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うさぎ

夜のフェアリー第8章の4

「それで承知したのか?」
「うん」

オスカルは部屋に戻り、 マルゴからの話をアンドレに伝えたところだ。
アンドレが帰るなり、話があると言って、キッチンテーブルに向かい合わせに座ると説明をした。

アンドレは 突然の話に驚くが、 話を聞いていくうちにマルゴがオスカルをショーに起用したいという気持ちは理解できた。

確かにオスカルのような男装の麗人がバイオリンを奏でる姿は見る人の心をつかむだろう
俺自身彼女のバイオリン演奏は何度か目にしたが、そのたびに感動に魅入ってしまうほどだ。

「だが大丈夫か?今までお前は上流社会での披露は経験したが、今回は一般の客が聴くんだ」

アンドレの言いたいことはわかる
これまでの上流社会に披露したバイオリンは、趣味の一環だから、少しくらいの失敗も口にしないのが礼儀
だが マルゴの客はプロとして僕をみるのだ、失敗にも厳しいだろうし好みでなければ聞いてなんかくれないかも

「それは私も考えたよ、だけど マルゴさんは、私がショーに出るのを切に望んでるんだ、それをかなえるのがご恩返しではないかと思う」
「それにもしも、私のバイオリンが店の役に立つのなら、やってみたいという気持ちもある」

そうなのだ、 マルゴには返せないほどの恩がある。
その彼女の頼みを断るなどできない

「そうか」
アンドレにはオスカルが恩返ししたいという気持ちに納得した。

「お前がやりたい気持ちがあるのなら頑張ってみればいい、俺は応援するしかできないがな」
「うん・お前のその気持ちだけで、十分だよ」

その日からオスカルは、バイオリンの練習を始めた。

完璧に弾きこなすためでもあるが、これまでオスカルが引いていたのはクラシック曲だ、しかし マルゴの店で好まれるのはシャンソン
違うジャンルの曲に慣れていく、そのための練習でもあった。

オスカルは、毎日練習にいそしんだ。
店が始まる前に、店が終わった後も、時間が取れるときはすべて練習に身を捧げた。

今日も店が終わり、一人バイオリンの練習をしていた。

曲目は「ムーランルージュ」
マルゴから楽譜をいくつか借りて弾いてみた。

その中の一曲だ。
とてもゆったりとして落ち着く曲なので気持ちよく弾ける。

「ただいま」
アンドレが仕事から戻ってきたが

夢中で弾いていると、アンドレが戻ったことに気が付かなかった。

アンドレはバイオリンの音色にオスカルが練習中なのを知り、そのあとは何も言わず、部屋の中に入った。

中に入ると奥のバルコニーがある部屋でオスカルは一人バイオリンを奏でている。
たまに楽譜を見ながらも必死だ。

やると決めたら一心不乱だな、アンドレは椅子にどっかと座った。
「なかなかいい曲だな、だがお前にはややおとなしい」

「アンドレ!帰ってたのか?」
いきなり声を掛けられオスカルは驚いた。

「ただいま、と声をかけたがお前は気が付かなかったようだ」
「悪い、つい夢中で弾いていたんだ」
オスカルはバイオリンをテーブルの上に置こうとした。

「待ってくれ!」
それをアンドレは急いで止めた。

「え?」

オスカルの疑問にアンドレはどう伝えていいものか悩んだ
「いや・・その・・・」

「もう少し聞かせてくれないか?」
「その・・今の曲は『ムーランルージュ』だろう、素敵な曲だ、もうちょっと聞いていたい」

「それに、もうすぐ、大勢の人の前で聞かせるのだろうが、今だけは俺が独占したい」
アンドレが照れながらも真剣に言うので、オスカルはくすっと笑ってしまった。

そして気持ちを落ち着かせて答える。
「それじゃ、もう一曲、お前のために弾くよ」

再びバイオリンを顎に挟み弓を手にして曲を奏で始めた。
アンドレは椅子に腰かけたまま腕を前に組み、オスカルの奏でる旋律を聴いた。

音楽を奏でる人は見る者の心を奪うほどに美しい
窓からの月の光に照らされて神秘的なオーラに包まれている

オスカル・・・

お前は誰もが近寄りがたいほど、美しい人だ

やがて曲が終わり、オスカルは、ほうっとため息を吐いてバイオリンを顎から放した。
今度こそバイオリンと弓を置いてアンドレに意見を求めた。

「どうだった?」

アンドレは表情を変えずに答える。
「素晴らしい、最高に素敵だ」
「やはりお前には天舞の才があるのだろう」

あまりの賛辞にオスカルはお世辞が過ぎると思った。
「褒めすぎだ、ある程度習ったものならこれくらい弾ける」

だが、アンドレは席を立ちオスカルの前に迫ってきた。
「いや、俺にとっては最高のコンサートだったよ」
「なんたってお前のバイオリンを独り占め出来たのだから感激もひとしおだ」

オスカルを抱きしめ称賛の言葉を浴びせる
だが、オスカルとしてはあまり大げさに言われると気恥ずかしくなる

「あの、アンドレ・・そんなに言われると、恥ずかしいではないか・・・」
赤くした顔をアンドレの胸にうずめ、隠した。

今度はアンドレがくすりと笑った。
「今夜のお前はシルフィードではなく、ミューズだ」

そのままオスカルを抱き上げてしまった。
「何をする!」
「決まってるだろう、こんな誘惑されたら、男なら我慢できない」
「誘惑だって?」

オスカルは理解できないままベッドに連れていかれてしまった。
オスカルを寝床に横にするとアンドレはその上にかぶさってきた。
そしてオスカルの唇を奪って来る。

性急な彼の態度にオスカルは戸惑いを隠せない
顔を背けていやがる素振りをした。
すると彼は悲しそうな顔になり

「いやなのか?」
「だって・・急に、そんな・・・」
「あまりにお前が愛しくなって抱きたいと思った、それはダメなのか?」

悲しそうな顔で懇願され、胸がきゅんとした
「いや・・ではない」

それを聞いてアンドレの顔はぱっと輝いた。
「では、いいんだな?」
「勝手にすればいい」

可愛くない返事しかできないオスカルだがアンドレにはそれでも十分だ
「今夜のお前は特に美しい、このように美しい妻を迎えた俺は幸せ者だ」

再び唇を重ねてきたが、今度はオスカルは拒否しなかった。
彼に衣服を脱がされ、身体のすべてを愛されていく

お前の愛情に私の心は蕩けそうだ
こんなにも愛されて、幸せなのは私のほうだよ、アンドレ
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Posted byうさぎ

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