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うさぎ

夜のフェアリー182

オスカルは祖父の部屋で話をしていた。

祖父はオスカルと過ごすようになり、やや多弁になって、昔の話を聞かせるようになっていた。

それも若い頃の楽しかった時期の話が多く、今日は妻ミレイユとの話が出てきた。

「妻は社交界の花だった、年頃の女性は皆美しいものだが、その中でもミレイユは特別美しくてな、社交界の独身の男性は皆彼女を狙ってたものだ」

「おばあさまが、そんな素晴らしい方だとは、おじいさまは、どうやっておばあさまを射止められたんですか?」

オスカルは祖父が並み居るライバル達から祖母をどうやって勝ち取ったのかワクワクしながら聞いた。

しかし祖父の返答は意外なもので

「私達は、互いの両親が決めた婚約者だった」

「両親が、決めた?」

「そうだ、残念ながら物語のようなロマンのある結婚ではなかったよ」

「い・いえそんな・・・」

だが意外だ、祖父の話しぶりからすれば、祖母への愛情が感じられる。

「今は、婚約者を決めるのに本人の意見も考慮するのだろうが、当時は親が決めた婚約者との結婚が当たり前の時代だったからな」
「私とミレイユもそれを当然と受け止めていた」

そして自嘲気味に笑った。

「それに親が決めた相手でなければ、ミレイユのような素晴らしい女性と結婚するなど叶わなかっただろう」
「輝く金髪に蒼い瞳が印象的で、私は彼女に会うたびに胸が高まった」
「私達は、会うほどに愛情が芽生えた、そして結婚してからは、互いを必要な相手だと認識するようになっていった」

「親が決めた相手でも愛する人と出会うことはある、私とミレイユがそうだったように」
「彼女は美しいだけではなく社交性にも優れていて、私の仕事のサポートも出来る理想の相手だった」

「もしも彼女が男性に生まれていれば、私など足元にも及ばないほどの実業家になれたかもしれん」
「あの時代は事業も上手くいき、美しい妻も手に入れ、私は人生の勝者だと思った・・」

幸せな時代を懐かしむように語っていた祖父だが、急に沈んだ声になっていく。

「だが、やはり完璧な幸せなど無いのだな、ミレイユはあまり身体が丈夫ではなくてな」
「子供が出来ては、何度も流れてしまい、跡取りがなかなか生まれなかったのだ」

「私は親戚から養子をもらえばいいと慰めたが、ミレイユにすれば、私に対してもジャルジェ家にたいしても申し訳ない気持ちで、顔を曇らせることが増えていった」
「そんな中、また子供が出来、妻は思いつめた表情で、今度こそ無事生んでみせると私に誓ってくれた」

「そして、その言葉通りレニエを生んでくれた、私はミレイユの意志の強さの賜物だと妻に深く感謝した」
「だが・・産後の肥立ちが悪くて、妻は寝たきりになり、レニエを生んで3年ももたずに、あの世に行ってしまった、私を残して」

祖父は声を詰まらせながら語る、妻を亡くしたことにいまだに傷ついているのだ。

「妻亡き後、私は以前にもまして事業に取り組んだ、悲しみを忘れるためでもあるが、彼女は私と二人でジャルジェ家を繁栄させ、それをレニエに継がせるのが夢だと語っていたのだ」

「そしてレニエには年頃になると、名家でしかも見目麗しい婚約者を与えた」
「しかし・・・結果はお前が知っているとおりだ、レニエはお前の母を選び、そのため婚約者の家との共同事業も白紙に戻り、私は絶望した」
「その私が希望を見出したのがお前の存在だ、跡継ぎが出来た喜びに加え、お前を一目見たときミレイユに似ていると気づいた」

「僕が・・ですか?」

「そうだ、その金髪も印象的な蒼い瞳も、そして人をひきつけるところまで、もしもミレイユが男性ならば、お前のようだっただろうと思われた」

僕がおばあさまに似ているから、だからおじいさまはこれほど僕に強く思い入れをされたんだ。

オスカルはこれまでの祖父の自分への期待に納得をした。

「だから、一時はフローラをジャルジェ家の女主人として認めた、お前を生んでくれたのだからな」
「なのに、フローラは上流社会になじめず、心を閉ざし、自分のふるさとのロアンヌ村に戻っていった」

「人生はままならぬものだ、私とミレイユは周りに祝福され、幸福な夫婦であったはずが、早くに亡くなり、その愛を失ってしまった」
「レニエは、フローラとの愛を望んだが、上流階級の生活になじめず一緒に暮らすことも叶わぬ形ばかりの夫婦だ、私にはレニエが幸せそうに見えないのだ」

祖父の言葉にオスカルは気づかされた。

確かに父は、母が上流社会に溶け込めず、里に篭もってしまった分、一人で何もかもを抱え込んできた。

それに疲れてきたというのか・・

「幸せの形とはどんなものか、私にはわからなくなってきた」

「年老いたせいかな、私がこんなことを考えるなど」

祖父は真剣な面持ちでオスカルを見上げた。

「オスカル」

「はい」

「お前は愛する人と結ばれて、幸せになれ」

「!!」

突然の祖父の台詞に驚愕した。

「お前が誰を選ぼうとどんな選択をしようと私は認めようと思う」
「お前が生涯側にいて幸せになれる相手であれば、私は喜んで祝福しよう」

それはオスカルにとって何よりうれしい言葉だった。

声を詰まらせ返事した。

「はい、僕は、きっと愛する人と添い遂げて見せます」

「きっと・・・長く・長く・命果てるまで・・幸せに・・」

アンドレお前と・・・

想いが溢れていく

アンドレ、僕はお前と結ばれてみせる

僕達は幸せな夫婦になれる
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Posted byうさぎ

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