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うさぎ

夜のフェアリー7章の25

翌朝になり、オスカルは目覚めた。

夕べあれから寝付けなかったが、それでもいつの間にか眠っていたらしい。
オスカルはアンドレのベッドのほうを見ると空だ。

もう仕事に行ったのか?
怒っているのか、それともがっかりさせてしまっただろうか・・
だけど、言わずにはおれなかったんだ。

そんなことを考えながら、着替えてキッチンのほうに向かった。
すると・キッチンにはアンドレがいた。

お互い目が合い、アンドレは気まずそうな顔をしたが、驚いたオスカルのほうは思わず声が出た。

「お前、仕事にいったのではないのか?」

それを聞いて今度はアンドレが意外そうな顔をした。
「今日は休日で仕事は休みだ」
「あ・そうだったな・・」

昨日の出来事で悩んでいて休日だってことを忘れていた。
しかし、おかげで話すきっかけにはなり、気まずい空気が少し解消されたようだ。

「・・・コーヒーを入れるところなんだが飲まないか?」
「では・いただく」

それから二人はアンドレが入れたコーヒーを前に向かい合わせで座った。
互いにコーヒーをすすり落ち着いたタイミングでアンドレから話を切り出した。

「オスカル・夕べの話だが・・」
「あ・ああ・・」

アンドレは返事を聞くなり話を始めた。
「お前は、夜遅くまで仕事をしている俺を一人待つのはつらいと言ったな?」
「俺を待つだけの生活が、たまらないと・・」

「・・ああ・そうだ・・」
言い訳するべきかと考えたが、実際彼のいうとおりなのだから、ここは受け止めるべきと返事した

「そうか・・俺は今の暮らしを維持するためには必要なことと判断したのだがな」
アンドレはため息を漏らす。

アンドレの気落ちした様子にオスカルは夢中で反論する。
「も・もちろん僕にだってわかっている!」
「お前が僕との生活を守るために必死で働いてくれているのは、わかってるんだ!」
「だからこそ、お前に申し訳なく思うから僕なりに マルゴさんや身近な人たちと親交を取りつつ世間を知ろうと努力したのだ!」

「けど、一人で何もできない僕と違ってお前は難なく仕事をこなし会社の人たちともうまくやって・僕とは大違いだ」
「しかも、遅く帰ってきてすぐに眠ってしまい、これでは僕など必要ないのと同じじゃないか」
「夕べだって久々に早く帰ってきたと思えば、会社のことばかりで僕の話などまったく聞いてくれないし」

「だから・・・」
オスカルは、そこではたと気が付いた。

僕は結局アンドレを会社のみんなとうまくいってることに焼きもちを焼いてるのか?
僕は彼がいないと駄目なのに、アンドレのほうは僕がいなくとも立派にやっていける。
お前とあまりにも差を感じて、それをお前にあたってしまっただけではないのか?
一晩時間がたったせいかオスカルは自分を冷静に見つめられるようになっていた。

しかし、アンドレはオスカルの言い分を真摯に受け止めていた。
「昨日、お前からそのことを聞いて、俺も一晩考えたんだ」
「俺は会社に認められようとしすぎ、お前の気持ちなど考えようとはしなかった」
「お前はジャルジェ家での、贅沢な暮らしを捨てて俺との暮らしを選んでくれた、なのに俺はお前を思いやることを怠ってしまった」
「少しくらい生活が楽になっても、お前が幸せでないなら意味は無いのにな」

「何もしなくていい身分だったお前を、こんな貧しい暮らしをさせているのは俺なのに、寂しい思いばかりさせて・ごめんよ」
アンドレの心からの謝罪にオスカルは罪悪感を感じた。

苦しそうな顔でオスカルに詫びる、それはまるで懺悔のように
「心からすまないと思う」
「アンドレ・・」

アンドレに謝られ、オスカルとしては戸惑うばかりだ
後ろめたい感情があふれ、オスカルはそれに耐えられなくなった

「ち・違うんだ・・・」
「僕はお前にうらやんでいたのだ」

アンドレに驚いた顔で凝視され、恥ずかしさのあまり顔をそむけた。
だが、それでも伝えなければと続けた。

「パリを出てエレインにきてから僕は、お前に頼りっぱなしだ」
「働いて生活費を稼ぐのはもちろん、家事に関してもいちからお前に学ぶしかない」
「それに僕は世間知らずなため職を探すのも困難だ、 マルゴさんにもすぐ倒れるような体では肉体を使う仕事はつけないと言われた」

「僕は自分がいかに役に立たない人間かが分かり激しくショックを受けたのだ」
「ジャルジェ家の子だからこそ優遇されていたのに、いつの間にか僕は自分を特別な人間だと勘違いしていた」
「それに対してお前は、オーランドにいるころと変わらず、何処にいても優秀さを示している」

「お前に比べ、僕があまりにもみじめな存在に思え、ついわがままを言ってしまった」

話を聞きながらアンドレは悩んでいた。
オーランド時代は、あれほど輝いていたオスカルなのに
今は俺をうらやましく思うなど、それほど俺は彼女を無力に変えてしまったのか?

「本来ならお前の成功を僕が一番喜ぶべきなのに・・・」
よりによってアンドレに嫉妬するとは・・あまりにも情けない

情けなくて涙が出た。
アンドレはテーブルの上に置いたオスカルの手を握った。
その瞬間彼の顔を見ると何かいうのをためらっている様子だ。

そして決意したように口を開いた。
「お前をこのような暮らしに陥らせたのは俺だ」
「俺がお前を屋敷から連れ出さねば惨めな思いをお前に味あわせることはなかった」

アンドレはすべての責任は自分にあると考えた。

お前は、今の僕のみじめな姿を自分のせいだと!

「俺さえいなければ、いずれお前はジャルジェ家令嬢として、華々しい人生を送れたんだ・・・」

辛そうな声で言った。
「オスカル」

「もうこんな男と一緒に暮らすのは・いやか?」
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Posted byうさぎ

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