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うさぎ

夜のフェアリー7章の11

オスカルはマルゴが朝食を食べ終えた後、『コーヒーをご馳走様でした」といって二階の自分達の部屋に戻った。
部屋に戻り、キッチンの椅子に腰掛け、テーブルにひじを着いて考える。

いいな、マルゴさん達は
パリから出てきて、店を起こし、ニールは料理でマルゴさんは接客をして、二人して助け合い生きている。
僕とアンドレもあんなふうになれたらな・・・

夕方になり、アンドレが戻ってきた。
「ただいま、オスカル今戻ったよ」
「おかえり!」
オスカルは急いで椅子から立ち上がり、アンドレに抱きついていった。

急に抱きつかれアンドレは面食らったが、何とかオスカルを支えた。
「急にどうした?危ないぞ」
「うん、お前の帰りがうれしかったんだ」
オスカルがこんなふうに甘えてくるなんて
ジャルジェ家での緊張から開放されたのだろうか?

アンドレはオスカルを片手で抱くが、もう片方の手には紙袋が握られている。
「帰ってきて歓迎されるのはうれしいが、夕飯を買ってきたんだ、めしにしないか?」
紙袋には、アンドレが市場で買ってきた惣菜が入っていた。

そういえば、夕食のしたくも、これからは自分達でしなくてはいけないんだ。
オスカルはもう誰の手も借りずに生きていかないと駄目なのだと気がついた。

「わざわざ・買って来てくれたのか?」
「ああ・仕事を探すついでに、市場の場所も確認しておいたんだ、これから必要だからな」
アンドレは仕事も探して夕食の心配まで・・

サラダにトマトソースのかかった牛肉のミートボールにサーモン入りのキッシュとパンとチーズとアンドレが買ってきた惣菜をテーブルに並べた。
「美味しそうだな」
朝と同じに二人向かい合わせに座り、食べ始める。

「お前の家のシェフと比べれば、かなり劣るだろうが、我慢してくれ」
「そんなことはない、十分美味しい」
食べながらアンドレは仕事探しの経緯を説明した。

「オスカル・実は・・」
「今日は夕方まで仕事を探して回ったんだが、やはり未成年で紹介状も無い俺では雇ってくれる職場は見つからなかったよ」

やはりそうか・・
アパルトマン探しの時にわかったことだが、やはり身元がはっきりしていない僕達には世間の風当たりは厳しいのだ。

「明日は違う場所を探すつもりだが、この分だと職を見つけるまで時間がかかるかもしれない」
「そこで金が底をついてしまわぬよう、倹約していかねばならない」
「だから明日からは、惣菜を買わずに俺が家に戻ってから料理を作ろうと思う」

アンドレの提案にオスカルは黙って考え込んでしまった。
その様子を見てアンドレは急いで慰める。
「そんなに心配するな、出来るだけ早めに仕事を見つけるから」
「いや・そうじゃないんだ」

アンドレは、オスカルがお金のことを心配してるのだと思ったがそうではなかった。
「アンドレ、僕に家事を教えてほしい?」
「何だって?」
「お前が仕事を探しながら、家事までして、僕のほうは家にいながら何もせずにお前に帰りを待つだけなんて・嫌なんだ」
「僕だって何か役に立ちたい」

アンドレとすれば、オスカルには今の暮らしに慣れるのが先決で、家事などは、それから覚えていけばよい、との考えだった。
だが、オスカルはアンドレだけに苦労をかけているのを情けなく思っている。

「今日、マルゴの店にニールさんにお礼を言いにいったんだ」
「そしたら、マルゴさんにも会って、コーヒーをご馳走になりながら、いろいろお話したんだ」
「マルゴさんとニールさんは、駆け落ち同然にこのエレインまで来たんだって、マルゴさんは自分と一緒になったからニールさんは有名シェフになれなかったんだって」

そういえば、ニールさんも同じようなことを言ってたっけ!

「マルゴさんは、ニールさんみたいに料理が上手くないけど、ニールさんのために朝食を作ったり、店の接客を頑張ってる」
「僕はそれがうらやましいと思ったんだ、僕もマルゴさんのようにお前を手助けできるようになりたい」

「お前がそんな風に考えていたとは・・」
アンドレはオスカルの気持ちがうれしかった。
「わかった、ではお前にも家事を手伝ってもらうよ」

「食事が終わったら、やるべきことを教える、毎日実践していけば、なれるはずだ」
「うん、では頼む」
「ああ・だが食事が終わってからだ、ちゃんと食べろよ」

そして二人は夕食を食べ終えた。
一緒に皿を片付けた後、アンドレはオスカルに家事を教えることにした。

ほうきで床を掃き、ごみを取るまでをやって見せ、そしてオスカルに「やってみろ」と渡した。
オスカルは見たところ簡単に思え、さっさと履いて見せた。
しかしアンドレは「それでは隅のごみが残ったままだ、もっと端っこのごみも残さぬよう丁寧には履くんだ」

なるほどな、と思いながら今度は隅のほうまで履いた。
「そんな感じだ、では次に移るぞ」
アンドレはバケツに水を入れ、その中に布をぬらして絞る。

「こうして、水で塗らし、絞った布で家のあちこちを拭いていくんだ」
またもやアンドレは見本を見せて、その後オスカルにやらせた。
「そんなものだな、何度かやっていくうちになれるよ」
アンドレはオスカルが布きれを手にしながらぼうっとしてるのに気がついた。

「オスカル・どうした?疲れたのか?」
「い・いや、そうじゃないんだ」
「初めて掃除というものをやったが、部屋を掃除するって気持ちがいいものだな」
「確かに少し疲れたが、動いた分部屋が綺麗になっていくのを見ると感動する」

疲れて嫌になったのかと思えば、オスカルは感動していたのを知り、アンドレは安堵した。
「感心な意見だが、掃除は家事のひとつに過ぎないぞ、まだまだ学ぶことは多いから覚悟しておけ」
アンドレは教えると決めたらなかなか厳しい先生のようだ。

しかし、オスカルにすれば、そのほうが燃えるのだ。
「まかせておけ!」
「その息だ、しかし、今日はこれくらいにして休もう」
「ええっ、もう終わりか?」
せっかく張り切っているのに水を差された気分だ。

「続きは明日だ、学ぶことは多いから安心しろ」

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Posted byうさぎ

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