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うさぎ

夜のフェアリー177

次の日からアンドレはジャルジェバラ農園で働くようになった。

カール氏からは、ジャルジェ様からの紹介でしばらく手伝ってくれる方だと従業員達には伝えられた。

アンドレは一人ひとりにはじめましてよろしくお願いしますと挨拶をしていくと、従業員達は、こちらこそよろしくお願いしますと皆深ぶかと頭を下げる。

ジャルジェ様直々の紹介で、いずれこの農園の経営を任されるとの噂が広がり皆緊張している顔色だ。

「では、私は事務所に行くが、アンドレ、君はどうする?」

カール氏に言われアンドレは少し考えてから答えた。

「バラの世話は午前中が大事ですから、まず現場の仕事をさせてください、事務所の仕事は午後からお願いします」

「そうか、わかった」カール氏は事務所へと去っていった。

園の仕事が始まり、作業員達はそれぞれの持ち場へと行く。

アンドレは、自分は何処を手伝えばよいのか聞くと、恐縮しながら では水遣りを手伝っていただけますか?といわれ、もちろんといって手伝う。

しかし、終われば、ありがとうございます、もう十分ですから、といってさっさと虫を除去する作業に移ろうとする。

「俺もやらせてください」

「とんでもない、害虫駆除する作業など、偉い学生さんにやらせるわけにはいきませんよ」

「これは私どもの仕事ですから、貴方様は事務所のお仕事でもお手伝いください」

その態度はアンドレは金持ちの子息だから、現場の仕事などはさせられないといってるようだ。

実はアンドレは昨日カール氏に言われていた。

君の両親はバラ農園の作業員で君自身も働いていたのは良くわかった。
しかし、ここで働く人たちにそのことは言わないほうが良い。

なぜなら、このジャルジェバラ農園のバラ職人達はそれぞれが別の農園で働いていたものたちばかりだ。

ジャルジェ様は腕の立つバラ職人達を集めてここを作られたのだ。
だから、作業員とはいえ、それなりのプライドを持っている。

パリでも有名な資産家のジャルジェ家所有のバラ農園だからここへ来た。
それなのに、いくらオーランド校の秀才とはいえ、両親もおらず、名家の出でもない君が自分達のボスになるなど、いい気はしないだろう。

私の場合、大学までは行っていないが、パリの学校を出て、その後バラ農園で働いていた、ごく普通の事務員だったが、地主に気に入られてその娘と結婚した。

そのおかげで責任者に任命されたときは、同僚からは当然のことのように見られたし、職人達も素直に従ってくれた。

実績もあり、妻の父親が後ろ盾にいるからこそ、皆認めてくれたんだ。

君はジャルジェ様に認められているが、家柄や地位が無い、実力も、まだ未知数の若者だ。
いずれ実力を認められれば信頼関係も築けるのだろうが今は、生まれや育ちを伏せておいたほうがいい。

アンドレはカール氏の話を聞いて、地位を重んじるのは上流社会だけではないのだと痛感した。


しかし、現場で特別扱いされるのも不自由なものだ。

とりあえず、今日は事務所の仕事を手伝わせてもらって、カールさんに頼んで現場仕事も手伝わせてもらえるようお願いしてもらうか・・

アンドレは事務所に行き、カール氏に事の次第を説明した。

「なるほど、それは私の配慮が足りなかったな」
「私から皆に上手く伝えておくよ」

「お願いしますカールさん」

「ともかく、今日はもう職人達も仕事で忙しいだろうから、事務所の仕事を手伝ってくれたまえ」

「はい、わかりました」

その後は伝票整理や、書類確認などの仕事をこなし、時間が経っていった。
そして昼食の時間になろうかという頃 事務所に誰か来た。

「こんにちは、お邪魔します」

「イヴリンさんじゃないですか!」

カール氏や他の事務員達がイブリンの登場に驚いた。

「アンドレは?」

「ああ、そこで書類作業を手伝ってもらってますよ」

アンドレを見つけイヴリンは側に行った。

「やあ、イヴリン何か用でも?」

「もうすぐお昼の時間よ、お弁当を持ってきたのよ」

イヴリンはバスケットを持参していた。

「わざわざ作ってもって来てくれたのか?」

「ここら辺はパリみたいにあちこちカフェがあるわけではないのよ、お母様がアンドレに持っていってあげなさいって」

「それは、申し訳なかったね」

昼食の心配までさせて、アンドレは恐縮した。

「それと・オスカルから手紙が来ていたわよ」

イヴリンはスカートのポケットから一通の手紙を差し出した。

「オスカルから!」

「本当にオスカルと貴方は仲がいいのね、友人同士で手紙のやり取りなんて」

「俺がここで上手くやれるかオスカルは気にしてくれてたんだ」

イヴリンから手紙を受け取ると急いで上着のポケットに入れた。

「丁度お昼だ、アンドレ、食堂へ行くかい?」

カール氏が食堂に誘うが、アンドレは窓の外に木陰でお弁当を食べる人たちを見つけた。

「カールさん、外で食べてもよろしいですか?」

「ああ、それはかまわんよ」

「それでは、失礼します、イヴリン弁当をありがとう」

アンドレは席を立つなり急いで弁当入りのバスケットを手に持ち事務所から出て行った。
あまりに急いで出て行ってしまったアンドレにカール氏もイヴリンも呆然とした。

アンドレは外に出て誰もいない木陰を探した。

草むらが生えて斜面になっている場所が丁度よさそうだ。
そこに腰掛けて、足元にバスケットを置き、急いで上着のポケットに入ったオスカルからの手紙を取り出した。

こんなに早く手紙が来るなんて
手紙を開ける作業ももどかしいくらいだ。


アンドレ、この手紙が付く頃にはお前はロアンヌ村についているだろうな。

あまりにも早いと笑わないでほしい
だって、お前にどうしても聞いてほしいんだ。

今日はおじいさまとゆっくりお話をした。
僕が幼い頃からおじいさまはお忙しかったから、こんなにゆっくり話したのは初めてかもしれない。

おじいさまもやっと長年の苦労から開放された気分になられて僕のオーランドでの学校生活の話を聞いてきたんだ。
その中で僕はお前がもっとも信頼する友だと話した。

最初おじいさまは、僕にそのような友が出来たことを喜んでくれたのだけれど、お前に両親がおらず、援助されてオーランドに来ているのを知ったとたんに残念がられた。

怒らないでほしい、おじいさまにすれば、お前が優秀な若者であることはうれしかったのだが、資産家の息子であれば尚良かったのにとの思いだ。

それは資産家がオーランドに来る目的は有名大学への進学率の高さだが、それ意外に資産家同士の仲を深めるのも大きな目的なんだ。

資産家同士親しくなれば、いずれ家を継いだときに何かと役に立つ。

人としての資質よりも家柄や資産で友人を選ぶのは僕としては到底納得がいかないが、ジャルジェ家を発展させるのが使命とするおじいさまには、この考えはどうしても譲れないと見える。

だけど、僕はこの機会におじいさまにお前がどれほど僕にとって大事な人だか、伝えようと思う。

家柄や資産がなくとも、それ以上のものをお前は僕に与えてくれるんだって知ってもらう努力をするよ。
今回おじいさまの健康を取り戻していただくため、パリに残ったが、その他にも目標が出来た気持ちだ。

そのことをお前に伝えたかった。

いつもお前が側にいて聞いてくれるのだが、今は仕方ないから、手紙で我慢しておいてやる。

だから、一日も早く帰ってきて


「オスカルのやつ・・・」

アンドレはふっと笑ってしまう

オスカルの手紙にアンドレの心は晴れやかになっていく。


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