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うさぎ

夜のフェアリー7章の36

言われたようにオスカルは大き目のコップ二つに水を入れ、手に持ち運んだ。
その様子を見てアンドレは早速注意する

「そんな持ち方だと何かあればすぐに落とす」

立ち上がり、オスカルからコップを取り上げた。

「慣れないうちはこうやって脇を締め、コップを持つんだ」
「そうすれば身体を固定させることが出きてふらつかない」

アンドレは見本を見せてオスカルにやってみろと言った。
横柄な言い方にイラっとするが、流れ的に逆らえず彼の言う通りにやってみる。

すると・やってみれば・なるほど、このほうがコップをコントロール出来る。

「つぎはトレイに乗せて持ってみろ」

また言われるままにコップをトレイに乗せて歩いてみる。
たどたどしいが、何とか水をこぼさず進めた。
テーブルの上に水を乗せる。

「どうぞ」

アンドレはコップを手にし、一口飲んだ。

「その調子だ」
「今度はコップを増やして持ってきてみろ」
「あ・うん」

オスカルはもう二つ水を入れたコップをトレイに乗せ、テーブルを目指した。
大き目のコップだし水はたっぷり入っているから重くてより慎重になる。
しかし、テーブルにつくまでに少し水をこぼしてしまった。

アンドレはそれをみて、また自分が見本をやって見せた。
やはり自分と違い安定した動作だ。

自分とアンドレとの力の差を感じた。

「今のように軽々と持てるのは俺とお前の力の差だけではない、バランス感覚の違いだ」

そのあともいろいろと教えていく。

「水をこぼさぬようもう一度練習だ、それが出来れば皿やコップを増やしていくといい」
「支えられなくなった場合、体全体で支えるようにしてトレイを持つんだ」
「重い品を手前に集中すれば落とすのを避けられる」

あまりに堂に入ったアンドレにオスカルは感心してしまった。

「お前詳しいんだな、やったことがあるのか?」
「ああ・実は友人の家が店を営んでて、たまにバイトさせてもらってたんだ」
「バイト?お前、バラ農園で働いてたのではないのか?」
「バラ農園が終わって、その足で店に行ってた、母が倒れてからは俺が稼がないと食えないからな」
「そう・か、お前は苦労したんだな」

オスカルはアンドレが改めて自分と違い苦労人なのだと実感した。
ウエイター時代の話が終えるとアンドレは再び必要なことを伝えていく

「俺はもっと身体が小さい頃でもこのように運べたんだ、持ち方やコツさえわかればお前でもできるようになるさ」
「ともかく、食器運びは、練習すればうまくなる、後はメニューを覚えておくこと」
「ああ、それは大体覚えた」
「もう覚えたのか?」
「メニューを覚えておけば、注文されるとき、困らないと思ってな」
「なるほどな、いい心がけだ」

オスカルは記憶力がいいから、覚えるのは困らない。
もともと聡明なオスカルだ、仕事自体すぐ出来るようになるだろう。

その後、アンドレは客への対応をオスカルに注意した。

「客に対しては常に下手に出ろよ、女性客への対応はお前が社交界でやっていたのと変わりない態度で臨めばいい」
「客の中には絡んでくるやつもいるが、絶対に乗るな、上手くかわすよう努めろ、あくまで低姿勢で臨めよ」
「そんなこと僕だってわかっている、揉めたりなどしない」
「そうか?それならいいがな・・」

まだ信じがたい顔のアンドレにオスカルは憤慨した。

「お前僕を信じていないな!、失礼な奴だ」

アンドレは笑いながら答えた。

「わかったわかった」
「しかし・・安心したよ」

「え?」

アンドレの顔は本当に安堵した表情だ。

「俺が帰ってきたときは、すっかり落ち込んで沈み切っていたが、今は怒るほど元気が出ている」

言われてはっとした。
そういえば、アンドレに相談し、練習を始めて・それから・・
そうか・・・

「お前は遠回しに僕を励まそうとしたのだな、だからわざと仕事をやめるか?などと言って僕を怒らせたのだ」

アンドレはそれには答えずに自分の意見だけ言った。

「お前は自信をもってやればいいんだ」
「客だって人間だ思いやりある対応をすればわかってくれる、お前なら、きっと出来る」

そしてオスカルの頬に両手を添えて、優しい瞳で見つめる

「お前に落ち込んだ顔は似合わない」

心が温かくなっていく

アンドレやはり、僕にはお前が必要だよ
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Posted byうさぎ

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