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うさぎ

夜のフェアリー70

週末、アンドレがジャルジェ家に足を運んだ。

呼び鈴を鳴らすと、いつものようにばあやのマロンが扉を開いた。

「こんにちは、マロンさんオスカルはいるかな?」

「いらっしゃいませ、オスカル様はお部屋でお待ちかねですよ」

そのままオスカルの部屋に通される。

「オスカル様、アンドレがいらっしゃいましたよ」

ばあやの声をノックの音でオスカルは扉を急いで開けた。

「きたか、アンドレ」

「ああ、お邪魔するよ」

ばあやが目配せしてオスカルに合図する。

「オスカル様、お茶の準備は出来ております」

「わかった、すぐ部屋まで持ってきてくれ」

「承知しました」

ばあやが出て行き、オスカルはアンドレのほうを振り向いた。

「良く来たな、では、ここに座ってくれ」

オスカルはアンドレを座らせて、自分はばあやが来るのを立って待っていた。

その様子にアンドレが疑問を覚えた。

「何かあるのか?」

アンドレに問われてオスカルはうれしそうに返す。

「うん、すぐにわかる」

ばあやがワゴンを押しながらやってきて、オスカルにどうぞ、と渡し、出て行った。

渡されたワゴンをオスカルはテーブルの側まで押して止めた。

ワゴンの上にはティーセット一式と今日のおやつのスコーンとジャムとクロテッドクリームが用意されている。

オスカルが照れるように両手を前に組む。

「今日は僕が紅茶を入れてやるよ」

「お前が?」

オスカルがお茶を入れるなんて初めてだ。

「そうだ、ばあやに習ったんだ」

そして紅茶を作り始めた。

ティーポットにお湯を注ぎ暖める。

お湯を陶器の入れ物に捨てて、ティーポットに茶葉を人数分入れ、次は人数分のお湯をポットに注ぐ。

すぐに蓋をして3分ほど蒸らす。

蒸らし終えたらふたを開け、スプーンでひと混ぜする。

ティーカップに茶漉しを乗せて、上からまわす様にティーポットから紅茶を注ぐ。

「後はジャムか砂糖のどちらかを選んで入れて飲むだけだ」

オスカルは入れたての紅茶が入ったティーカップをアンドレの前に差し出した。

しかし、アンドレは動かない。

「アンドレ?」

見てみると、アンドレの眼は閉じている。

小さな寝息が聞こえる。

「アンドレ!」

今度は大きな声で呼んだ。

「あ・・・すまない・つい眠ってしまった」

「お前居眠りしていたのか!」

オスカルはショックを受けた。

せっかくアンドレのためにばあやに頼んで紅茶の入れ方を習ったのに!

「お前が入れたのか、いただくよ」

アンドレはカップを手にして角砂糖をひとつ入れてから一口飲んだ。

「うん、美味しくできてる」

しかしオスカルは膨れ面だ。

「こんなの誰が入れても同じだ」

オスカルは憤慨しながら紅茶に角砂糖を三つも入れてスプーンでかき混ぜる。

「そんなことない、お前が入れてくれたというだけで、いつもより美味しく感じる」

「だって、俺のためにばあやさんに習ってくれたんだろう?」

「べ・別にお前のためというわけでは・・」

やはりアンドレにはお見通しなのだ。

オスカルは甘い紅茶をちびちびと飲む。

「お前が俺のために何かしてやろうと考えてくれたなんて、最高にうれしい」

「そのお前のために紅茶を入れる僕の前で居眠りをするのか?」

アンドレの賛辞に快くなっていく自分がいるが、それでも先程の居眠りの言い訳かもしれぬと思い、つい皮肉を言ってしまう

オスカルの皮肉にもめげずにアンドレは申し訳なさそうに返した。

「本当に悪かったよ、最近寝不足なんだ」

「寝不足・・何故だ?」

意外な返事に驚くオスカルだがアンドレは落ち着いて紅茶を飲みながら答える。

「もうすぐ試験があるだろう、そのためだ」

「試験など・・お前はいつも上位の3位には必ず入ってるではないか」

もしかして・昨日屋敷に来るのをためらったのも、試験勉強のため?

アンドレは自主学習を欠かさないがいつも時間を決めてやってたはずだ。

それが寝不足になるほど勉強するとは?


オスカルの問いにアンドレは思いつめた表情で返した。

「それでは意味が無いんだ、1位でないと・ダメだ」


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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 6

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2018/08/14 (Tue) 17:41

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2018/08/14 (Tue) 22:07

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2018/08/15 (Wed) 10:11
うさぎ

うさぎ

Re: No title

AN様こんにちは。

女性ということを隠すオスカル様にとっては、これが精一杯ですが、それでもアンドレのため、と知ればうれしいですよね♪

ばあやもオスカル様に頼まれて女子らしい気持ちが芽生えたことに喜んだでしょう。

居眠りしてしまったアンドレですが、その理由を聞けば感動の嵐です♪

自分のために常に1位をとり続ける努力をしているなんて。

そして、そのアンドレの努力と胸に秘めた決意を聞いてオスカル様もある決意をします。

2018/08/15 (Wed) 12:57
うさぎ

うさぎ

Re: No title

CHI様こんにちは。

せっかくオスカル様が努力して美味しいお茶の入れ方習い、アンドレのために入れたのに居眠りではショックも受けますよね。

ここでプンスカ怒るのがオスカル様の女子度なんです。(笑)

けど、今日はアンドレの決意を聞き、感動の嵐ですが(笑)

そしてさらにアンドレが秘めていた悩みまで聞いてしまい、そこから意外な展開になっていきます。

もうそろそろクライマックスなのです。



2018/08/15 (Wed) 13:05
うさぎ

うさぎ

Re: 健気なアンドレ。。

TMO様こんにちは。

そうそうアンドレ、決してオスカル様と二人きりになり暴走しそうになってるわけではなく(笑)

TMO様の予想通り、ロアンヌ村でのクレアのお茶会で出会ったランスの言葉を鵜呑みにして、そうなるべく努力していたのです。

オスカル様とすれば、そりゃ~気持ちはうれしいです♪(僕のために!ですもん)

TMO様のいうとおり、自分に人生を捧げさせてよいのか?の葛藤はありますが。

ただ、悲しいことに、アンドレにすればここまでなんですよね、出来ることは。

同性だから(?)

アンドレとすればこんな努力をしてもいずれは・・の気持ちもあり、それも全て吐き出していきます。

2018/08/15 (Wed) 13:14