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うさぎ

最後の恋人⑪

朝食が済み、オスカルとアンドレはアパルトマンを出て裏通りの商店街に向かった。

二人にとってここは思い出の場所でもある。

クレメンス時代、何度かデートして楽しんだ場所なのだ。

裏通りにあるため、表通りの店よりも安い値段が立ち並ぶ裏どおり商店街はクレメンスの中流層の学生の良いショッピング場所。

アンドレに教えてもらい、オスカルがすっかり気に入った裏通りだ。

しばらく行くと、アンドレがオスカルに初めて服をプレゼントしてくれた店が見えてきた。

「アンドレ、以前お前と行った店だな」

「そうだ、懐かしいな、お前あの後、気に入ってあの店の服を沢山買ったんだろう?」

「うん、服を30着ほど買ったかな?ジーンズは20本と」

「そんなに買ってたのか?」

「気に入ったのが沢山あったし、毎日着るのだから、取りあえずそれだけ買えば当分持つかなって思ったんだ」

さすがオスカルは金持ちの娘だ、あの当時のオスカルなら、その気になれば店ごと買えただろう。

「しかし、屋敷を出るときは荷物になるので半分も持っていけなかった」

「多分、あれは捨てられてしまったのだろうな返す返すも惜しいことをした」

しかし、今はショップ店員になり倹約を覚えたため、屋敷に置いたままの服が惜しいみたいだ。

またしばらく歩いていくと今度は雑貨屋が見えてきた。

この店は以前アンドレがオスカルにペンダントをプレゼントした店だ。


「アンドレ、このペンダントを買った雑貨屋だ」

オスカルは首にかけたペンダントを指差しアンドレに教えた。

「本当だ、でも少し様変わりしたかな?見ていくか?」

「ああ、そうしよう」

アンドレが言うように模様替えしたようで店の雰囲気はいささか変わっていた。

商品の内容もあの頃とは違うものが多い。

しかし、アンティークのアクセサリーなど変わらず置かれている商品もあった。

「雑貨屋は次々と流行の商品に変えていくから、店の雰囲気が変わるのは良くあることだが、それでもこのような定番の商品は変わらないものだな」

同じ雑貨屋に勤めるオスカルらしい意見だ。

そしてあらためて、この店の定番商品のアンティークアクセサリーを眺めてみる。

「これは、なかなか面白いデザインだな、うちの店でも置くと人気が出るのではないかな?」

やはり店員をやってると売る側の見かたになっていくものらしい。

それでも美しいものを見るのは楽しいと見えて、気に入ったアクセサリーなどは何度も見直していく。

「では、見本に買っておくといい」

アンドレがオスカルが何度も見ているイヤリングを手にした。

「つけてやるよ」

アンドレはオスカルを鏡の前に立たせて後ろから彼女の髪をかきあげ、その耳に飾ってみせる。

「似合っているよ」

「そう・・かな?」

人前でイヤリングをつけてもらうというのはいささか恥ずかしいが、彼の自分に対する気遣いはやはりうれしく思う。

周囲にいる女性客達は、美しい恋人と愛情溢れる優しい彼の様子に見蕩れ、ため息が出るほどだ。


「久しぶりにプレゼントするよ、好きなのを選べよ」

「え、いいのか?じゃあ、お前が選んでくれ」

「そうだな、お前の似合いそうなのは・・」

オスカルに言われアンドレは熱心に探しはじめた。


「これなんかどうかな?」

アンドレはピンクのサファイアピアスを見つけてオスカルに見せた。

「綺麗なピンク色だな、でもピアスか」

オスカルはまだピアスをしたことがない。

二人の様子を見ていた店員が声をかけてきた。

「お眼が高いですね、それはなかなか出回らない人気商品なんですよ」

「それというのも初めてのピアスでこのピンクサファイアをつけたら恋が叶い結ばれる逸話があるんです」

「え、本当に?」

オスカルは驚いて返事をした。

「はい、私が知るだけでも何人も結ばれたカップルがいるんですよ、それにピンクサファイアは恋愛運が強い石で、お二人のような素敵な恋人同士にはピッタリですわ」

「そうか、恋愛運に強いのか」

オスカルはそれを聞いて決めた。

「アンドレ、これにする!」

「ピアスだが、いいのか?」

「ああ、これがいい」

「では、これを」

「ありがとうございます、うちでははじめてのピアスの方にはピアッサーをお付けしていますのでよろしかったらお使いください」

アンドレがレジで料金を支払い、包装されたピアスとピアッサーを受け取った。

店を出ながらアンドレは心配そうにオスカルに聞いた。


「大丈夫か?耳に穴をあけなければならないが」

しかし、オスカルは張り切っていた。

「ああ、それくらい大丈夫だ!」

その後、二人はカフェで昼食を済ませた後、アパルトマンに戻っていった。

「おばあちゃん、ただいま」

「おばあさま、ただいま戻りました」

しかし、祖母の姿はいなかった。

キッチンにもいなくてテーブルのうえに手紙が置いてある。

『友達から電話が来て会うことになったから、オスカルさんと二人で過ごしておくように』

「おばあちゃん、出かけたのか!」

祖母はアンドレがいなくなったのをきっかけに、婦人会に参加したり、友人と遊びに行くようになっていた。


「アンドレ、ちょっと来てくれ!」

ドレッサールームからオスカルが呼ぶ声がする

「何か用か?」

行ってみるとオスカルは消毒液とピアッサーを手にして待っている。

「ピアスをつけるのだが、ホールを開けたいと思う」

「そこでお前に開けてほしい」

ピアスホールを俺に?

オスカルの言葉にアンドレは戸惑った。

「それは・・・大丈夫かな?」

協力してやりたいのは山々だが、オスカルを傷つける行為をするのはアンドレとしては気が進まない。

アンドレの顔を見てオスカルはその真意がわかり再びねだるようにいってみた。

「お前に買ってもらった初めてのピアスの穴をお前自身につけてもらいたいのだが、いやか?」

「しかし・・お前を傷つけるなんて俺には・・」

「お前からのプレゼントにピアスを選んだのは常につけていられるアクセサリーだからだ、ピンクサファイアをつければ私達が結ばれるのを信じていられるし」

「それにピアスホールをお前に開けてもらえれば、お前をもっと身近に感じられる」

オスカルはきっとピンクサファイアをつけるとアンドレを思い出すだろう、けれど彼自身の手で開けてもらえばなおさらそう思えるというのだ。

「そうだな・・・わかった」

アンドレも決意した。

どちらにしてもピアスをつけるにはホールを開ける必要があるのだ、同じ傷をつけるなら俺の手でしてやりたい。

「では座って」

オスカルを鏡の前の椅子に座らせて、消毒液で耳を消毒する。

そして打つ場所にピアッサーを当てて、確かめる。

「いくぞ」

「わかった、一気にやってくれ」

オスカルは眼をつぶって覚悟を決めた。

アンドレも同じ思いだ、しかし躊躇すれば失敗する、失敗すれば余計にオスカルの痛みはひどくなるのだ


アンドレは心の中でごめんと謝ると思い切りピアッサーのボタンを押した。

バチンというような音がして二人とも驚いたが貫通したと感じ、もう一度押すとファーストピアスが耳に通された。

これで綺麗に穴が出来てホールが完成すればピンクサファイアのピアスと交換できるのだ。

「終わったよ、痛くなかったか?」

「うん、思ったよりも痛みは無い、それよりも音のほうが怖かったぞ」

「違いない、この音は俺も怖かったよ、まさかお前の耳にでかい穴をあけたんじゃないかって心配で」


「そしたら、お前に責任とってもらうよ、傷物にされたのだから」

無事終わって安心したせいかお互いに軽口が出た。

しかしオスカルの言葉を聴いてアンドレは突然真剣な顔になった。

「傷物か・・」

「真剣に取るな、冗談だ」

オスカルの言葉も耳に入ってないようにぽつんとアンドレは言った。

「そうなれば・・いいな・・」

「アンドレ?」

「お前を傷物にしたら、お前の両親は、お前を俺にくれるかな?」

「お前を俺にくれるなら、どれだけお前に傷があってもいいんだがな」

彼の自分を想う言葉にオスカルは涙が出るほどうれしかった、だがそれとともに胸も痛んだ。

私があのような家のものでなければ、彼をこんなに悩ますことはないだろうに・・


しかし励ますためにわざと明るく言った。

「何を言ってるんだ、どちらにしても私はお前に面倒を見てもらうつもりなんだからな」

「それに、お前もうとっくに私を世間で言う傷物にしてるではないか」

「そういえばそうだな!」

「そうだ、忘れては困る、一緒に風呂まで入った仲なのに!」

オスカルの励ましの軽口に二人は笑いあった。


しかし、笑った後今度はオスカルが真剣な顔になった。

「アンドレ」

「うん?」

「私は明日、父に会いに行く」

「先日呼び出しがあったんだ、そこでお前とのことを告げようと思う」

オスカルは定期的に父との面談を義務付けられている、それが一人暮らしをする条件なのだ。

いつもは父がトゥールーズの支社に見に来るついでに会っていたのだが、今回はパリにいるゆえ、このパリで会うことになる。


「大丈夫か?俺も一緒に行こうか?」

「いや、父はオファーもなしに人とは会わない、私一人で行くよ」

オスカルはファーストピアスに触れながら決意した。

何とかアンドレのためにも父に求めてもらうよう尽力しなければ

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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 7

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2017/12/05 (Tue) 22:15

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2017/12/06 (Wed) 00:23

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2017/12/06 (Wed) 11:10

うさぎ

Re: No title

AN様なつかしのパリのデートでした、堪能していただき良かったです♪

美しい恋人と優しい彼の姿、実際に見てみたいですね。(写真撮るかもしれない)

ピンクサファイア、調べてみると必ず恋愛運が強くなるってかいています、これだけでもお二人にピッタリ♪

最初は普通にサファイアかなって思いましたが、ちょっと変わったの無いかな、と調べて見つけたのです。

まだピンクサファイアではなくファーストピアスですが、これに触れて父上の行きます!

2017/12/06 (Wed) 16:20

うさぎ

Re: パリの裏通りでの買い物、楽しそう♪

MI様、アクセサリーを選ぶこんな美しい恋人同士の語らいとふれあいを眼にしたらたまりませんよね♪

そーですね、アンドレ、オスカル様のお世話係のようなものだから、文句もいわずについていてくれそう。

一緒に選んでくれて楽しいと思うんです♪

傷物うんぬんの会話は、物事はっきり言うオスカル様らしいです。

世間で言う傷物にされてる、風呂まで入った仲だなんて、いささか女性らしさに欠けますが、アンドレは、そういうところ気にしないし。

これだけきっぱりといわれると納得です♪

しかし、思ってましたがやはりドキドキしますか?私もドキドキしました。

MI様!ピアス経験ありですか!

しかも、出血までして!そりゃ、お母様止めます(汗)

私も若い頃しよーかな、て思いましたが、耳たぶが分厚いんです、これに穴あけると分厚い分痛いのでは!なんて思って度胸が出ませんでした。(だってイヤリングでも長くすると耳が痛くなるんです)

2017/12/06 (Wed) 16:33

うさぎ

Re: 氷の予感:不安な妄想が。。。

TMO様、こんにちは。

デートの最初のほうのジーンズや服を大人買いしたオスカル様の話、以前のオスカル様の感覚と違ってきた様子が伺えると思います。

もうすっかり、一般女性の感覚です。

こうしているとお似合いで素敵なカップルなんですけどね。

しかし、そうです前途は多難なんです、お二人は。

ピアスは素敵でしょう!ずーっとつけていられて、しかも邪魔にならない。

傷物発言、良かったですか?アンドレを励ますつもりでの発言ですが、オスカル様がいうと男同士でお風呂にはいった仲に聞こえるから不思議(笑)

していることは、かなり色っぽい内容なのに(笑)

TMO様の予想どおり氷家族はアンドレと付き合ってることお見通しです。

でも、どこまで本気かはまだ知らないでしょう。(今回知るけど)

TMO様の想像力がすごすぎてびくびくしています、どうか妄想を止めといてください、ばれそうで怖い。

しかも今日は氷父が相手でオスカル様大変なんです。

2017/12/06 (Wed) 16:49

うさぎ

No title

nao様楽しみに待っていてくれたのですね、ありがとうございます。

SSのアンドレかっこいいですか、うれしいですね♪

私も原作のアンドレの時より、SS書くようになってからのほうが、アンドレがかっこよく思えて(何故だろう?)

でも、彼ならこうするだろう、て考えて書いてますからやはりアンドレかっこいいんですよ♪

2017/12/13 (Wed) 16:30