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うさぎ

アンドレの願い⑮

オスカルは自室に戻ってからも、苦しんだ。

アンドレへの思慕、それを知った直後に父から女に戻り、婿を取れとの命令。

「父上は何をお考えなのだ、私が素直に聞くと思ったのか、誰が女に戻るものか」

「婿か・・・アンドレと最初から貴族同士で出会っていたなら、迷わずお前と結ばれただろう、だが、もう遅い・・・アンドレ・・」

自然と涙が溢れてくる、彼は今頃カロリーヌと、そうして私のことなど忘れていくのか・・・

こうしてアンドレを想うオスカルの夜は長い。


次の日から舞踏会を開く準備で屋敷の奉公人達は忙しく働いていた。

その中にはばあやのマロンも含まれていて、大広間を美しく磨き上げるよう指示したり、ワイン倉から秘蔵のワインを取り出す準備や料理のメニューをシェフと相談するなどで走り回っていた。

将軍はかなり豪華な舞踏会にするつもりらしい、それは、娘に婿を本気で選ばせるつもりだからだ。

しかし当のオスカルは「おのれ、思い通りになるものか」と意地になって反抗し、画策を考えていった。


そうして、ついに舞踏会は開かれた。

貴族という貴族を集め、それも独身の貴族の男子を、オスカルに婿を選ばせるために。

その中にはオスカルの近衛隊時代の部下、ジェローデルもいた。

彼は近衛隊の頃からオスカルに想いを寄せていたのだ。

多くの貴族がジャルジェ家に集まり、後は主役のオスカルが登場するばかりとなった。

「オスカル・フランソワ嬢のお出ましにございます」

その声をきっかけに皆はオスカルが登場するのを待った、今日こそはオスカルのドレス姿を拝めると期待してきたものも少なくは無かった。

しかし、その期待は儚く崩れ去る。

「オスカル様、そのお姿では・・・」

「お待ちください、オスカル様」とばあやの声の後、オスカルが姿を現した。

華やかな軍服姿でまさにこの中の貴公子の中で一番凛々しいいでたちであったのだ。

会場の女性達がオスカルの凛々しさにウットリと見惚れてしまう。

呆然とする貴公子達を他所に、オスカルは、貴族の娘達に次々とダンスに誘う。

「マドモアゼル・ド・ギーヌお相手を」

「私の姉と同じ名だ、美しいジョゼフィーヌ」

「フローラ、花の蜜を少しくださいますか」

ド・ギーヌ、ジョゼフィーヌ、フローラ、ジュヌビエーブ、と次々に相手を変えて会場にいる男達に自分がいかに女性らしくないか見せ付けるように。

そしてジェローデルにも「ジェローデル少佐、今宵はお互い踊りあかさん!」と声をかける始末。

その上、衛兵隊まで呼び寄せていた。

兵隊の制服のまま、駆けつけて舞踏会会場に大勢の兵隊が入場してきた。

「隊長!遅くなりました!」

「本当に俺達にご馳走してくださるんですかぁ」

オスカルは彼らに「おお、来たか!そのまままっすぐに行き、飲み放題食べ放題しても良いぞ、麗しきご婦人方を眺めながらしっちゃかめっちゃか騒いでも良いぞ!」と号令をかけ、舞踏会場は大騒ぎになってしまったのだ。

その隙にオスカルは一人バルコニーに出て、独り言を言った。

「これで、私に求婚しようなどと大それたことを考えるやつは一人もいなくなる」

そこへ、現れたのが元部下のジェローデルであったのだ。

「オスカル様」

「舞踏会はめちゃめちゃだ、しかし私はうれしい、これで貴方に求婚する貴公子は私一人になった、これで貴方は・・・」

「うぬぼれるな!・・・生涯何があっても私は、誰のためにでもドレスは着ん」

しかしジェローデルは真剣な眼差しで「そんな貴方が私には痛々しい・・」

「ほしいと思ったことがあるはずだ、平凡な女性としての幸せ」

「私の胸でよければ、いつでも貴方を受け止める用意がある、胸につかえた悲しみや肩に背負った苦しみをみんな私に預けてみませんか」

「愛しています、美しい方」

彼は何と真剣に私のことを想ってくれていたのだろう、ジェローデルの真摯な態度のオスカルは心打たれた。

ジェローデルはオスカルを引き寄せ、口付けをするため、唇を寄せてきた。

違う・・・私の知っている唇は、私のほしい口付けは・・・

心を偽るなど私には出来ない・・・

「ジェローデル、君が本気なのはわかった、それでも私は貴方の心を受け入れられない・・」そういって彼から身を離し顔を背けた。

「私には愛する人がいる、彼とは結ばれないが、その気持ちを持ったまま、貴方の元に行くことは出来ない!」

「それは、もしかして貴方の従僕であったアンドレのことですか?彼は貴族だということがわかり、エドモンド男爵の後を継ぐため領地に行ったとか聞きましたが」

「そうだ、私は彼を愛している、だが彼には大事な女性が出来た、だから彼とはもう会えない」

「それなら、彼を忘れるまで待ちましょう、愛しているのです、心の底から」

「ありがとう、ジェローデル・・・でも私は彼を忘れることは出来ないだろう」

「いや・・・アンドレを忘れたくないんだ、彼だけを想って生きたい」
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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 2

There are no comments yet.

みか

アンドレが来ないとは予想外でした

オスカルもアンドレも互いのこと想いあいながら苦しんで、、、何だか切ない展開ですね
アンドレは舞踏会に来なかったとは、予想外でした
でも、もしもオスカルが他の男と結婚なんてことになったら、殺してでも渡さないくらい思い詰めてるってことは、、、舞踏会の様子をどこかで見てるのか??とか勝手な妄想が、、、
オスカルも、ジェローデルの真摯な心をわかりながらも、アンドレを忘れるなんてできないときっぱり言い切るところがオスカルらしいですね
この先もどう展開していくのか楽しみにしております

2015/04/07 (Tue) 21:58

うさぎ

みか様へ

みか様のコメントを見て正直焦りました!
もう少し待ってください~!って気持ちです。

みか様、死ぬほど恋焦がれているオスカル様の婿選びにアンドレが出向かないわけないじゃないですか、ただ彼は真面目だから葡萄園の仕事した上で出発して少し遅れたと思ってください。

多分、16話を見れば切なさは解消されますよ。

2015/04/08 (Wed) 01:15