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夜のフェアリー7章の32

それからもオスカルは掃除の仕事をつづけた。
マルゴに言われた通り、ラウルが仕込みに来るまでに一階の店の掃除をほとんど済ませるよう、動きを早くする努力する。

だが、そうすると汚れが残っていたり落ちていたゴミを見忘れたりもして注意された。
掃除は単純で短時間の仕事だが短い時間の中でいかに質の高い仕事をするかが問題だ。

「確かデジレさんのモップかけは僕がやるなんかより、早くて的確に汚れの部分を消していってた」
「やはりコツがあるんだろうな」
「う~ん、まず、無駄な動きをなくし、少しでも時間を余らせ、後はやり方を体と頭で考えていくしかない」
オスカルはアンドレの帰りを待ちながら、ソファーで一人ごとを言いながら考えていた。

そこへアンドレが仕事から戻ってきた。
部屋からなにやら声が聞こえる。

「何をぶつぶつ言ってるんだ?」
「あ、おかえり、聞こえたのか?」
「どうしたら仕事を早くきれいに終わらせることが出来るかを模索してたんだ」
「熱心なことだな、その後どうだ?」
上着を服かけにかけていつものごとく心配そうな顔で聞いてくる。

「大丈夫だ何とかやっている、そりゃ、注意を受けることがあるが・・・」
「し・しかし・それでも大きな問題はなくやってるんだから、お前は何も心配するな!」
オスカルはまたアンドレが無理だとか言い出さないか心配になり急いで言い返した。

「それより、買い物に行っておいたから食事を作ろう!」
「あ・ああ、そうだな」

こうしてアンドレの心配をよそにオスカルは掃除の仕事を続けていった。
計画を練り動きに無駄をなくし、時間通りに終わるようスピードを上げた。
そうなると後は技術の向上だと、モップをどのように扱えば一度できれいになるのか考えながら作業した。

そのうちにモップの動かし方のコツもだんだんとわかってきて、さらに早く終わるようになり
余った時間で、汚れが残っていないか確認するよう努めていった。
おかげで マルゴからは注意ではなく称賛の言葉をもらえるようになってきた。

「オスカル、掃除が手早くなったわね、しかも以前のようにやり残しがないから安心して任せられるわ」
「とても努力したのね偉いわ」
「ありがとうございます・マルゴさん・・」
オスカルはその言葉を感激しながら聞いた。

その夜、アンドレが帰ってきて二人して夕食作りを始めた。
今日の夕食はフレンチ シューファルシだ。
アンドレはゆでたキャベツを鍋に敷き詰めている。

その横でオスカルがハンバーグのタネをボールの中で混ぜていた。
それも鼻歌を歌いながら

「今日は機嫌がいいんだな?」
アンドレに問われオスカルは驚いた。
「え・そうか?」

浮かれて思わず歌っていたのだ。

「何かいいことでもあったのか?」
アンドレに図星を刺され、オスカルは照れながらも返事した。
「う・ん、実は今日 マルゴさんに褒められたんだ・掃除の仕事が手早くて安心して任せられるようになったって」
「そうか・・・」

アンドレの顔がパッと明るくなり
「よかったな・お前の努力が認められたんだ」
オスカルの額に口づけをした。
「これからも、頑張れよ」と相好を崩した。
「ああ・これからも頑張る」

オスカルは自分のことのように喜んでくれるアンドレの気持ちがうれしかった。

「明日の仕事に備えてフレンチ シューファルシをどっさり食べるか!」
「うん、そうしよう!」
オスカルは張り切って答えた。

それからもオスカルは掃除の仕事を続けていった。
オスカルはだんだんと仕事には慣れて行き、 マルゴからは、もう安心して任せられるとお墨付きをもらうようになっていた。

掃除の仕事を始めて早一カ月がたとうとしていた。
オスカルはモップ磨きを終えて、テーブルの上の椅子を下ろし、テーブルや家具を磨いていた。
掃除しながら考えていた。

掃除をしてきれいにしても、次の日には十分汚れている、それをまたきれいにしていくだけの繰り返しだが
それでも、仕事としてやり終えた後は達成感がある。
普通の暮らしの人々は、このようにコツコツと働き、お給金を得て、そのお金で生活しているんだな。
僕がこんな暮らしするなど昔は想像できなかったな・・・

その時、 店にだれか入ってきた音がした。
入ってきたのは マルゴだ。

「おはよう、オスカル」
「 マルゴさん・おはようございます」
「掃除はもうすぐ終わるかしら?」
「え、はい、もう終わります」
「じゃあ、ちょうどいいわ、貴方にお礼を言いたいといって聞かないから連れてきたのよ」
「僕に?」
オスカルはことの次第が理解できなくて茫然とした。

「入ってらっしゃい」
マルゴは店のドアを開けて外にいる人を招いた。

店の中に入ってきたのはデジレだった。
「オスカルさん久しぶり」
「デジレさんじゃないですか!?」

オスカルはしばらく見なかったデジレの姿に驚いた。

「デジレが挨拶に来てくれて、自分がいない間あなたが代わりをしてくれてたのにお礼が言いたいっていうから連れてきたのよ」
「オスカルさん、あたしが休んでいる間頑張ってくれていたそうね、本当にありがとう」
「い・いえ、そんな・・・」

突然あらわれたデジレに礼を言われオスカルは戸惑ってしまった。
「あの・それより、デジレさん、腰の具合は良くなりましたか?」
「そうなのよ、休息したおかげですっかり良くなったらしいわ」
「もうぴんぴんしてますよ、おかげでまた働けます」

「そうですか、よかった!」
「そうよ、明日からデジレは職場復帰することになるわ」
「オスカル、今まで本当にご苦労様」

マルゴにポンと肩をたたかれ、オスカルはその瞬間気づいた。
デジレさんが仕事復帰する、ということは僕はもうここでは要らないんだ。
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