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うさぎ

夜のフェアリー7章の30

店を出て部屋に戻る。
中に入り上着の服を脱ぎコート掛けにかける
二人の間には気まずい空気が流れ、何も言わぬままで行動した。

沈黙に耐えられず、オスカルはアンドレに向けて言葉を放つ
「アンドレ・・怒ってるのか? マルゴさんの話を勝手に承知したこと」

アンドレは振り向きオスカルの必死な顔を目にすると自分がどんな顔をしてるのかわかった。
「いや・・お前が仕事を求めるのは俺を助けるためだと理解している」
「だから、 お前に怒りを感じているわけではない」
アンドレの表情が和らぎオスカルは安堵した。

「だが・・・」
「やはり俺は心から賛成することは出来ない」

「ど、どうして!?」
「掃除などお前のやるべき仕事ではない」

アンドレはオスカルの両肩を握り説得しようとする
「家を掃除するのとはわけが違う、毎日大勢の人間が汚した場所をひたすら磨いていくんだ」
「それも掃除のやり方に問題があれば厳しく注意を受ける、きれいに出来て当たり前で、成功とは無縁の仕事だ」

「お前からそんな言葉を聞くとは思わなかった、掃除の仕事だってデジレさんには大事な仕事だった」
オスカルは掃除の仕事を卑下する言い方だと腹を立てた

しかしアンドレ承知できないわけがあった。
「そうだ、デジレさんにとってはな、だけどオスカル、お前は違う」
「お前は、人の上に立つ人間だ、決して他人に命令され働く人間ではない」
「忘れたのか?パリでは誰もがお前を注目し憧れのまなざしで見つめた、お前は常に光り輝く存在だった、お前は・特別な人間だったんだ!」

アンドレは言ってしまった後、しみじみ彼女を見つめた。
「いや・・・それは今でも変わりない」

「俺から見るお前は・今も、花まつりの夜、俺の目の前に舞い降りたシルフィードなんだ」
「そんなお前が現実の厳しさで傷つく姿を俺は見たくない

花まつりの夜アンドレはオスカルに出会い、この世のものとは思えぬ彼女の美しさに惹かれ、恋に落ちた
アンドレにとって彼女はいまだに、手の届かない至高の存在なのだ

アンドレは僕に現実の苦労を強いたくはないと・・・

「オスカル、もう少し待っていてくれ、俺がお前の居場所を作るから」
「俺がお前のためにバラ園を用意する、お前が寂しくないよう人も雇い入れてにぎやかにするよ」
「そしたらお前はそこの女主人だ」
「お前の好きなバラをたくさん作ろう、嫌なことはすべて俺が引き受ける、お前に苦労などさせない」

オスカルはアンドレの話を聞き、彼の気持ちが理解出来た
アンドレなら・彼なら出来るだろう
土地を買い取り、家を建て美しいバラを育て、見事なバラ農園にしていく
そこで僕はお前と暮らす、彼の愛情に守られながら・・・いつまでも、幸せに・・

・・・だが、それはあくまで彼から見る僕を幸せの形なのだ
僕は特別で普通の人とは違うという
アンドレはいまだにジャルジェ家からの呪縛に縛られている。
それを取り除くのが、僕の役目

「僕はお前に守られて生きるだけなんて、嫌なんだ」
「僕もお前と一緒に夢を叶えていきたい」
「お前はかつて、一人ふるさとのロアンヌ村を出てオーランドにきたな」

アンドレのオーランド時代の彼の頑張りにオスカルは注目した。
オスカルこそが彼の真摯な姿に誰よりも惹かれたのだから

「その時のお前は誰よりも努力し優秀さを示した、金持ちの子息ばかりの中でひたむきに自分の居場所を作ろうとした」
「そしてその努力は報われ、常にトップの成績を取り、ついには上流社会の連中にも認めさせたではないか!」

自分のことを言われアンドレははっとした。

「今の僕はあの時のお前と同じだ」
「これまで生きてきた世界と違うところで生きていく、立場としては反対だが意味としては同じだ」
「今度は僕がお前のほうの世界で生きる番なんだ」
「僕もお前のように努力して、自分の居場所を作って行くよ」

オスカルはアンドレの手を取り両手で握りしめた。
「僕は、お前のようにうまく順応できないかもしれないが、それでもやってみるよ」
「お前の傍で、生きていくために」

一緒に生きるためにプライドもかなぐり捨てるという、オスカルの力強い言葉にアンドレは激しい感動を覚えた。

自信なさげに笑う彼女はいつもよりまぶしくて、それでいてはかなげに見える。
それは人ならざる者の姿ではなく、一人の女性として写った

自分と同じ世界で生きようとする健気な心がうれしくて、たまらなくて、思わず握られた手をほどいて、すぐ抱きしめた。
胸の中の彼女に言い含める

「オスカル、わかった・・わかったよ・・でも絶対に無理するなよ」
「辛かったら俺に言うんだぞ、いつやめてもいいんだぞ、俺が言ってやるから」

まるで子供を甘やかすようなアンドレに、オスカルはくすっと笑った。
「それでは何もならないではないか、結局お前は僕を甘やかすんだな」

「心配しないで、アンドレ」
「大丈夫だ、きっと、上手くいくから」

「お前と生きるためなら、僕は何だってできる」
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Posted byうさぎ

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