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うさぎ

夜のフェアリー156

ル・アーブル海岸は、シーズン中ではないせいか、海辺にいる人の数はまばらで、離れた場所にカップルが点在しているだけだ

ル・アーブルの海は、水温が低く水が冷たいので泳ぐ人もいない

海と空だけの景色を恋人達は片寄せあって眺めている。

二人だけの時間を楽しむかのように周りなど気にしていない様子だ。

そこでオスカルとアンドレも他の恋人達のように、浜辺を二人して歩いた。

砂浜に足を取られぬようにゆっくりと歩く。

潮風が寒いくらい吹き付けるが、それを理由にアンドレが肩を抱く。

「寒くないか?上着をかそうか?」

「お前が風除けになってくれているから平気だ」

「そうか、寒かったら言えよ」

「うん、あ!向こうから船が見えるぞ」

地平線の向こうから船がやってくるのが見えた。

「ああ、あれは貨物船だよ」

「ル・アーブルはフランス最大のコンテナ港だから、貨物船がしょっちゅう行き来してるんだ」

「ほら、向こうに荷物を運び出すクレーンがいくつも立ってるだろう」

アンドレが指差す向こうには言ったとおり、巨大なクレーンが立ち並んでいた

「あれで運搬車に乗せて世界中に海上輸送するんだ」

「良く知ってるのだな」

「知っているってほどじゃないけど、ル・アーブルは両親に連れられてきたことがある」

「実は俺の父さんはル・アーブルで船乗りをやってたんだ」

それははじめて聞くアンドレの父の話だ。

「お前の父は、ロアンヌ村のバラ農園で働いていたのではないのか?」

「そうだが・・父さんは母さんと出会うまでは海で働く男だったんだ」

アンドレは父と母のなり染めを話し出した。

「母さんがル・アーブルに観光に訪れ、そこで父さんと知り合ったんだ」

「二人は付き合うようになって、そのうち父さんは母さんに結婚を申し込んだ」

「そのときのプロポーズで、「もし結婚を受けてくれるのなら俺は船を下りる、君に寂しい想いはさせない」って言ったらしい」

「父さんは船の仕事にやりがいを感じていたけど、母さんに出会って、船に乗るよりも彼女の傍にいたくなったんだって・・・」

「二人は結婚して、父さんは母さんのふるさとのロアンヌ村でバラ職人として一から働くようになった」

「そして俺が生まれて、家族三人になって、貧しかったけど平和で幸せだったと思う」

「俺の記憶の中の父さんと母さんは、二人してバラ園で働いて、一緒に暮らして、いつも笑顔だった」

「それなのに・・・」

そこまで言うとアンドレは言葉に詰まった。

「どうかしたのか?」

「いや・・・なんでもない」

オスカルに心配されてアンドレは気を取り直し再び話し始めた。

「俺が8歳の時だったな、父さんが流行病で亡くなったのは・・・」

そうだった・・アンドレのお父様は早くにお亡くなりになられたのだ。

「皮肉だよな、危険な仕事から身を引いたのに病気で死ぬなんて・・」

「母さんは毎日泣いて悲しんだ・・・けど俺がいるからいつまでも泣いてはいられなかったんだろう、そのうち必死で働き出した」

「それからだよ、俺に勉強を頑張るよう言い始めたのは」

「父さんにろくな治療を受けさせてやれなかったのを苦にしていたし、俺が金に困らないように母さんなりに考えたんだ」

「その結果母さんも死んでしまったが・・・」

アンドレにとって両親の話はどうしても悲しくなる

「だが、お母様がお前に勉強を進めたおかげで僕達はこうして一緒にいられる」

「僕はお前のお母様に感謝しているぞ」

オスカルはアンドレの腕をぎゅっと捕まえた。

そのしぐさにアンドレは明るい顔になって返答した。

「そうだな、母さんがお前と出会えるよう天国で画策してくれたのかもな」

「きっと、そうだ」

何とか笑顔を見せたアンドレにオスカルは、ほっとした。

「オスカル・・俺、本当は母さんが亡くなったとき、船に乗ろうかと考えていたんだ」

アンドレが・・船員に?

そんな話ははじめて聞いた・・・

「あのままおじさんの家にやっかいになっても迷惑だったろうし、それなら船に乗ってきままに暮らすのもいいかなって・・」

「毎日海の景色を眺めて暮らすのも悪くは無い、俺みたいな孤独なやつにはお似合いな仕事だしな」

アンドレは海の向こうの貨物船に眼を向けた。

「ジャルジェ様の援助の話が無ければ俺は今頃海の上だったかもしれない」

その横顔ははるか遠くを見ているようで、オスカルにはアンドレがいなくなってしまいそうに思えた。

次の瞬間足が止まり、無言で突っ立ってしまった。

アンドレが後ろを振り向くと、いきなりオスカルが抱きついてきた。

「オスカル?どうした」

しがみついてきたオスカルは不安そうな顔をアンドレに向けた。

「お前が・・このままどこかに行ってしまいそうで・・」

アンドレにしてみれば何故オスカルがそう思うのかわけがわからない

「馬鹿な!?」

「俺がお前の前から去っていくわけ無いだろう?」

アンドレが抱きしめてくれてもオスカルの不安は収まるところを知らない

「アンドレ・・・僕をおいて何処へも行かないか?」

「行かないよ、ずっとお前の傍にいる」

「本当だな・・僕を一人にしない?」

「一人になんてさせない・・お前を・愛しているんだ」

アンドレの愛情こめた返答でオスカルは何とか落ち着いていく

彼の胸に身を預け、ぬくもりを確かめる。

そして上を向き静かに眼を閉じるとアンドレは唇を重ねてきた。

ああ・・・アンドレ

僕の心を満たすのはお前の愛だけ

アンドレがいなくなると思っただけで目の前が真っ暗になった。

いつの間に僕はこんな臆病者になったのだろう

お前が傍にいないと、僕は・・・
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うさぎ
Posted byうさぎ

Comments 4

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2019/07/20 (Sat) 18:06
うさぎ

うさぎ

Re: お久しぶりです

M様お久しぶりです♪

夜のフェアリー確かに長いです。

最近のは長いので、面倒かもしれないですね、私もいいシーンだけ書ければ楽だと思いますもん。

でもお話はつじつまあわせが必要だから、どーしてもね(汗)

もっと単純な話書こうかな♪

しかし、そうですか、ガラケーはだんだんと見れなくなってきたんですか!(私はパソコンでしか開いたことが無いので知りませんでした)

それは不便ですね、何か見れる方法はないのかな?

2019/07/20 (Sat) 18:21

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2019/07/21 (Sun) 17:45
うさぎ

うさぎ

Re: いつも素敵な作品ありがとうございます。

CHI様お久しぶりです♪

本当に夜のフェアリー長いんです、そろそろ終えたいのですが、なかなか行き着きません(汗)

今回のお話は本題に入ります、アンドレの将来、オスカル様の女性に戻す話、父の思惑、今回でかなり進むはずなのです。

アンドレはオスカル様一筋だけど、いつも周囲が邪魔するといいますか・・・

今年は冷夏のため、スイカもきゅうりもあまり美味しくないですね(残念)

でもそのせいか身体は元気でいます、ご心配ありがとうございます♪

2019/07/22 (Mon) 17:00