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うさぎ

夜のフェアリー89

オルレアーノ王国第一王子ジョゼフ殿下が屋敷を訪れる日がやってきた。

その日は朝から殿下をお迎えする準備でメイドや使用人は大忙しだった。

掃除は数日前から念入りに行っていたが、それでも手抜かりが無いか、執事のサイラスやばあやが見回りをして行く。

料理も最高のメニューでおもてなしするため、ステファン料理長自らが吟味した最上級の肉や野菜を準備し、もちろんシャンパンも最高級なものを取り揃えた。

屋敷の使用人全員が忙しい中、オスカルは一人自室で静かに殿下が屋敷を訪れるのを待っていた。

椅子に座り、机の上に置かれた一輪挿しの花瓶に生けたバラを眺めている。

鮮やかなオレンジ色の『アレクサンダー』

これは昨日アンドレが緊張しないよう頑張るんだよ、と手渡してくれた。

彼の思いが詰まったバラだ。

服装はスーツを着込み、絹のブラウスに藍色のスカーフタイをリボンに結び、若者らしい正装でお迎えすることにした。

父は部下とともに殿下を飛行場に出迎えに行った。

もうすぐ、高貴な王族の方が訪れ、自分はお相手せねばならない、その緊張で落ち着かない気分だ。

待っている時間は長く、そして短いものだ。

しかしその時間は訪れ、ノックの音がした。

「オスカル様、そろそろお時間です」

ばあやの呼ぶ声が聞こえオスカルは立ち上がった。

「わかった、すぐ行く」

部屋を出て階段を下りる。

そこから見える屋敷の入り口前には使用人やメイドらがいっせいに並んでいる。

皆緊張した顔だ、やはり王族の方を接待するなど初めてだから戸惑っているのだろう。

オスカルは皆の緊張を解くために一人ひとりの顔を見ながら励ますため、話しかけていった。

「みんな、殿下がわが屋敷を訪れることになり、緊張しているだろうが、お客様の世話はいつものとおり同じだ」

「僕など直接お相手するのだから、もう口から心臓が飛び出しそうだ」

本当に口に手を当てて吐きそうなふりをするものだから使用人達は皆笑った。

「今のように笑顔でお迎えしよう、みんな頑張ってくれ、僕も頑張るよ」

明るく励まし皆を安堵させた。

「旦那様がお帰りになりました」

門の番をしていた使用人のバートがジャルジェ氏の帰りを伝えにきた。

皆気持ちを引き締め、背を真っ直ぐに伸ばして再び一直線に並んだ。

やがて車が扉の入り口に止まり、そして車のドアが開いた。

中からはジャルジェ氏とその部下、そして別の車からオルレアーノの人々が降りてくる。

黒服のSPが2名、まず車から降りて、その後王子らしい青年が降りてきた。

その後に初老の男性が降りると、ジャルジェ氏はオルレアーノ国の方々をエスコートしながら屋敷に入ってきた。

屋敷に入ると少し離れた場所にSPを待機させ、王国の方々は、この屋敷の住人に挨拶をするため近づいてきた。

皆いっせいに頭を下げて迎えた。


代表してオスカルが父に声をかける。

「お帰りなさいませ、お父様」

「オルレアーノ国の方々も、良くおいでになられました」

オスカルはうやうやしく頭を下げる。

「今、戻った」

「ジョゼフ殿下、これは私の息子のオスカルです」

「こちらはオルレアーノ王国第一王子、ジョゼフ殿下だ」

オスカルが頭を上げてみると

癖のある銀髪に蒼い瞳の青年が目の前にいた。

「はじめまして、ジャルジェ様のご子息ですね、ジョゼフといいます」

まだ年若いが気品が漂う、まるでミケランジェロの像を思わせる高貴さ

思わず見蕩れてしまいそうな絵になる王子様だ。

「オスカル、早く殿下にご挨拶をしないか」

父に促され、オスカルははっと気がついた。

「し、失礼しました、ジョゼフ殿下、オスカルといいます」

ジョゼフ殿下は握手のため、手を差し出した。

「よろしくお願いします」

オスカルは急いで自らも手を出すと、握手した。

殿下はオスカルをじっと見つめて

「とてもお美しい方ですね」

「え?そ・そんな・殿下こそ・・僕は・・殿下こそあまりに見目麗しい方なので見蕩れてしまいました」

ジョゼフはそれを聞いてにこりとした。

使用人とメイドたちは美青年二人を前にし、ほうっとため息を吐く。

父はもう一人年配の男性を紹介した。

「そしてこちらは、メルシー伯爵様だ、ジョゼフ殿下を補佐する役目で来られた」

「よろしく、オスカル殿」

「はじめまして、よろしくお願いします、メルシー伯爵様」

メルシー伯爵とも握手をし、紹介を終えた。

「メルシー伯殿、息子は殿下と年が近いので話しやすいのではないでしょうか?」

「ですから、屋敷でお困りのことがあれば息子になんなりとお言いつけください」

「それはありがたいお申し出です、ご子息が殿下と仲良くしていただければ、こちらとしても安心です」

「では、よろしくお願いします、オスカル様」

「こちらこそ、お願いいたします、ジョゼフ殿下」


それから殿下とメルシー伯は執事のサイラスによって各準備された部屋に通された。

殿下が階段を登った後、メイドたちはざわめいた。

「ねえねえ、オスカル様とジョゼフ殿下、お二人並ぶと・・なんて綺麗」

「私も、思ったわ、まるで神話の世界の人たちのよう・・」

「オスカル様と変わらぬほどの美青年が、あのようにいるのね」

メイドたちが美青年二人の話に夢中なのでマロンは大声で注意する。

「貴方達、何をぼうっとしてるの?やることは五万とあるのよ、さあさ、急いで働いて」

オスカルはというと自分の部屋に戻っていった。

部屋にたどり着き、扉をしめる。

ベッドの側まで来ると、そのまま倒れこんだ。

ふぅーっと緊張を解く。

とりあえず殿下との初対面の場は終わった。


それにしても、殿下があのような美青年だとは

しかも、彼の堂々としたあの態度はどうだ、とても10代の若者とは思えない落ち着きぶりだ。

そして彼の瞳は理知の光を宿している。

あれが王になるものの眼か・・・

オスカルは机の上のバラに目を向ける。

バラは凜として咲き誇っていた。

寝台から起き上がり、机の側まで来た。

花瓶からバラを取り出し、その花に口づけをする。

アンドレ・・・


年若く王となり次々と戦果を挙げヨーロッパのほぼ全部を支配した偉大な王

『アレクサンダー』・か

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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 4

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2018/10/31 (Wed) 20:56

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2018/11/01 (Thu) 07:28
うさぎ

うさぎ

Re: No title

AN様こんにちは。

いよいよジョゼフ殿下登場しました。

お二人の出会いは、お互い好印象ですが、今後どうなるのでしょうか?

オスカル様はどうやらジョゼフ殿下が以前の自分と似ていると見ました。

見蕩れるほど美しく聡明なのに、皮肉にも孤独に育ち、責務を負わされる人生のお二人。

しかし、ジョゼフ殿下の意外な素顔を見てオスカル様は心を動かしました。

2018/11/01 (Thu) 17:08
うさぎ

うさぎ

Re: よろめき禁止!(笑)

TMO様こんにちは。

もう心配してますね(笑)

うーん、オスカル様のこれまでの環境は微妙ですね。

社交界にデビューしてるとはいえ、屋敷でだけ暮らしていたため、頻繁には出ていないのです。

女だとばれないため、他人と親しくすることをせずに来たオスカル様は孤独で、ある程度虚勢をはるしか無い生き方でした。

女の子達からは美貌と家柄で憧れられますが、男子からは興味本位で見られ、表立っては言われませんが、親の威を借りる偉そうなやつと取るものもいますでしょう。

ジョゼフ殿下との出会いはある意味衝撃だったのです。

自分と変わらぬほどの美貌と知性に溢れ、それなのに孤独に生きてきた殿下。

しかも、国という大きな責務を負わされている。

自分と同じ匂いと、もしかして自分よりも孤独を持っているのかもとの予感もあるのです。

TMO様、今から心配は早いですよ、まだ何も始まっていません、あ、でも今日はまた心配させてしまうかも?(笑)

だってオスカル様、ジョゼフ殿下と少し心を通わせてしまうのです。

2018/11/01 (Thu) 17:22