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うさぎ

夜のフェアリー181

アンドレはロアンヌ村のジャルジェバラ農園で忙しい毎日を送っていた。

朝早くからバラ農園に向かい、仕事の準備をしてから、作業員達と同じように農園の仕事にかかる。
午後からは事務所の仕事の手伝い、帳簿や伝票整理や書類の確認など、アンドレは短い期間に全てのことを把握しようと努めていた。

「アンドレ、エルナー家への注文請書を作成してくれないか」

「先ほど作っておきました」

「アンドレ、バラの肥料は届いているかな?」

「今朝方届きましたので、肥料小屋に運び込んでおきました」

アンドレはバラ作りだけでなく、事務所での仕事も手抜かり無く出来る若者なので、カール氏もバラ職人達も彼を重宝するようになっていった。

誰よりも早く来て、遅くまで仕事する

今日もバラ農園の仕事が終わり、帰ろうとする。

「では、これで帰らせていただきます」

「ああ、お疲れさん」

「アンドレさん、また明日」

「はい、また明日よろしくお願いします」

日々を重ねるうちに農園の人々に受け入れられていくのがわかりほっとする。

最初はオーランドの世間知らずの若者としか見てはくれなかったが、今では頼りにされている風でもある
しかし、そこまで来たのはアンドレの並々ならぬ努力の賜物だ

アンドレはロアンヌ村に来てから緊張の連続の毎日を送っているのだ。

ジャルジェ家につくと、いつものようにイヴリンが迎えてくれた。

「アンドレ、お帰りなさい」

「ただいま、イヴリン」

いつも出迎えてくれなくてもいいというのだが、イヴリンは出迎えたいの、という。

「疲れたでしょう、着替えたら、すぐに夕食よ」

「わかった、また後で」

アンドレが自室に行こうとしたとき急いでイヴリンが呼び止めた。

「それから・手紙が来てたわよ」

「テーブルの上においておいたわ」

アンドレは手紙の言葉に反応して階段を上る途中で足を止めた。

もしかして・・オスカルから?

「そうか・・ありがとう」

軽く返答し、再び階段を上っていった。

自室に入り、すぐにテーブルの上に眼をやる。

やはりオスカルからだ。


アンドレ元気でいるか?

お前からの返事が待ちきれなくて、また手紙を書いてしまった。

またもやお前に聞いてほしい話があるんだ。

お前と一緒に育てたバラをおじいさまにお見せするために、何鉢かジャルジェ家に運んだろう?

あのバラたちが見事に咲いたので、いよいよおじいさまにお見せしたんだ。

バラの名前と特徴を説明しながらお見せしたら、おじいさまはすっかり気に入ってくださった。

これまでバラなど熱心に眺めたことなど無い人だったから、バラとはこんなにも美しいのかといまさらだが、認識したようだ。

僕もおじいさまにバラの花を見せながら、この花はお前と一緒に育てたんだよな、と改めて思い出してしまった

温室の中バラに囲まれてお前と二人きりで過ごす時間は僕にとって何よりも大事な時だ

そこでいつの間にかおじいさまに僕にとってお前がいかに大事な存在かを熱弁してしまっていた。

今思うと僕はいらだってたのだと思う。

お前は誰より優れているのに、たかが資産や地位がないからといって軽んじられることに納得がいかなかったのだ。

わかってもらえるとは期待していなかった。

なのに・驚くことにおじいさまはお前を認める発言をしてくれた。

お前に会ってみたいと

お前は僕に恩恵をもたらしてくれる良い友だなのだろうと

あの、ジャルジェ家を発展させることのみに使命を感じていたおじいさまが僕達の仲を認めてくれたんだ。

もちろん友としてだけれど、それでも僕はお前という人間を見ていこうとしたおじいさまの気持ちがうれしかった。

アンドレ、人の気持ちは変わる。

きっと、いつか誰もが僕達二人の仲を認めてくれる、今僕はそう信じられるんだ。

アンドレは手紙を握ったまま、感動に打ち震えた。

気持ちはオスカルと同じ喜びに包まれた。

オスカルのおじいさんが俺をオスカルの友と認めてくれた。

それが友という形であろうと、オスカルにまた一歩近づいた気がした。

喜びのまま返事を書こうと机に向かおうとした。

しかし、そのとき部屋の扉をノックする音が

「アンドレ、まだなの?お夕食が冷めるわよ」

部屋までイヴリンが呼びに来たのだ。

「あ・今すぐに行くよ」

アンドレは急いで手紙を机の引き出しに入れ、心に思う。

オスカル、もうすぐ帰る、待っていてくれ
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