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うさぎ

夜のフェアリー26

ある日のこと オスカルはアンドレの席に近づいて話しかけた。

「アンドレ、今度の休暇のことだがお父様がお前もロアンヌ村に戻るのだから、休暇中は、ジャルジェ家の屋敷で過ごせばいいとおっしゃってるんだ」

「ロアンヌ村のジャルジェ家の屋敷に?」

「家に戻ってもお前一人なんだろう、だったら、屋敷に来て一緒に休暇を過ごさないか?」

今度はロアンヌ村にあるジャルジェ家の屋敷にアンドレを招待したいという話だ

オスカルと一緒に休暇を過ごす約束をしていたのだからありがたい申し出だがアンドレは考え込んだ。

「しかし、俺は母さんの墓参りにいかねばならない、それにお世話になった神父様たちに挨拶も行きたいし」


「それなら一度お前の家に戻って用事が済んでから屋敷に来てはどうだ?」

二人の話を聞きつけてフロレルが話しかけてきた。

「そうか、オスカルのお母様はアンドレと同じロアンヌ村出身だったね、向こうで彼と過ごすのかい?」

「うん、アンドレと約束してるんだ」

オスカルのうれしそうな返事にフロレルは芝居がかかったような大げさな仕草で両手を広げた

「すごいな、アンドレ、とうとうオスカルの屋敷に招待されるなど、君はちゃくちゃくと人生の階段を上り詰めているんだな」

「将来ジャルジェ家当主になるオスカルと昵懇の仲で、父君にも認められたなどアンドレの将来は限りなく明るい」


意味ありげなフロレルの言葉がオスカルには気にさわった。

「フロレル、一体何が言いたいんだ?」

「別に、君の父君に気に入られたのはかなりな幸運だって事さ」

フロレルは冷めた表情で返した。

「僕とアンドレの付き合いにジャルジェ家は関係ないだろう!」

しかし、フロレルは、オスカルに強く言われても動じなかった。

「そうかな、金持ちの家では、誰と付き合うのでも親の許可が要る」

「そして結婚相手だってそうだ」

「僕は休暇の間、父の決めた令嬢と一緒に過ごすよう、両親に言い渡された、僕に婚約を承知させるためだ」

「これではもう観念するしかないな」

フロレルはため息をつきながらあきらめるように言った。

そういえば、フロレルには両親が婚約させたがっている令嬢がいるのだった。

「何故、お前の親はそれほど熱心に婚約を勧めてくるんだ?」

「あちらの家とは取引している仲でね、事業に役立てたいがために、この縁談を進めたいのさ」

「休暇中に計画していた旅行がこれでおじゃんだ、全く世の中ってのは上手くいかない」


「それは残念だったな、お相手の令嬢が君の好みの女性ならいいんだが・・」

アンドレに慰められるように言われフロレルはふっと笑った。

「そうだな・・何度か顔を会わせていれば、好きになれるのかな?」

やはり資産家の家に生まれれば、フロレルのような自由人でも、家のために結婚させられるのが宿命なんだろうか?


「アンドレを認めてもらえてラッキーだったねオスカル」


ポツンとオスカルに言い残してフロレルは珍しく気落ちした様子で席に戻っていった。

フロレルが行ってしまった後にアンドレは改めて思った。

フロレルのいうとおりだ

俺はジャルジェ氏に認めてもらえなければオスカルの友では、いられない・・

「アンドレ・・・フロレルの言ったことなど気にするな」

「僕はたとえお父様に許されなくともお前と離れる気はない」

オスカルのその言葉が何より励ましだ。

アンドレはオスカルを見つめながら髪に触れた。

「俺もお前と離れる気はないよ」


休暇が始まり、二人はロアンヌ村へと向かった。

オスカルはジャルジェ家の車で、アンドレは列車で別々に行って向こうで落ち合う約束をしたのだ。

オスカルの父は仕事があるから数日後にロアンヌに向かうという。

だから、オスカルはばあやと二人でパリから車に乗ってロアンヌに行くのだ。

朝早くから車を飛ばしてロアンヌ村まで向かい、到着は夜遅くについた。

オスカルが車から降りると母が出迎えてくれた。

「いらっしゃいオスカル」

「お母様お久しぶりです」

「マロンさんもいらっしゃい」

「奥様、ご無沙汰しています」

オスカルがオーランドに入学してからはじめての親子の対面だ。

あまりに到着が遅いので妹のイヴリンは眠ってしまったらしい。

屋敷の中に入り母がお茶を入れてくれたのを飲んでほっと落ち着く。

「本当に久しぶりね、懐かしくなるほどだわ」

「はい、オーランドに入学してから、こちらになかなか来れなくなってしまいました」

「いいのよ、だってお勉強を頑張っているのだもの、学年でトップを競う成績なんですってね」

「さすがはオスカルだわ」

母はオスカルが優秀な生徒なことを喜んでいた。

「それと、お友達がこの屋敷に来るとお父様から伺ったわ、休暇中は貴方と一緒にここで過ごすんですって?」

「一体何処のお家のご子息なのかしら?」

母は、アンドレのことを名門学校のオーランドの生徒だからさぞかし名のある家の子息だと考えていた。


「彼はこのロアンヌ村出身で、両親はおりませんが」

「一人暮らしで、ご両親もいない?そんな子がオーランドにどうして?」

オスカルの母は両親のいない彼が何故オーランドで学べるのか不思議に思っていた。

「お母様・・アンドレは優秀さゆえに援助を受けて、オーランドに入ったのです」

「それでは、彼は・・・」

母とすれば意外だった、パリでも名門のジャルジェ家の跡継ぎのオスカルが選んだ友達がよりによって貧しい育ちの男子だったとは。

「そう・・貴方のお友達は名家の令息ではないのね」

いささか、がっかりしたような母の様子にオスカルは心配になった。

「お母様・・・アンドレは大事な僕の友です、大事な客人としてお扱い下さるようお願いします」

オスカルに念を押され、母ははっと気がついた。

「ええ・もちろんよ、貴方が初めてお友達を招待するんですものね」


母はオスカルがジャルジェ家の跡取りとしてふさわしくあってほしいと常に願っている。

ジャルジェ家嫡男の友には、ジャルジェ家に見劣りしない名門の家の子息が似つかわしい。

自分が生んだオスカルが誰よりも優れ、尊敬される嫡男なのだと世間に認められる、それが身分の低い自分がジャルジェ家に誇れる唯一の材料だからだ。

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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 6

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2018/05/10 (Thu) 20:35

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2018/05/11 (Fri) 00:40

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2018/05/11 (Fri) 15:06
うさぎ

うさぎ

Re: No title

AN様こんにちは。

フロレルの話で、いかにオスカル様と自分が違うのか再認識するアンドレでした。

楽しいはずの休日が、母上のアンドレに対する印象が危ういです(汗)

オスカル様は釘をさしておきましたが、どうなるんでしょう。

AN様、イヴリンがアンドレに恋心を・・やはり思いますか、十分ありうること。

今日は、ロアンヌ村のジャルジェ邸でパーティーが行われるとの母上からのお話です。

2018/05/11 (Fri) 17:51
うさぎ

うさぎ

Re: No title

投稿者様。

物語の再開待っていてくれていたんですね、ありがとうございます。

アンドレがジャルジェ氏の支援を受けているという一番最初の問題はクリアできました。

これもお二人の強い絆のおかげかと。・・

そうです、アンドレは同性と思っているオスカル様は本当のことは言えない、これが話をややこしくしているわけで。

でも、だからこそ、いろんな試練を乗り越えていかないとダメなのです。

ジャルジェ氏は全く持ってそのとおりなんですよ(笑)

娘に苦労を強いるなどひどい父親です。

お母様も自分のことばっか考えて現実逃避です。

でもおっしゃるとおり、勝手な人がいるからドラマチックな展開が描けるのですけどね(笑)



2018/05/11 (Fri) 18:00
うさぎ

うさぎ

Re: ジャルママは敵?

TMO様こんにちは。

フロレルの会話から暗雲を感じたのですね。

お二人の良い雰囲気でごまかしてしまったかもしれませんが、お二人の立場は全く違います。

アンドレは両親もいなくて何の後ろ盾もない村の青年。

オスカル様は大金持ちの跡取り息子(実は令嬢)

しかもアンドレからすればオスカル様は男なのですから、よけいに悩むところ・・

オスカル様は、お母様の態度で、自分とアンドレとの立ち居地がいささかわかったようです。

それに対してオスカル様はどのようにしていくでしょう?

ジャルママは・・私原作も含めてですけど、現実で、夢の世界で生きている、そんな気がします。

自分の都合のいい世界で生きる、自分が周りを傷つけていることに気がつかない、全く悪気が無い、そんな人間だと。

原作のジャルママもいつもニコニコしていて、オスカル様が男としてしかも軍人にまでさせられてるのに父上に何も言わず、初めてドレスを着たときも、ニコニコしてたし、ああいう時って母親なら泣くんじゃないのかなあって思いました(初めて泣いたの見た時、この人も泣くんだってほっとしたくらいでした)

山岸涼子先生の「ドリーム」に出てくる丹穂生さんがそういう方です。(この作品好きで何度も見ているうちに、ジャルママはこういう人かもって感じたんです)

TMO様、急に夢から現実に引き戻され、またもや不安におののいていますね。

う~んでも嵐はまだ先・かな?

2018/05/11 (Fri) 18:24