなベルナール」

彼とはクレメンス時代にここで言葉を交わしただけの仲だが、それでも懐かしい

あの時彼は私とアンドレが契約上の付き合いだと知っていた。

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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 4

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2017/11/30 (Thu) 20:56

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2017/12/01 (Fri) 09:54

うさぎ

Re: No title

AN様こんばんは。

お二人のめくるめく一夜は原作と違って、幸せな未来を描きながら過ぎました。

それも、アンドレ自力での超高級ホテルをサプライズして、一緒にお風呂まで入る強引さ(笑)

アンドレって身分違いでも絶対あきらめないから、かなり男っぽいと思うんです。



2017/12/01 (Fri) 16:44

うさぎ

Re: ベルナールと再会!

TMO様こんにちは。

とうとうおばあさまに再開しました。

「偽り」以来のおばあさまとベルナール登場です。

あの時、何も言わずに去っていったオスカル様だけど、自分になついてくれた、しかも孫が恋していた娘さんです。

おばあさまには、いい思い出しか残していないオスカル様ですから、ずっと心配していたんです。

ベルナールは、う~ん、私は原作のベルナール、やはりアンドレを失明させたのとオスカル様をややこしい立場にした原因の人間だから、あまり好意は持ってませんでしたね、ちょっと偉そうだし(こうして小説に書くといいキャラになるんですが)

身分違いはアンドレの独壇場とはまさの言いえてます。

どんなに見た目お似合いでも悲しいかな身分が違う、それも女性側が身分が高いなんて、男性からすればどれだけきついか。

でも、それを悩むアンドレがまた良いんです♪

多分原作での彼のあの姿に心奪われた女性は数多いかと。・・

今回ベルナールは前回のアンドレの説得によりオスカル様に好意的に接します。

だから、今日の話は別の悩みになります。



2017/12/01 (Fri) 16:58